天才キャメルの嫉妬の相手(*)
それでもアークはキャメルを見捨てることができないし、キャメルもアーク・ロイヤルのことを諦めきれない。なんだかんだと言っても、互いに互いを放っておくことができないのである。
「……うぅ」
そんな中、キャメル・レイノルズは泣き落としを始めやがった。
「だって子どものときからいっしょにいたじゃない……。私、今更ほかの男子に興味なんてもてないわよ……。貴方より強さという優しさを持つ子なんて知らないんだもの!!」
「……キャメル──うわッ!! 抱きつかないでっ!? 傷口開いちゃう!!」
すこしキャメルに同情したアークであったが、抱きつかれたことによる激痛の前にあえなく撃沈した。
「え? あ、アーク?」
「アネキ、こんなにボロボロなヤツに抱きつきゃそうなるぜ……」シエスタは一応ナースコールしておき、「というかさ、アネキはなんでそんなにアークが好きなの? 1年生のとき、あんなヘタレ幼なじみとも思ってないくらいのこと言ってたじゃん」
「そ、それは……」
ふたりの関係性はふたりにしか理解できない。幼児の頃から天才児だったが故凡人の考えが理解できなかったキャメル・レイノルズと、魔術的なセンスはなかったものの『優しさ』という『強さ』を持つアーク・ロイヤル。そんな幼なじみは、互いに足りないものを埋め合うことができる関係でもあった。
「…………強がってたのよ。ずっとアークに嫉妬してたから」
キャメルはティッシュで……いや、この女、アークの下着で鼻かみはじめやがった。もうつっこむ気にもなれないシエスタへ、キャメルは語る。
「自分で言うのもあれだけど、私はずっと天才だって崇められてた。あのクール・レイノルズの妹、あのレイノルズ家の令嬢だからって。でも、結局私みたいな天才はお兄様やアークのような鬼才には敵わない。それにどこかで気がついてたから、中学あたりで一旦距離をとったのよ。私のみにくい妬みすらも受け入れてもらうなんて、おこがましいにも程があるから」
「なるほどねェ……」
これで下着をポケットの中にしまっていなければ完璧だったのになぁ、とシエスタは思った。言動と行動が一致していない変態な少女に、アルビノの少年はどんな目線を向ければ良いのか迷う。
そんな中、看護師たちが訪れた。それと同時にアークの隣のベッドで意識不明だったメリットが目を覚ました。
「これは……どういう状況なんでしょうね?」
看護師たちは頭をかしげる。面会に同級生が訪れたのは良いのだが、意識を取り戻したばかりの患者が半目を開けてグロッキーになっている。一方、最新医療を施してなんとか一命を取り留めた患者が目を覚ましていた。
そんな意識が戻ってきたばかりの少女メリットは、覇気の灯った目つきで看護師へ訊く。
「…………。看護師さん」
「なんでしょうか?」
「どれくらいで退院できますか? ここで寝転がってる場合じゃないんです……!」
あらすじ変えました。
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