LTAS連邦超特急
LTAS連邦超特急。およそ70000平方メートルのロスト・エンジェルス本島をつなぎ、400キロメートル離れたノース・ロスト・エンジェルス市とサウス・ロスト・エンジェルス市をわずか20分でつなぐ高速鉄道である。
「あっという間に流れていくな~」
電車を普段使わないルーシは、その速度に感嘆していた。日本でいうところの新幹線といったところだろう。実のところ、新幹線も利用したことはないが、それすらも上回る速度なのは分かる。
「ね! 乗る度速くてびっくりする! つい10年くらい前には存在しなかったって絶対嘘だよね! あ、でも10周年だってニュースで流れてたかも! 最近テレビ見ないな~」
マシンガントークをぶつけてくるのは、相も変わらぬルーシの恋人パーラだ。
ルーシも肝心な話以外は聞き流していて、いまも、「テレビも追いやられているんだろうな」と返し、「ところでさあ! ルーちゃんみたいな刺青ってどこで入れるの? ユースクリーンで流し見してたら可愛いの見つけてさ! あれ入れたいんだよね!」と話をすげ替える、愉快な関係である。
「パーラ、タトゥーだけは入れるなよ」
「良いじゃん! かっけえし!」
「だせえよ。なあ、リヒト」
「パーラちゃんは似合わねェんじゃね? メントちゃんは似合いそうだけど」
当然のごとく会話に参戦できるリヒト。メントはパーラのようなおしゃべりと仲が良いくらいだから、こういう舌の根が乾かない者がお気に入りのようだ。
「マジ? あたしが?」
「だろ? タイペイ」
「うん、似合うよ。印象結構変わるはず」
そもそもタイペイとリヒトは部外者も良いところだが、昔なじみのごとく話を弾ませている。
「あの根暗みたいに入れるの? あたし」
「別に強要はしていねェだろ。リヒトの言うことだぞ? なんにも考えず発言するヤツなんだよ、昔から」
ルーシは珍しく呆れ気味な態度だった。
「ねえねえ、タイペイちゃんとリヒトくんってルーちゃんとどういう関係なの?」
この状況を不思議がっていた理由。それはパーラとメントが、旧友と妹分との関係性をまったく訊いてこなかったからだ。そして回答権はふたりに託された。
リヒトが口に火がついたように話したがるが、それをタイペイが彼をつねることで止める。
「うん、私は姉みたいな関係かな。お父さんは違うし、あんまり会える関係でもないけど。そしてリヒトくんは私の友だち。ルーシとも仲が良いね」
大嘘を平然とした態度で並べるので、パーラとメントはまるで疑わない。
その馬鹿げた嘘をルーシが補強していく。
「まあ、久々に姉と会えたから遊び行きたいと思っただけさ。ついでにリヒトもな」
正体を明かすのは時期尚早だ。どこに秘密警察がいるか分からない以上、ここで事実を述べてしまうことはできない。
「ついでってなんだよ! しゃ──ホーミー!!」
(ホーミー? アメリカのヒップホップかよ。コイツ、私のこと名前で呼べねェの?)
「へー! やっぱりルーちゃんって面白い!! 良い意味で隠し事たくさんあるよね!!」




