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もしも最強の無法者が銀髪碧眼幼女になったら  作者: 東山ルイ
第六幕 新たなるMIH学園、新たなる後輩の野望劇
128/290

クール・ファミリーの一件(*)

 クール・ファミリー。スターリング工業傘下の裏組織であり、日本の暴力団でたとえるのならば二次団体に相当する犯罪集団である。

 頭領を務めるのはクール・レイノルズ。しばしばロスト・エンジェルス最強の魔術師と囁かれる化け物だ。その実力は警察や軍隊、秘密警察といった国家権力が『あのクールを敵に回したくない』という結論に至るほどであった。


 そんな最強のボスの元、日々犯罪に勤しむクール・ファミリーであったが、彼らは突然の事件に戸惑いを隠せないでいた。


「ポールモールさんが死刑って本当かよ!?」

「そりゃつまり、おれらを舐めているってことで良いんだよなぁ!? 政府の腐れ外道どもはァ!!」

「上等じゃねェかァ!! 野郎ども!! どうせクールのアニキは寝てるだろうから、おれらだけで刑務所タタクぞ!!」


 クール・ファミリーに属すほとんどの者は、ポールモールの経営しているナイトクラブに集合していた。いま、ポールモールは逮捕され、秘密裏のうちに処刑されかけている。構成員にとって、それは決して看破できる話ではない。

 彼らは一人ひとり無法者として功績を何度もあげたことのある猛者揃いであり、並みの刑務所ならば強行突破できてしまうだろう。

 しかし同時に、彼らは脳筋集団だ。いまからポールモールが収監されている刑務所を割り出す必要があるのだが、誰ひとりとしてパソコンも携帯電話も使っていない時点で察するものがある。


「クール・ファミリー総勢90人!! おれたちはみんな平等だが、あのお二方は違げェ!! おれらはクールのアニキとポールモールさんがいたから生き残れた!! 成り上がれたんだ!! あの方たちのおかげでクソみてェな生活から抜け出せた!! いまこそ恩返しのときだぜェ!! 野郎どもォ!!」


 雄叫びがあがり、ついに(脳筋であり武闘派である)クール・ファミリーはポールモールがどの刑務所へ閉じ込められているのか分からないのに、彼に対する解放作戦を行おうとしたのである。


 その最中、ナイトクラブの裏入り口から誰かが入ってきた。

 ひとりはこの荒くれ者たちが敬愛して止まない“アニキ”クール・レイノルズ。

 そしてもうひとりは、クール・ファミリーとの直接的な関係はない『サクラ・ファミリー』という組織の総長を務める黒人の峰であった。


「クールのアニキ!! 峰総長!! お疲れ様です!!」

「おお、ご苦労。オマエらさ、なんで集合してるの?」

「そりゃもちろん、ポールモールさんを助けに行くために──!!?」


 刹那、クールの目が妖しく光った。彼は手を演奏の指揮を取るかのごとく動かし、なんと自分の部下たちの魔力を根こそぎ奪ってしまった。彼らは目を充血させ、皇帝の前で膝をつくかのごとく倒れ込む。


「悪いな。ちょっと寝ててくれ」

「カイザ・マギアですか……。まあ、どこに服役しているのか分からないのに突撃しても逮捕者が増えるだけですからな」

「そーそ。コイツらまでパクられたらおれァ立ち直れねェよ。仲間なんだからよォ」

「しかし、ルーシ代表取締役社長(プレジデント)が現大統領スリーファイブ氏に掛け合い、ポールモールさんを釈放させようとしているはずですが……」

「あー、その話ね」


 クールは指をパキパキ鳴らし、一度部下たちから抜き取った魔力を自身の身体へ取り込む。幽霊みたいな現象がクール・レイノルズの身体に染み渡る頃、彼は言う。


「よくよく考えたらさ、まどろっこしくね?  姉弟の案」

「まどろっこしい?」

「だってよォ、スリーファイブとかいう()()()()()にマスコミが掌握できてると思う?」

「マスコミ……。つまり、現大統領の権限でポールモールさんが極秘のうちにシャバへ出てきても、主要マスメディア()()支配できていないスリーファイブではその情報を隠し通すことができないと」

「そういうことだよーん。おれらは所詮裏社会の住民。マスコミが騒ぎ立て、市民たちに浸透し感化されればおれまでパクられちゃうぜ?」


 いつだか峰はクールのことを、『富裕層生まれなのに、刺激を求めて裏社会に入ってきた下衆』とまで思っていたが、きょうをもってその評価を改めることになった。クールは間違いなく組織のボスにふさわしい男であり、ルーシがあそこまでこの男を買っていることも合点が合ったのだった。


「まあ、おれも脳筋だから、ポーちゃんの隔離されてる場所、分かんねェんだけど☆」

(とぼけていらっしゃるが、ポールモールさんの居場所を割り出すために私を連れてきたのは明白だ。しかも部下が蜂起する前に察知して、一瞬で沈めた。なるほど……)

「どうした? 黙り込んでよォ」

「いえ……。ただいまよりポールモールさんの位置情報を検知します」

「おおッ!! さすがだぜェ!!」



 クールは無邪気な笑顔で峰の胸をつく。その邪気のない子どものような笑顔は仮面なのか、それとも本心からのものなのか。


 大量の無法者は魔力を抜かれ、しかし体力が抜かれたわけではないので意識だけは保っていた。そんなクール・ファミリーの構成員たちは、ポールモールの特定を済ませて刑務所へ向かうクールと峰に、全力を振り絞って親指を上げるのだった。

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