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もしも最強の無法者が銀髪碧眼幼女になったら  作者: 東山ルイ
第五幕 忍び寄る陰謀、クーアノン
115/290

カイザ・マギア(*)

 からくりが読めてきた。この名もなき解放の戦士たちは、ジョーキーがなんらかの方法でまん延させた強心剤『シア・ハート・アタック』──『SHA』を使って魔術師たちを狩っている。

 そして、その原因はルーシと面白がって『SHA』の予算を出したクール・レイノルズだ。


「ルーちゃん……めっちゃ怖い顔してるけど……」


 パーラの声も響かず、ルーシは出し抜かれたことに凄まじい怒りを覚える。


「……オマエら、すこし離れていろ」


 なぜ? とパーラは言いたくなる。いまのところ友だちは誰も傷ついていない。

 だが、それを訊いてみる前に、パーラはメントに手を引っ張られて走る羽目になった。


「メントちゃん!?」

「良いから離れろ!! アイツ、『カイザ・マギア』使うつもりだ!!」


 海の波が不自然な動きを見せる。晴れていたはずなのに、薄黒い雲が空を覆い始める。地面が揺れ始め、やがて振動が伝わってくる。


「さすがルーシだね。海水浴なんて退屈すぎて似合わないみたい」


 タイペイの嫌味とともに、大雨が降り注いだ。


「……ああ、てめェら言葉も話せねェんだよな。あの薬はすべてのパロメーターを腕力に振る。なら良いんだ。パーラがてめェらの耳障りな鳴き声を聞かなくて済むからよォ!!」


 ルーシはそう煽る。


 *


 他方、その光景を離れたところで見ていた者もいた。アークとキャメルだ。

 事あることにボディタッチされて、事故を装って水着を脱がせようとするキャメルに辟易していたアーク。

 必死にアークをその気にさせようとするも、ひょっとしたら彼は同性愛者なのではないかと疑い始めているキャメル。

 そんなふざけたふたりは、このときだけは真剣な眼差しで『カイザ・マギア』を眺める。


「……ゴールデンバットさんかしら?」

「あのヒトは魔力を集中させてヒトにぶっ放したりしない。ここまで集めたら、最低でも身体のどこかが吹き飛ぶからね……」

「ということは……」

「ルーシでしょ……」


 腕か、足か、頭。どれかがもげるだろう。魔力はなにかを壊すとき有用だ。拳や脚に集めれば、攻撃したものは爆発するし、穴が空くときもある。ただ、あれほどの魔力を集結させて天気を変動させるには、膨大な魔力と技術が必要だ。


「……キャメルとルーシってさ、色々ずるいよ」

「な、なにがよ? 私はカイザ・マギアなんて使えないわよ? 使えてもこんなことは──」

「もうさ、分かってるんだよ。あのときもそうだったよね。ぼくは心底キャメルに失望した」


 キャメルは自分をルーシの保護者枠だと言い訳し、アークを無理やりデートに誘ったように思える。

 ルーシはそうなることを見越し、半ば面白がってキャメルへ連絡したのであろう。

 うつろな目でキャメルを見据える。彼女は顔を真っ赤にする。


「……とにかく」アークは目を細め、「自慰行為見られながら罵倒されたいんなら、あれ止めるの、手伝って」


 正直、この変態じみたセリフで引かれてくれれば良いのになぁ、ってアークは思っていた。


 しかし、「……もうヒトいなくなったから、ルーシちゃん止めたら……お願い」と返事されれば、キャメルの業の深さに溺れる感覚に陥る。

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