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センパイ、自宅警備員の雇用はいかがですか?【コミカライズ版2巻8/28発売!】  作者: 二上圭@じたこよ発売中
否融通社会軌条ノ機関者

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 今回の話はまどかにとっても、降って湧いたような話である。気持ちを割り切るなんて簡単にできることではない。それでもまどかは、自分の立ち位置をハッキリさせた。


 恋ではなく、友情を取ってくれたのだ。


「ええ。ありがとう、まどか」


 全幅の信頼を置ける味方が自分にはいる。


 それだけで気持ちは軽くなる。


 気持ちに倣うような足取りは、目的の場所を前にして止まった。


 一見の客を拒むような、中の様子を伺える小窓一つない。店先の明かりはついていない。扉横の看板は『CLOSED』と示している。


 まどかは扉に手をかけながら、私に顔を向けた。逡巡しながらも、私は黙って頷いた。


 気持ちはまさに、悪の根城に踏み込むかのようだ。かといって、私たちを出迎えたのはわかりやすい形をした、悪の親玉ではない。ハッと目を奪われるような、妙齢の美女である。


 カウンターの向こう側で、私たちを待っていた彼女が、まどかが慕ってきたマスターなのはすぐにわかった。


 余裕ある優雅なまでの面持ちは、一度まどかへ向けられる。そのまま視線は私に向けられると、微笑が浮かんだ。


 営業時間外の客に向かって、差し出されたのは客商売の挨拶ではなく、


「タマを呼んでほしいのね」


 すべてを察した私たちの用向きであった。


「マスター……」


 まどかの声は、それ以上は続かない。


 この現実は覚悟していたことだ。今日まで差し出してきた信頼が裏切られていた。わかりやすい現実として突きつけられ、声には悲哀の色が塗られていた。


 奥歯を噛み締めながら、私は彼女を睨みつける。


 まどかの信頼を裏切っておきながら、悪びれようともせず、涼しい顔を浮かべているのだ。


 それが許せなかった。『よくもまどかの信頼を裏切ったな!』と食ってかかりそうになった。


 一過性の衝動を必死に抑える。


 本来であれば、憤り食ってかかるにせよ、悲しみで泣き崩れるにしろ、まどかが感情を発露させたいはずなのだ。場を壊さないように、まどかはそれを堪えているのだ。


 すべてはすべて、私のために。


 そうやってまどかが我慢によって支えられている場所を、私の衝動で滅茶苦茶にするわけにはいかない。


 促されるがまま、入り口より一番近い、カウンター席へと並んで座った。


 マスターは電話をかけると、


「今から店に来なさい」


 一方的にたった一言だけ告げたのだ。


「すぐに来るそうよ」


 電話はそれで終わり。こんな簡単に呼び出せるのかと、疑わしいほどの気軽さだった。


 私たちは感謝を述べることも、頷くこともせず、無言で報告を受け取った。


 そしてその男は、確かに言葉を違うことなく、すぐに来たのだった。


「いきなり呼びつけて、なんの用だガミ?」


 店に入ってきた第一声は、不快感もなければ迷惑そうなものではない。あんな一言で呼び出されながらも、不思議そうにもしていない。


 二人の仲からもたらされる普段どおりの日常か。


 はたまた、なにかを察していたのだろうか。


 どちらでも構わない。


 大事なのはただ一つ。昨日この目に焼き付き、描きあげた顔だった。


 向こうも私の顔をしっかりと見たのだ。薬にも毒にもならない存在であれば忘れられていたかもしれない。だがらこそ昨日の今日で、私の顔を忘れたなんてことはないだろう。忘れたなんて言わせない。


 昨日よりも近い距離で、私たちはこうして相対した。


 その顔は、どんな風にこわばるだろうか。


 その口は、どんな言い訳を吐き出すのか。


 自らの立場はよくわかっており、相応のリアクションがあるはず。


「昨日ぶりだな、クソ姉」


「なっ……!」


 なのに顔色を変えないどころか、罵ってくる有様に唖然としてしまった。それこそ立場が逆だったのかと錯覚してしまいそうなほどの、堂々とした佇まいだ。


 社会的に私は間違っていない。間違っているのはこの男のほうなのだ。


「援護は欲しいかしら?」


「いらん。そんなものより一杯くれ」


 なのに負ける要素なんて一つもない。そう確信している口ぶりであった。


 目にする価値もない。私たちを横目にすることなく、入り口より一番遠い席へと腰を下ろした。


 どこからその自信は湧いてくるのか。


 まどかからもたらされた父さんの対応。それを知っているから、警察沙汰にならない自信でもあるのか。だがそれだけとは思えない。


 差し出されたビールを一気に飲み干したことで、男はようやくこちらを向いた。


「さて、これでも社会人だ。自己紹介くらいはしてやる」


 傲岸不遜たる態度は、結果のわかっている勝ち戦に臨むようだ。


「俺は田町創」


 清廉潔白な人生。


 胸が張れないものがそこになければ、社会を味方につけられる。


 私はそんな大義を背に置きながら、


「テメェの大好きな妹の就職先だ」


 あまりにも無力であることを知ったのだった。

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百合の間に挟まるな! ~脅迫NTRもの展開を阻止した結果、百合の間に挟まれた件~
推しの百合営業系Vチューバーの間に男が挟まったばかりに、脳破壊された主人公が子供時代にタイムリープした話。
本編とその前日譚まで完結しておりますので、よろしければこちらもご一読ください。



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― 新着の感想 ―
戦うってじてんでもう履き違えてない?この姉は
[気になる点] 誤用報告です。行間除いて15行目、『数刻ばかし逡巡しながらも、』ですが、数刻だと「数時間」ということになります。シーンから考えても数秒ではないでしょうか?
[一言] こういう人って、自分に負い目があったら自分の責任でもないのに責任感じちゃうから口論弱いんだよなぁ 感情論や屁理屈に理論理屈で勝つのは難しい
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