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もしも最強の無法者が銀髪碧眼幼女になったら  作者: 東山ルイ
第一幕 銀髪碧眼の幼女(中身最強の無法者♂)、LTASに立つ

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天使のごとく美しき

 3人はとりあえずMIH学園──「メイド・イン・ヘブン学園」の学生服を見に来ていた。


「おお、懐かしいなァ。あのころとまったく変わってねェ」

「100年の歴史で1度も変更を加えられていないらしいですからね。最近だと、かわいいって理由で一般入試を受ける子も増えてるんですよ」


 そうキャメルが説明したように、学生服は特徴的かつ「かわいい」ものだった。ルーシはもともと男子だったので男子制服に目が行ったが、この2人に訝られる前に視線を女子のほうへ向けた。


「でもよォ、すこし派手だよな。昔から思ってたけど」

「だからウケるんじゃない? 青いブレザーに赤いリボン。男子はスーツみたい」


 MIHの制服はイギリスの学生服とよく似通っていた。イギリス──この世界においてはブリタニカと呼ばれる国から独立しただけあって、文化的にも強く影響されているのだろう。しかし、別に制服なんてどうだって良い。女子ものを着ることがはじめて……ではないし、たいして関心も湧かない。あえていえば、男子もののデザインは良いと感じるだけである。


「試着したら? ルーシちゃん」

「そうしましょうか」


 関心のないものに関心を抱けという拷問。だがルーシは慣れている。意味不明な客に支離滅裂な服を着せされられて犯されていたときを考えれば、まだ身体が痛くならないだけマシともいえる。


 と、いうわけで試着だ。


「……まさかあの悪夢みてーな経験が活きる日が来るとは。12か13のオスガキのケツに粗末なものぶち込みやがって。考えてみれば、おれはアイツらみてーなヤツらを殺してェから無法者になったのかもな?」


 そんな小声な独り言をつぶやきつつ、ルーシは淡々と着替えていく。聞こえるわけのない、聴こえても意味のない愚痴。彼らでは解決できないし、当然ルーシにも解決できない、変えることのできない不朽の過去。だから愚痴。それだけなのだ。


「……鏡を撃ちたいくれェ似合っているな。やはり骨格が女になったのが効いているようだ」


 こちらも小声。150センチで女性的な骨格をした美少女が、子ども向けに作られ子ども向けに洗礼されていった服が似合わないはずがない。だからムカつくのだ。こんな身体にしやがったあのアホ天使が。


 そして声を作り直すため、軽い咳払いをし、ルーシは愛らしい声で、

「着替え終わりました〜。もう見せちゃって良いですか〜?」

 クールかつ天真爛漫な一面もある10歳の少女の役へ入り込む。


「良いぞ〜」


 ルーシはカーテンを開ける。


「おお……さすがおれの子だ。すげェ似合ってやがる」

「…………か、かわいい」


 クールは演じることを念頭に置きつつ、素直な感想をいった。彼にロリータ・コンプレックス的な嗜好はないが、かわいい子どもを見てかわいいといわないほどひねくれているわけでもないので、そういっただけである。

 たいしてキャメル。彼女は一瞬嫉妬心すら抱いたことを恥じた。相手は10歳の幼女で、尊敬する兄の娘で、自身の姪。そんな彼女が、あたかも天使のごとく美しく見え、女子として負けたような感覚に襲われたのだ。キャメルは16歳。6年もの歳の離れている子に、そういった感情を抱いた自分をすこしばかり嫌いになった。


(クール、おめェは随分と素直なヤツだ。おれだってこんなガキ見りゃかわいいって称賛するだろうさ。キャメル、オマエもやはり子どもだな。だが心配することはない。おれの実年齢と性別の正体を知れば、きっと評価は180度変わるだろうからな?)


「かわいいなんて……ありがとうございます。嬉しいです」


 ここまでくると多重人格としか思えないが、ルーシはあくまでも演技をし続ける。

 実際いまのルーシは美しい。かわいいうえに美しい。さらさらとした長い銀髪に、幼さを持ちながらもどこか達観しているかのような青い目。小柄な体型は幼児体型というわけではなく、しっかり引き締まっており、スタイルも抜群。そして毒々しいタトゥーはまったく見えない。清純的な存在なのだ。


「……う、うん。さすがはお兄様の子……いや、私の姪っ子? この歳で姪っ子がいるって不思議な気分になるわね。いとことかならわかるけど」

「でも、年齢は6歳しか離れていないでしょ? 実質的にすこし歳の離れた姉妹みたいなものですよ」

「そ、そうなんだけど……」

「あのー……キャメルお姉ちゃんって呼んで良いですか?」


 ルーシはどこか遠慮がちに、しかし照れているような少女の姿でいう。


 腹の中では爆笑していた。こんな茶番劇、最高じゃないか。柔和な笑顔を浮かべる姪っ子。それに心を動かされる叔母。そしてふたりに血のつながりなどない。最高の茶番だ。この世界に来てもなお、おもしろいものはおもしろい。


「……もちろん!」

「おお、仲良くなったみたいだな。じゃ、やっぱ年齢が近けェと会話も弾むだろうし、おれはひとりでぶらぶら歩こうかね」


 ルーシ、クール、キャメルの近くには、「レイノルズ家」の護衛がついている。キャメルは充分高位の魔術師らしいが、万が一ということもあると考えたのだろう。つまり、クールに居場所はないということでもある。彼が突然蒸発した理由は知らないが、あれだけ自分を慕っていた妹にすら会いたくなかったようなので、おそらくそれなりの理由があるのだろう。


「え? お兄様──」


 32歳の全力ダッシュが見られた。ルーシはキャメルの視線がクールへ向いたところで、うつむきながら笑い散らすのを抑える。


「行っちゃったみたいですね。お父様は照れ屋だからかな?」

「……私も詳しく知らないけど、お兄様はお父様とお母様──アナタの祖父母と揉めにもめたのよ。結局嫌になって出て行っちゃったらしくて、風のうわさではギャングをやってるって……でも、アナタがいるということは、それはあくまでも悪い人たちのうわさ話みたいね」

(ちゃんと当てているな。こりゃクールも逃げるわけだ)

「そうですよ。お父様のお仕事はよく知らないけど、すくなくともギャングやマフィアのような反社会的勢力と関わっているわけではないみたいだし、悪い人たちもいるものですね」

「もともと疑われやすい人なのよ。昔から破天荒な人で、セブン・スターズを2回蹴ったなんて信じられないわ。けれど、そういうところが好きなのよ」

「お父様へそういった感情があると?」

「ち、ち、ち、違うわよ!? 確かに尊敬してるけど、それは兄妹としての感情であって……」


閲覧ありがとうございます。

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