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もしも最強の無法者が銀髪碧眼幼女になったら  作者: 東山ルイ
第五幕 忍び寄る陰謀、クーアノン
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肉体関係5000人以上、恋愛関係ゼロ人とひとり

 あのリヒトが口説こうとするのならば、あんなまどろっこしい方法は使わない。彼の誘い方はもっとストレートだし、さらにいえばうまくもない。大抵の場合、拒絶されて終わりだ。

 しかし、今回ばかりは違う。リヒトは冷静だし、メントはああいう素直な人間が好きで、ひょっとしたらうまく事を運んでしまうかもしれない。


「ま、他人の色恋沙汰はどうだって良いんだが、アイツとメントは友だちだからな」


 LTAS連邦超特急はまもなくサウス・ロスト・エンジェルス──SLA市に到着する。


 *


 ルーシは見つけてしまった。駅構内にて、金髪の美少年アークが、低身長の美少女キャメルの格好を見て口をあんぐり開けている光景を。


「……、世界はやはり狭い」

「ん? どしたのルーちゃん?」

「いや、そのうち分かる。どうせ問題が起きるから」


 テントのような屋根とレンガで覆われた、開けている構内を歩きながら、一行は徒歩10分もないビーチへ向かう。


「社長、カネ貸してくんね?」


 リヒトが小声でルーシにささやく。


「なんでだよ。給料払っているだろ?」

「風俗で全部使っちゃったぜ……。500メニーお願いします」


 パーラとメント、ついでにタイペイが談笑しているのを確認し、ルーシは財布に入っていた100メニー札5枚をリヒトに渡す。


「あざす……。メントちゃんになんか買ってあげようと思ってさ」

「なかよしだな。気でもあるのか?」

「どっちつかずかな。だいたい、おれだって社長と一緒で恋愛経験ないから」

「あれだけ抱いてきたのにな」


 おかしな話もあったものだ。前世でルーシとリヒトは飽きるくらい女遊びをやっていたが、同時に『ヘドが出る売女』以外に手を出さなかったのだ。そうなれば、あの純朴な少女たちへの経験値はないに等しい。


「異世界来て良かったよな、社長」

「それは最終回にでも吐くセリフだぜ?」


 ふたりの無法者はそんな会話を交わし、盛り上がっていて割り込めない女子たちを一瞥する。

 1歳差なのに会話が成立しないし、趣味も一致せず、女子高生の流行りなんて知っているわけもない。

 だけども、かけがえのない友だちと恋人だ。

 

「ま……楽しもうぜ。なにも問題が起きないことを祈るよ」

「ねえねえふたりとも!!」


 呑気なパーラが話を盛り上げていくが、実際のところ、1番呑気なのはルーシだった。


 *


(お姉ちゃん、性欲モンスターなんだな)


 女子の更衣室にて、ルーシは諦観に近い納得をしていた。ルーシは露出の少ない水着を貸してくれ、と頼んだはずだが、なぜその注文への納品がマイクロビキニなのだろうか? 股の筋が見えなければ露出は多くないとでも?


(諦めて幼児用の水着買えば良かったぜ。しかも胸のサイズ合っていねェから胸周りがきつい)


 なにか見てはいけないものを見てしまったように、数人いた着替え中の者たちは目を露骨にそらす。

 だが、当然ではある。こんな()()()()を極めた格好になって、両手両足背中首におびただしいタトゥーが入っていて、身体のところどころに傷口があって、それなのに10歳程度の幼女。ルーシも同じ立場ならば目をそらす。


「行くか」


 ただ、幼女に成り果ててから三ヶ月ほど経過して、恥辱もあまり感じなくなった。堂々とルーシは着替えを済ませて、予め水着を着ていた他の連中に合流する。


「いや、一服しよう」


 喫煙エリアに向かい、タバコを咥える。

 今度は逆にジロジロ見られる。

 だから睨み返す。

 ニヤニヤ侮辱してくる。

 適当な男の首を締めてやろうと吸い殻を捨てたとき。

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