ロスト・エンジェルス連邦共和国VSゲルマニア連邦帝国(*)
空軍は大失態を犯した。本土防衛用に保持してあった迎撃機がろくに動作しなかったのである。しかもゲルマニア諸国へ向けた航空機は、情報が筒抜けだと言わんばかりに撃破されてしまった。
クール・レイノルズ大統領の元軍費削減に勤しんでいた航空部隊は、戦争開始12時間の時点で戦力の半分近くを失いつつあった。
当然、この事実は市民たちには伏せられる。わずか12時間で200年先の航空機の半分が撃墜されたとなれば、士気は真っ逆さまに落ちていくからだ。
もっとも、クールを始めとする連邦政府はまるで驚いていないし、むしろ新たな戦術を考案できると上機嫌だ。
「すごいなァ!! 魔力による暴風の所為で戦闘部隊はなにもできず壊滅か!! やはり机上の空論だけでは得られないイレギュラーもあるのだな!!」
「こうなると航空機部隊を動かすのに躊躇が必要ですな。彼らは海外領土獲得の一連の闘いでエリートパイロットでしたから」
「飛行機があっても飛行できる連中がいなきゃ意味ないしなぁ。いやー……クール大統領の読みは正しかったのだな。陸海空軍の予算を減らして、新たな軍種『魔術総合軍』と『宇宙方面軍』へは潤沢な予算をつけた。いま考えてみりゃ……」
「魔術と技術の国としては当然の動きだったわけですか」
*
4月3日深夜12時に戦端が切られ、それから18時間経過した。時刻は夕方の6時。海岸の夕焼けの前に年齢も性別も違う、大半が軍人経験もない連中が集った。
そんな連中は、軍艦の住居スペースにて英気を養っていた。
「イージス艦なんて誰が操縦できるんだよ、アーク」
「乗組員が何人いると思ってるのさ? それに、ぼくらが……中でもぼくが撃破されたらロスト・エンジェルスはとんでもないことになる。万全を期してるはずだよ。ルーシ」
「まあ、現段階で武官なのはオマエだけ。退役含めてもポールのみの懐事情だ。おまけにオマエとメリットは数時間の戦闘に耐えられるかも怪しい。無謀に近いね」
「アンタが一番動けないでしょ、クソガキ」
「君らは数時間で一人前。私は1時間で10,000人前だ」
飄々とした態度のルーシだが、右腕に巻かれたスマートウォッチには『個体のバッテリー……99パーセント。残り1時間31分』と赤く記されている。この時間が尽きたとき、ルーシは行動の自由を失うのである。
「ただまあ、オマエらには感謝しているんだぞ? 元々魔力を供給すれば身体が自由に動く機械を埋め込んであって、しかもスマートウォッチでかんたんに確認できちゃうなんて」
「忘れるほうがすごいと思うぞ。マスター」
ルーシの隣に彼女とうりふたつな幼女ルテニアが現れる。違いは髪の毛の長さくらいだろうか。
「ああ、紹介しておこう。ルテニアだ。私とともに反目の“レイノルズちゃん”たちを服従させた大切な妹みたいな存在だ。仲良くしてやってくれ」
ルーシはルテニアの肩を掴み、ウキウキした表情で彼女をアークとメリットに紹介した。
ポールモールって退役軍人だったんだ……
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