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もしも最強の無法者が銀髪碧眼幼女になったら  作者: 東山ルイ
第九幕 我らの祖国、ロスト・エンジェルスを守れ
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私が始めた物語(ナラティブ)

 だが、こんな状況下なのに四の五の言っていられる余裕もない。人命がかかっていて、しかも人質は友だちと恋人。だから弱音なんて吐けない。

 それでも、放っておけば視点が合わなくなる状態でスオミ・アウローラに敵うのか、という話にもなってしまう。


「……、クソガキ。こんなこと言うのも酷だけど、そんな状態のアンタこそ戦場へは行けないんじゃないの? 私やコイツは興奮剤でも打ちまくればなんとかなると思うけど、メンタルが揺らいでるとそれも効きが悪くなる。だから、その──」

「いや……。どの道私が始めた物語(ナラティブ)だ。演者は死んででも演台に立てなきゃ意味がないんだよ」


 そんな折、ある激戦の所為で……直近の理由はキャメルの興奮の所為で眠っていたアーク・ロイヤルが目を覚ました。彼は銀髪碧眼の幼女が病室にいることを理解し、即座に告げた。


「ルーシ、行こう」


 アークの身体は崩壊寸前だった。寿命を何年も縮ませる危険ドラッグみたいなアドレナリン注射器を打ち込んで、生々しい傷口が垣間見える姿で無理やり立ち上がるほどに。


「……? ルーシ?」


 しかし、ルーシはまるで掛け合おうとしない。あのルーシがなにも言わないことへも、そもそも笑みがこぼれていない事態にも疑念を抱いたアークは、傍らにいたメリットの表情を見て(信じがたいものの)彼女が精神的な失調に苛まれていることを知った。


「……オマエらが今すぐ動けるのなら、24時間以内にゲルマニア諸国へ遠征したい。私の会社からも何人か有能な連中を出す。身支度しておいてくれ」

「う、うん」


 メリットは特に返事しなかった。ルーシはそれも気に留めることなく、病室から立ち去った。彼女は自身の言った有能な連中を呼び出すべく、電話をかける。


(みね)、知っての通りだ。スオミ・アウローラの目的は48時間以内にロスト・エンジェルスを屈服させること。ならこちらは24時間以内にヤツらの帝都『ゲルマニカ』を陥落させる。異論は?」


 いつも通りの言い草。尊大なボスとしてのルーシを前面に押し出す。不安げな表情も電話越しでは伝わらない。


『承知しました。動かせる兵隊には全員働いてもらいましょう。あの社会のダニ虫どもへ』

「おいおい、どうした。傭兵に恨みでも?」

『児童を強姦し売春させ殺す。そんな連中を嫌悪しない者などいるのですか?』

「……、ソイツらを集めたのは私とか言わねェよな?」

『貴方が集めたのでしょう。“死んだほうが良いヤツら”だからどんな非道い命令も躊躇なく下せると』

「そうかい……。なあ、峰」

『どうされましたか?』

「オマエも私もクズだし、それを否定することはできない。だが、ひとつ思いだしたことがあったよ」


 その場しのぎの考えかもしれない。根本からの解決なんてしていない。だが、気晴らしには充分だった。


「ヒトは自分より腐っている連中を見下せるから、生きていけるってな」

物語をナラティブって呼ぶのかっこいい……かっこよくない?


いつも閲覧・ブックマーク・評価・いいね・感想をしてくださりありがとうございます。この小説は皆様のご厚意によって続いております!!

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