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もしも最強の無法者が銀髪碧眼幼女になったら  作者: 東山ルイ
第八幕 君は本当にルーシ・レイノルズ?

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東欧の少年

「まずおれはベラルーシ共和国生まれだ。祖国は独裁政権が長く続いていた。だがおれはその体制すらもひっくり返せるという期待を背負った時代の寵児として10歳まで彼の国にいた」


 医者や看護師たち、アーク・ロイヤルはそろって「おお……」と驚嘆の声をあげていた。まあたしかに記憶喪失な上に男だったはずの見た目が銀髪碧眼の幼女に変わってしまったいま、こうして流暢に喋れているのがある種の奇跡なのかもしれない。


「しかし、だ。ある日おれは女強盗団に襲われた。奇妙な能力を使うヤツらでな。ボディーガードを次々なぎ倒し、ヤツらはおれを拉致していった。そこでおれは強盗団のボスに問われたんだ。『私の()()になれば能力を授けてやる』と」


 これで一人称が「おれ」の幼女というわけではなく、中身が男の幼女であることが暴かれたはずだ。ルーシは続けていく。


「ふたつにひとつの選択だ。拒絶すれば殺されると確信したおれは、その女に奉仕することで生きながらえてきた。同時に能力開発も受けながらな」


 正直思い出したくもないのだが、いかんせん覚えていることを全部話せというミッションなので一から十まで語るしかない。


「ある日、その女と仲間は死んだ。死因は過剰摂取。晴れておれはひとりで行動できるようになったんだ」


 いまでも忘れない。いつまで経っても起きてこないと思っていたら、みんなひっくり返ったカエルみたいになっていて泡を吹きながら心肺を永久に停止させていた。


「そこから……おれの逆襲が始まった。世界征服を試みたんだよ。手始めに東欧の裏社会を1年足らずで征服し、ロシアと中国の裏社会も呑み込んだ。ただ世界征服にはあと一歩足りなかった。そこでおれは日本に行った。超能力開発のメッカである日本へ」


 なんて甘美な響きだろうか。世界征服とは。ルーシは楽しい歌でも歌うように朗らかな笑顔になっていく。対照的に周りはその銀髪の幼女から距離を取り始める。物理的に。


「日本でいろんな仲間を手にして、先述した東欧・ロシア・中国と並び日本の裏社会をもおれはこの掌におさめてやった。愚民どもは震え上がったが、秩序を持った統治によって意味のない暴力沙汰は減った」


 ここでルーシは黙り込む。栄華を極めたとある無法者は、この時点をもって没落していくからだ。


「……。だが、結局そこまでしかたどり着けなかった。アメリカ大陸もオセアニアも残ったアジアも従わせることはできなかったのさ。そりゃあのまま生きていれば世界征服も夢じゃなかったが、運命のいたずらかおれも過剰摂取で死んでしまったんだ」


 ルーシを修羅の道へいざなった女たちと同じ破局をたどった……という出来の悪い物語が完結したわけだ。


「……。ま、そのくらいだな。覚えているのは。ロスト・エンジェルスに来てからなにをしたかとか、どんな者と会ったかどうかはまったく思い出せんよ」


「…………。そうか」


 戦慄していた医者たちやアーク・ロイヤルも、ようやく手を枕代わりに寝転がるルーシという幼女の異常性を受け入れたらしい。大変結構な話だ。


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