偉大な大統領(*)
なにか戦意を高揚させる方法をとらなければ、戦争の長期化は避けられない。それがロスト・エンジェルス国防省の結論だった。
だが、どんな勇敢なプロパガンダを打とうとも、携帯電話ひとつで悲惨な状況を共有できてしまうロスト・エンジェルスでは意味を成さない。
国防省及び複数の軍事研究機関が『ロスト・エンジェルスから盗まれたミサイルはすべて撃たれており、ゲルマニア諸国が自力で長距離ミサイルをつくるには最低でも3~4年の月日が必要である』という情報を繰り返し国営放送で流しているものの、それらが市民に響いているとも思えない。
「なあ、大統領って本当に出撃したら駄目なのか?」
そんな状況の最中、クール・レイノルズ大統領は呑気だった。有事中の有事なので女の子を連れ込んで遊べないのも、彼の退屈を深めている。
「駄目ですよ。貴方が戦死したらこの国滅びますよ?」
「おれがゲルマニアを滅ぼせば良いじゃねェか」
「絶対に勝てるのなら、議会も長官たちも喜んで貴方を戦場へ送ってますよ。でも、物事に絶対なんてことはないでしょう」
「ちえッ、つまんねー」
本当にコイツ支持率90パーセント超えの偉大な大統領なのかよ、と毒つきたくなる副官。
「これだったらジョンに大統領譲っておれがセブン・スターの切り込み隊長になりゃ良かったぜ。あーあ」
クールは椅子に身体を思い切りもたらせ、この国の民主主義を根本から否定するような失言を平然と繰り出した。
(良い意味でも悪い意味でも、子どもがそのまま大人になったような者の副官は疲れるな……)
こんな男の補佐役をこなせる者がいるのならば見てみたいものだ、と思った最中、大統領クールの机に置かれたアンティークな黒電話が鳴った。
「大統領のクールだ」
『オマエ、本当に大統領って称号だけは好きだよな。まあ良いや。魔力の濃度が薄くなったんで通達しておく』
「あ? まずオマエはどこにいるんだよ?」
『ゲルマニア北海だな。あ、また魔力が強まってきた。アイツら相当の数沿岸に貼り付けてるみたいだ──』
ザザザザザ! という音とともに通話が強制的に切られてしまった。クールは深い溜め息をつく。
「大統領、先ほどのお相手は……ジョン。プレイヤー中将では!?」
「ああ……」
「まさか撃破されたのですか!?」
「アイツが倒されるわけねェだろ……。チクショウ。おれだって軍人やってれば2,000キロメートルくらい1日で移動できたのに……。負けた気分だ。ムカつくぜ」
もはやツッコむのも億劫な副官は、「吉報ですな」と思考を停止した。
*
ジョン・プレイヤー中将率いるロスト・エンジェルスの最精鋭部隊『ジョン・プレイヤー・スペシャル』は、いよいよ上陸のときを迎えていた。
「よっしゃ、反撃の時間だァ!! 行くぞォ!!」
ロスト・エンジェルスによる反撃は、戦闘開始から18時間30分後に始まった。
JPS、美味しいけどめちゃ臭いんすよ。喫煙者でも嫌がるくらいに
いつも閲覧・ブックマーク・評価・いいね・感想をしてくださりありがとうございます。この小説は皆様のご厚意によって続いております!!




