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もしも最強の無法者が銀髪碧眼幼女になったら  作者: 東山琉生
第一幕 銀髪碧眼の幼女(中身最強の無法者♂)、LTASに立つ
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ポンコツ天使と金髪碧眼の少年

大規模書き直し開始!! とりあえずこのシーズンのチャプター1は52話編成から22話構成に生まれ変わります!! 

 どうやら死んでしまったらしい。

 あれはいつもどおりの1日だった。夜通し酒を飲み、すこし危なげなクスリをキメて、妹と親友、部下と遊び呆けていただけだった。仕事終わりということもあり、すこしばかり羽目を外しすぎたのかもしれない。

 ただ、それがなんだって話でもある。


「あーあ、ついに死んじまったか。葬式は盛り上がっているんだろうな」


 ルーシ・スターリング──死んでしまった彼に名前なんてないのかもしれないが、とにかく彼は生前ルーシと名乗っていた。そんなルーシは、煙草も酒もクスリもない真っ白な空間にて、腕を組みながら目の前にいる女と対峙する。


「随分と軽いですね。アナタ死んだんですよ?」

「死んじまったからにァ仕方ねェだろ。それで? これからどうなるんだい? おれは宗教放棄者だが」


 ルーシは普段の冷静な態度を崩さない。


「宗教放棄者、ですか。ならばちょうど良い場所がありますよ」


 ピンク色の髪色をした女は、セールスマンのごとくなにかを見せてくる。


「総殺人数24860人。本来ならば満場一致で無期刑でしょうね。永久に魂を縛られ、アナタという存在がアナタの世界から忘れ去られるまで、そこから出ることはかなわない」

「時効を含めれば10000人程度だろ?」

「殺人に時効はありませんよ」女はルーシをうつろな目で見据え、「仮にあったところで、結果は変わらないでしょう。アナタは狂っている。どこまでも人を殺し、どこまでも野望を追い求め、どこまでも異常であり続けた。そんなアナタが為すべきことは……」

「処女である私を抱くことです……とでもいうのかい? ははッ、冗談だよ……ん?」


 女はまさしく図星といわんばかりに目を見開く。そんな間抜けな姿に、ルーシは鼻で笑う。


「おいおい、たかが人間ごときに考えを読まれるとは……相当なポンコツだな」ルーシはヘラヘラ笑い、「おれが生前いた日本じゃ、髪の毛をピンクにしていたヤツはみんなアホだった。忍者とか侍とかいっていれば、ベッドまで行くのに一時間もいらなかったよ。手に無数の生傷があるのは不気味だったがな」


「……そうやって私をいじめて楽しいですか?」


 女は涙目になる。


(メンタル弱すぎだろ、このアホ)


 ルーシは舌打ちし、


「いじめていねェよ。アホにアホっていったらなんの罪に問われるんだい? ロジハラってヤツか?」


 こんなポンコツが天使のようだから、天界も落ちぶれたものだ。ルーシは首をゴキゴキ鳴らし、しばし号泣する寸前の女を見つめる。

 やがて、ルーシは1回おおきなため息をつき、彼女の胸倉を掴む。


「おい……いい加減にしろよ」冷たい声質で、「オマエみてーな阿婆擦れを抱け、だと? てめェが管轄している人間の世界でも、ポンコツのてめェは無様にボコられてレイプされるのがオチだ。それもある意味卒業ではあるがな?」


 ついに号泣してしまった。

(面倒くせェ。人間にちょっと脅されたくらいで泣き始めるようなヤツが、偉そうに物事語っているんじゃねェよ)

「まあ、泣くなよ。泣いたところで問題は解決しねェぜ?」

「で、ですが……」


「泣くんじゃねェ!!」


 ルーシはついにブチ切れた。10分に一度煙草を吸っている人間は、もう何日と煙草を咥えていない。さすがに苛立ちが隠せなくなってきているのだ。


「……悪りィ。ヤニ切れなんだ。週1でセラピーにも行っているのさ。もう限界が近けェ」

「だ、だったら──」


 女は紙巻煙草とライターをどこからともなく発生させた。ルーシはそれを受け取り、真っ白な空間に煙が灯る。


「ありがとう。あー……やはりこれに限るな。んで、話を進めようぜ? まずは自己紹介からだな。はい、どうぞ」

「……ヘーラーです。天使を務めております。まだ3年目の駆け出しものです」

「メンヘラってわけだ」ルーシは嫌味な笑みを浮かべる。

「ち、違いますっ!!」顔が真っ赤になる。図星だったのか。

「それで、メンヘラよ。おれが死んでしまったってのはなんとなくわかる。腹は減らねェし、身体も快調だし、なによりこのアホみてーな空間はわざと作られたと感じる。死を受け入れられねェヤツに向けて、すこしでも精神を安定させるためにな。ま、おれにはあまり関係ないが」


 ルーシは死を受け入れている。別に死因などどうだって良いし、残された者の気持ちもわからないうえに、ヤツらならばルーシの死なんて軽々と超えてくれるだろう。だからどうだって良いのだ。


「随分と冷静ですね。普通、もっと取り乱すものですよ?」

「人間に考えを読まれたオマエこそ取り乱すべきだと思うぜ?」

「そ、それは……」

「なあ、メンヘラ」

「メンヘラじゃないですっ!!」

「ちょうど良い場所ってなんだ?」


 最前の会話で気になった単語だ。このヘーラーとやらはなにかを隠している。どうせたいしたことではなさそうだが、一応聞いておく価値はありそうである。


「宗教放棄者にふさわしい場所。と、いうことはだ。神を信じたくなるような場所へとおれを飛ばす……ってとこか? それこそ戦場か、動乱か、革命か」

「それは言えない約束となっているので……」

「ああ、そうかい」ルーシは2本目の煙草に火をつけ、「深くは聞かねェよ。おれとてオマエらに逆らうほどアホじゃねェ。人間の送り場所を決められるくらいに偉いオマエらを、おれひとりが反逆したところでどうにかなる話でもないしなぁ」


 ルーシは煙草をヘーラーへと投げ捨て、

「おれは暴れられればそれで良い」

 宣言したのだった。

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