レイノルズちゃん
刹那、奇妙な笛の音が聴こえてきた。
アークとメリットはあからさまに身構える。その笛の主が危険だと言わんばかりに。
だからルーシはおもしろがって、「なあ、あの虚無僧がレイノルズちゃんってヤツなのか!?」と我先に被り物をした150センチ程度の坊主のもとへ距離を狭める。
「なかなかやべェ雰囲気漂わせているけど、果たしておれに勝てるのかな!?」
ルーシの背中に黒い翼がすこしずつ生えてくる。その翼はまるで天空の覇者“鷲”のようだった。
アーク・ロイヤルはルーシに、「やめろ!!」と大声で警鐘を鳴らすが、もはやすでに遅かった。
黒鷲の翼が5メートルほどに伸びた段階で、その羽根を使ってルーシは虚無僧を突き刺す。
「この翼は飾りじゃないんだぜ? コイツは思うがままに動いてくれる!!」
グチャッ!! と肉が無理やり引き裂かれる音とともに、ルーシは虚無僧の上空を舞い大量の羽を落とす。
それらはさも当然のごとく爆弾のように爆発を起こした。
「あーあー……」
「街がめちゃくちゃ」
アークとメリットは呆れ、溜め息混じりだった。
しかし一方的に攻撃を仕掛けていたルーシは、ここで異変に気がつく。肉を貫いて骨をへし折ったはずなのに、その虚無僧から魂が抜けない。普通の人間ならばとっくに死んでいるはずなのに、まったく殺せた感覚がしない。
街角が大騒ぎになり、爆発の余波で近くにあった携帯ショップが見るにも耐えない姿にイメージ・チェンジした頃、ルーシは地上へ降り立つ。
「……なーんだ? 死んでいねェのか?」
虚無僧の被り物が破けて、その顔があらわになる。
そこへは、ルーシとうりふたつな幼女がいた。
ただし途方もないダメージを喰らっているから、美しい顔立ちも青あざや切り傷まみれで台無しになっている。
「だいぶ喰らったがな。マスター」
「おいおいおいおい!! ドッペルゲンガーかよ!?」
ルーシは思いもよらず目を丸くしながら慌てる。ドッペルゲンガー? クローン? どちらにせよ、自分とまったく同じ見た目をした存在が目の前にいるのはあまり良い気分ではない。
「なあ、マスター。私たちを製造した責任は取ってくれるよな──!!」
というわけで生命活動を停止させてもらうことにしよう。
ルーシは近くに落ちていた羽を拾い、それに投げナイフとしての魂を吹き込む。すると即座に偽ルーシの首元にナイフになった黒い羽を投げ、呼吸を不可能にさせた。
「ぐ……はあ……!!」
「まーだ生きているのかい? 気味が悪りィな……」
拳銃をベルトとシャツの間から取り出そうとするが、いまのルーシの格好は病院服だ。当然ベルトはないし拳銃もない。
「チッ……。アーク、後処理頼む」
「……。ルーシ。この子は君が生み出したんだよ?」
「あ? なんでおれが双子を生み出すんだよ?」
「とにかく、この子を殺すってことは君を殺すことになってしまうけど良いの?」
「どういう意味だ?」
そんな不毛な会話のさなか、メリットはその偽ルーシに回復術式を行う。
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