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もしも最強の無法者が銀髪碧眼幼女になったら  作者: 東山ルイ
第一幕 銀髪碧眼の幼女(中身最強の無法者♂)、LTASに立つ
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姉弟の妹

 ルーシはフリスクを差し出した。煙草を吸ったあとには必ずなめている、必需品のひとつである。


「しかし、先ほどシャワー浴びただけあって体臭はないみてェだな。ただ、最初にあったときは獣臭かった。オマエ、天使とか人間とかの前に、衛生概念が終わっているだろ?」

「し、失礼な!! 1週間に1回はシャワーを絶対浴びてますよ!!」

「なるほど。つまりは根本から叩き直す必要があると」


 到底人間にカウントしたくないようなヤツである。いや、天使という生物は人間ではないのかもしれないが。

 最後に歯磨きしたのが5ヶ月前? シャワーは1週間に1回?

 1日3回歯磨きをし、2回はシャワーと風呂に入るルーシからすれば、彼女は不潔以外の何者でもない。


「ポールに掛け合ってみるか。ふたりが住める程度の広さの家を持っていねェか」


 まさか10歳になって25歳を更生させるために動くことになるとは思わなかった。あれだけヒトを殺しておいて、“21世紀最大の怪物”とまで言われた男が、今となれば身長150センチの童顔美少女となり、本当はどうだって良い女を嫁入りできる程度まで再生しようとしている。世の中は常に不思議なことばかり起こるのだ。


「アネキ、車の準備ができました。ヘーラーのアネキはどうするおつもりで?」

「女子の子分はいるか? いるんだったら、コイツに口臭ケアの方法と正しいシャワーの使い方を指導するように伝えておいてくれ」

「しょ、承知です」


 ヘーラーは半ば涙目になりながらやけ酒に浸るが、どう考えても自分で撒いた種なので、ルーシもクールの子分も気にしない。


「さて……行こうか」


 時刻は9時30分。ルーシは人生初、少女ものの服を買いに行くこととなる。


 *


「色々調べたが……ロスト・エンジェルスは年間を通して寒いらしいな。夏場でも最高気温が25度ほど。だったら長袖の服を着ていても不思議じゃない」

「まーな。たまに半袖の女を見るけど、たいていはヤリマンか子どもだ。ポーちゃんから上納金もらって、理想の服は決まったのか?」

「一応は。まず、CEO専用のスーツを買わねェと」

「スーツ? そりゃおれやポーちゃんの上に立つ人間だから、1張羅を持ってて当然かもしれんけど……姉弟はまだ成長期だろ? これから身長とスタイルが成長する可能性のほうが高い。いまからクソ高けェスーツは買わなくても良いんじゃねェの?」

「ポールが言っていただろ? 雅っていうヤクザがウチの傘下へ入るって。そうなりゃ、CEOの私が盃を渡さきゃいけないだろ。と、いうか、オマエとポールにも盃をあげねェとな」

「盃ってなんだ?」

「ある国じゃ、頻繁に行われる儀式で使われるものだ。与える側が親となり、与えられる側が子となる。とはいえ、オマエと私は同等の姉弟分の盃を渡すがな。そしてその国では親の命令は絶対だ。野郎には野郎の文化があり、そしてそれは私のお気に入りでもある。だから近けェうちに行おう」


 ルーシはいつの間にか日本文化を気に入っていた。前世で様々な要因が重なり日本へ住むようになり、最初は「醤油臭くて、中国の一部ではないらしい。そして、こちらをじろじろ見てくる猿どもしかいない」と評価していたが、1年ほど暮らしていくうちに、日本という国が好きになった。侍や忍者はもちろんのこと、日本刀も気に入って喧嘩の際には持っていくようになっていたし、生前邸宅も日本式で、刺し身や肉じゃが、懐石料理、家系ラーメン、はてには納豆に挑戦したこともあった。そのため、ルーシにとって日本は第2のふるさとと変わりがない。


「まあ姉弟の決定には従うけどよ、雅をどうやって扱うつもりなんだ? サクラ・ファミリーはヤツのもんになるだろうが、大半は団結度の低いヤツらしかいないらしいじゃん」

「団結度が低い、ねェ。そうだ、そこをつくんだよ。仮にもイースト・ロスト・エンジェルスの1大マフィアで、人数は他のファミリーを上回る3000人。しかし優秀なヤツは出世を狙っているだろう。臆病で無能な雅に仕方なく従うものの、実際のところ、忠誠心は皆無に等しいはずだ。そこで、私とオマエが有能なヤツらを食っちまうってわけさ」

「使える野郎は子分にして良いってことか?」

「そういうことだ。私も近衛師団がほしいと思っていたところだしな……」


 クールにはカリスマがある。サクラ・ファミリーの優秀な連中は、こぞって雅の盃を返してクールの傘下へ入るだろう。そうなることは想定内で、さらにルーシが割り込む形で有能な構成員をボディーガードとして雇用する。仮にも10000人のスターリング工業を率いていた男だったのだから、そこまで苦労はしないだろう。


「とかいってる間についたみたいだぜ。こっからは……」

「うん、よろしくね、お父さん」


 まさしく10歳で父親を尊敬する娘である。つい最近その父親役を叩き潰した人間とは思えない。


「すげェ演技力だな……」


「お父さんもちゃんと私の父親やってよね。困るのはお互い様なんだからさ」

「へいへい。まァ、よほどのことがない限りは……」


 刹那、クールは車の窓から顔が見えないようにうつむいた。


「……よほどのことが起きた。親父とおふくろがいねェと良いが」

「お父さんの家族?」

「ああ、親父とおふくろ、使用人と……キャメルって妹もいる。風のうわさじゃ、1年生にしてMIH学園の主席になったらしい」

「へェ……」


 両方の車が止まったのを確認し、ルーシは真っ先に外へ出る。そして男時代の力を使い、クールを強制的に外へ連れ出す。


「なにすんだルーシ!!」

「お父さんの妹ってことは、私の叔母なんでしょ? だったら挨拶しないと」


 そして黒塗りの高級セダンから人が降りてくる。

 身長はルーシと差異がないように見える。顔立ちはやや童顔だが整っている。髪型は明るい茶髪をカチューシャでまとめている。もしルーシと年齢がさほど変わらないのならば、至って普通な格好。しかし高校生だと考えればやや子どもっぽい格好。長いTシャツにジャケットを羽織っていた。

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