スターリング工業定例幹部会
新生MIH学園、夏休み明けわずか2日で崩壊。
今頃学園運営企業は頭を抱えているだろうが、今回ルーシは倒壊に関わっていないので左うちわ状態だ。
そして、スターリング工業の最高幹部、及びリヒトとマーベリック、タイペイが集められた会合にて。
「定例幹部会を始める。だが、その前にリヒト……」
「なんだ社長ォ!? 名誉の負傷に苦しむおれへなにか言いてェことがあんのか!?」
「こちらへ来い」
「ああ!」
リヒトはスキップしながら、ルーシの元へ駆け寄る。
豚が豚屋に向かってどうするんだよ、とほとんどの者は思う。
「痛てェ!! なんで耳つねるんだよ!?」
「つねられただけで終わったことへ感謝しろ。あんなガキどもにあっさりやられやがって」
指を離し、ルーシは首を横に振る。
「ポール。ヒューマノイドの調子は?」
最高執務責任者としてスターリング工業に携わる、高身長のポールモールは怪訝そうな顔になる。
「いますぐにでも稼働できるが、なにに使うんだ?」
「クーアノンの頭領、『クイーン』への露払いに使うんだよ。峰、クイーンの近衛兵は把握できたか?」
「ええ。いま映し出します」
スキンヘッドの黒人の峰は、大型ディスプレイに3人の男女を映し出す。
「おお。名前忘れたけどセブン・スターズいるじゃん」
当然のごとく寝ていた同社最高執行責任者クール・レイノルズは、ちらりと見えた画像に反応を示した。
「セブン・スターズ? 本当ですか?」
「マジだよ。ジョンが言ってた。クーアノンのシンパがいるって」
「んん? 大アニキ、なんでセブン・スターズにシンパがいるの?」リヒトはルーシの制裁にへこたれることなく、「アイツらは魔術使えない『ニヒル』ってヤツなんだろ? んで、LTAS最強の魔術師集団セブン・スターズってその真逆じゃん。シンパになる理由が分かんねェ」
「そこはあたしが説明するよ、リヒトくん」
反応を即座に示したのはマーベリックだった。彼女は咳払いをして、「えー、クイーンと呼ばれる存在は不老不死の薬、通称『賢者の石』をよく働いた者に分配するという協定を結んでいるそうです」と、頓珍漢なことを言い放つ。
「へー。ならおれもクーアノンに入ろうかな」
「アニキは不老不死なんてほしくないでしょ? そんなものがなんの役に立つんですか?」
「いやー、ポーちゃん。考えが甘めェぜ。不老不死になれば腹上死の心配がなくなるじゃん!? しかもこのかっけェ顔面を永久に保てるぜよ?」
ポールモールは露骨な溜め息を吐く。
「ともかく、それに乗っかったってわけだな? そのセブン・スターズは」
ルーシはその流れを完全無視して、マーベリックに語りかける。
「そうでしょうね。セブン・スターズ所属『ハンター』はその密約を成し遂げるため、クイーンの護衛を行っていると思われます」




