MIH学園防衛戦(*)
目が妖しく光り、ロンビルはリモコンを地面に落とす。
刹那、新校舎に生まれ変わったばかりのMIH学園は、うめき声とともに崩壊した。すべての校舎が鳥かごのようにひっくり返ったのだ。
「──っっっ!!」
メリットは防御膜を張り、ホープを拾い上げようとする。
「このカスがほしいんだろ? ほら」
ロンビルは余裕そうな表情で、ホープを蹴り上げる。それを拾い、メリットは彼を睨む。
「さあ、婦女紳士の皆様。ショーを始めよう。これがアクション!」
踊るようにロンビルはその『ヒューマノイド』へ命令していく。それと同時に天候も悪化し始め、晴れていたはずの天気は大雨に変わり果てる。
「ホープ!」
ホープの元に駆け寄ろうとしたメントに、斬撃のような衝撃が走る。胴体を引きちぎられるかのような感覚は、ロンビルの片手にあるデバイスによって実行された。
「だーかーら! 馴れ合うなって言ってるだろうが!! おれの相棒だってどうなってるかわっかんねェんだぜ? 平等であるべきだろ? LTASの憲法どおりによォ!!」
このままではMIH学園の倒壊に巻き込まれる。しかし脱出方法も思い浮かばない。そして自分で道を開けないのならば、その者は死ぬほかない。
だからこそ。
「おっと……!?」
寝転がるだけで激痛の走るホープは、糸を伸ばした。その糸は1瞬だけロンビルの動きを止める。
「いまさらなにがしてェんだ? こんなものハサミで切れるだろうが」
「どうだろうな? 後輩くん」
そのとき、ロンビルに静電気のような感覚が通過する。それはすこしずつ威力が高まっていき、やがて明確な痛みへと変わっていく。
「……シエスタ」
ホープは息も絶え絶えだが、なおもシエスタに答える。
「悪りィな。もうひとりのヤバそうなヤツはどこかの誰かに任せた。おれのやるべきことは……」
シエスタは簡素な謝罪だけ済ませ、目を瞑る。
この場にいる全員が危険であると感じる電気が集まり始めた。ロンビルは脱出を図ろうとする。付き合っていられない。
だが。
「やっぱり油断してるのは、アンタのほう」
その隙をついた“冷静な”メリットがロンビルとの間合いを縮め、腕に炎をまとい彼を殴った。
「……ってェな!! 殺されてェのか!?」
「小物臭いセリフ、よく似合う」
ロンビルは致命的なダメージを食らってしまった。脳が振盪し、左手に持っていた短刀を奪われてしまったのだ。
その果ては、LTASでも希少な電流制御系統の魔術師が手加減なしの1撃を叩き込む未来だ。
「ま、待て!! おれを殺したらヒューマノイドを制御できなくな──!!」
「知らねェよ!! とんじまえ!! クソ野郎がァ!!」
アンペアは焦げた匂いに変わる。もう後戻りできない導線に電流を流したのだ。
「ごはあッ!?」
血の塊を吐き散らし、ロンビルは動かなくなった。
「……コイツら、なにがしたいの?」
青アザだらけのメリットが疑問を投げかける。
されど、返答はなかった。
「ありゃ。シエスタくんやっぱり限界だったみたい」
糸が切れたかのように、そのアルビノの巨漢は倒れ込む。
そんな中、図書室に風穴を開けた張本人を引っ張りながら、ランクAラークが現れる。




