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センパイ、自宅警備員の雇用はいかがですか?【コミカライズ版2巻8/28発売!】  作者: 二上圭@じたこよ発売中
わたしのためを思って言っているんだと、言わないでください

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01

 自宅の最寄り駅から十分ほどの副都心。東京を代表する繁華街として、必ず名の上がる駅である。


 クリスマスとはいえ今日は平日。満員電車のピークはとうに過ぎていることから、車内はガラガラとは言わずも空席は見当たらず。しかし乗車時間は大したことはないので、隣の車両に探しに行くほどではなかった。


 むしろ車窓から覗ける、移り変わる都心の景色。情緒もなにもない極彩色の看板たちを、興味深そうにレナは目を離せずにいたようだ。その横顔は感嘆すら覚えていた。


 ダイナミック家出を決行したあの日。レナはバスにしか乗っていないので、東京の景観というものは、初めてばかりで興味深いのかもしれない。


 そういう意味では、レナはまだ都会の洗礼は受けていない。なにせ人混みと呼べるものを目にしたのは、待ち合わせをした最寄り駅、その帰宅ラッシュくらいだから。


 まずは電車を降り、改札を抜けたところで、レナは目を丸くしていた。どこを見渡しても、人、人、人。声こそ上げていなかったが、レナの目線は忙しそうにしていた。


 握った手に緊張を帯びたように力が入る。手が緩んだ途端離れ離れとなり、駅構内で彷徨い続けるのを恐れるかのようだ。


 それがまたおかしかった。なにせ駅構内の混雑具合は、前に進むのに障害がないくらい。ふくろうの石像を横目に通り過ぎ、階段を上った先はこの程度ではない。


 そんな事前の心づもりがないものだから、


「わぁ……」


 目の前に広がる雑踏にレナは喉を震わせた。それこそ足を止め、想定外の事態に右往左往するようだ。


 そして小ぶりな可愛らしい唇からは、


「……ゴミが一杯」


 およそ人を例えるのに相応しくない感想が漏れ出した。これこそが心からの本音であり、レナの性根が垣間見えた。


 堪えきれず噴き出した。


 いつもの手ではなく、口がそんな風に動いたことが、ただただおかしかったのだ。


 そんな俺の反応に、レナは思わず口元を空いた手で抑えた。失言でしかないものが、自前の口から漏れたことに慌てるように。でも取り繕うのは最初だけ。


「……ふふっ」


 悪戯を見つかった悪ガキのように、開き直って微笑を零しているのだ。


 人をゴミ扱いするとは何事かと、まっとうな大人なら指導するだろう。でもここにいるのはろくでもない大人だけ。


「笑ってられるのもいまのうちだけだ」


 なによりこう育ててしまった張本人だ。くだらないことに目くじらを立てるほど、無粋ではないのだ。


「これからおまえを、あの人混み(ごみばこ)に放り込んでやる」


 ニヤっとした俺に、レナはおかしそうにしながらポケットに手を伸ばす。でも、すんでのところでその手は止まった。幾ばくか逡巡した後、


「人をゴミ扱いするのは、どうかと思いますよ?」


 その手はそっと元の位置に戻った。


「まったく、センパイのモラルはどうなってるんですか」


「鏡を見てみろ」


「朝見ましたけど、家主の顔が写ってました」


「つまり立派だってことだな」


「立派……?」


「なんだ、文句あるか?」


「いえ、ありませんよ。ただ、これが高卒の国語力って思っただけです」


「それを言ったら、おまえなんて中卒だろ」


「わたしはいいんです。だって――」


 レナは清々しいほどの得意げな顔で、


「神童ですから。社会の物差しなんかで測れません」


 自画自賛を口にしたのだ。


 初めてあったあの日。自らを神童と自信満々にのたまった。


 ふすまの向こう側で、一体どんな顔を浮かべていたのだろうと思ったものだが。……なるほど、もしかしたらこんな顔を浮かべていたのかもしれない。


 かつて好奇心を抑え、ついぞ覗くことはなかった顔。どうやら塩の柱になることもなければ、空に帰ってしまう心配はなさそうだ。


「センパイ。今日は連れ出してくれて、ありがとうございました」


「なに言ってやがる」


 こうして俺たちにとって、忘れられない特別な一日が始まった。


「今日は始まったばかりだろ」


「はい」

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百合の間に挟まるな! ~脅迫NTRもの展開を阻止した結果、百合の間に挟まれた件~
推しの百合営業系Vチューバーの間に男が挟まったばかりに、脳破壊された主人公が子供時代にタイムリープした話。
本編とその前日譚まで完結しておりますので、よろしければこちらもご一読ください。



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― 新着の感想 ―
[良い点] とても……とても幸せな時間が流れている…… だからこそ、確定している崩壊が恐ろしい……
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