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もしも最強の無法者が銀髪碧眼幼女になったら  作者: 東山ルイ
第五幕 忍び寄る陰謀、クーアノン
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我が妹、タイペイの帰還

 その眠り姫は、ルーシのことなんて意に介さない。ただ寝ているだけだ。だが、その寝顔はルーシに安心感を与える。


「美人だな~。オマエの妹」


 身長差的にルーシではお姫様抱っこというヤツができないので、代わりにクールがタイペイを抱っこしながらエレベーターへと向かっていた。


「オマエにもやれねェな。この子は」

「なら誰にやれるんだよ? おれら姉弟じゃねェか」

「コイツとおれも兄妹だ」

「ややこしいぜ」


 その銀髪の幼女に成り代わった少年ルーシは、表面上は動揺していないように振る舞う。もっとも、わずかでも気を抜けば愛らしい微笑みを浮かべるので、クールにはすでにばれている。


「え、あの、この方が守護天使?」


 ふたりからすればもはやまったく価値のない天使ヘーラーは、きょとんとした顔色になる。


「オマエが呼んだんだろうが。姉弟に恥かかせるつもりか?」

「え、そういうわけじゃないんですけれど……見た目と実年齢が一致しているから」

「ああ、ちょっと大人になったな。中学生くらいから高校生にはなった」


 ロスト・エンジェルスで修羅の道を歩んでいる間にも、時間は過ぎていたのであろう。タイペイはやや大人びた顔つきと体型になっていた。17歳から18歳の間といったところである。


「つか、ポンコツメンヘラ。この子いつまで寝てるの? 時間制限あるんだろ?」


 青天の霹靂……というわけでもない。死人は蘇らない。犯罪では何度でも奇跡を起こしてきたルーシも、ヒトを蘇らせることはできない。

 それでもルーシは、タイペイを一瞥し、すでに名残惜しそうに唇を噛んでいた。


「知りませんよ。私の直属でもないし」


 瞬間、刹那の出来事だった。

 クールの腕からタイペイが抜け出し、彼女とさほど身長の変わらないヘーラーの顔を思い切り殴ったのは。


「うん、勉強不足だね」


 のんびりとした口調だった。返り血に染まった右手でタイペイはヘーラーの胸ぐらをつかんだ。


「貴方、ノンキャリだよね? でもまあ、殴られても声あげなかったのはすごいよ。上に掛け合って昇格させてあげる」


 ルーシとクールの表情は対照的だった。

 口を大きく開き驚愕するクールと、鼻でその光景を笑うルーシ。


「凶暴になったみてーだな。タイペイ」

「ルーシ、勝手にいなくなってごめん」


 そのコスプレのようにスーツを着ている幼女を見て、タイペイは頭を下げる。


「ぜひとも反省してくれ。許可なく遠くへ行かないようにな」

「努力するよ」


 クールはやがてゲラゲラ笑い転げるように、

「すげェな!! なめた口はきけねェみたいだ!」

 セリフと真逆にタイペイの肩を叩く。


「ルーシの仲間?」

「クールだ。天才的な馬鹿で男前の変人だよ」

「よろしくね」

「おーう」


 そんなことを話しつつ、ルーシたちはエレベーターに乗ってしまった。

 顔面を殴られて鼻がへし折れたヘーラーは、「どうして……」と泣き言をぼやくのだった。


さすがにヘーラーが可愛そうになってきたよ、おれは

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