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センパイ、自宅警備員の雇用はいかがですか?【コミカライズ版2巻8/28発売!】  作者: 二上圭@じたこよ発売中
非遵法性享楽主義者ノ人生論

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「確かにそう言われりゃそうだ。ホテルのディナーに誘ってくれなかった。それで餓死したとか、恨むのは筋違いもいいところだな」


「こんなブラック企業でもう働きたくねぇ。でも実家は頼れない。労基に駆け込んでも無駄。生活保護の申請は通らない。そう信じてたから、餓死する道を選んだ。結局のところ、そんな話だろ?


 ならあいつを追い込んだのは、この程度のことで逃げ場がない。死ぬしかないと信じ込ませた親と社会だ」


 憎々しげでありながらもタマがせせら笑ったのは、そのタチの悪い人間が死んだからだろう。


 次のお楽しみとばかりにタマが目を向けたのは、寿を司るものである。私が買ってきたものであり、ネタはマグロ尽くし。タマの好物だ。一貫しかない大トロをパクリと口にして、タマは満足そうである。そしてそのまま得意気なそれへと変貌した。


「こんな格言を知ってるか? 子供の不幸は、無自覚な大人の不出来と不手際、その無責任な責任の押しつけから生まれるんだ」


「誰の格言だよ」


「最近テレビにも出た、ガミもよく知ってる偉人だ」


 眉をひそめながらも考えるも、心当たりはまるでない。


 お手上げだと肩を上下させると、


「ファースト・タマチだ」


「おまえかよ!」


 恭しい低い声色で告げられた名に噴き出したのだ。缶を口にしようとしていたところなので、危ないところであった。


 一発場を沸かせたことにタマは愉快そうに口端を上げた。


「今回の件がまさにそれだ。中身のない耳触りのいいだけの綺麗事を掲げて、勢いで俺たちのせいにしようとした。なぜなら立場と声の小さい子供に、全部押し付けるのが一番楽だからだ。問題の根っこ、真偽なんてどうでもいい。自分可愛さで身を守りたいだけなんだよ」


「そう考えると、マジでタチの悪い連中だな。生活のために仕事をしているだけの公務員のくせして、なにが聖職者だ」


「あのクソ教師は、生徒にとっちゃたった一人の担任だ。でも向こうにとって、定期的に入れ替わるその他大勢に過ぎないんだよ俺たちは。クソ親に好きなように糾弾させたのが、なによりの証拠だろ」


「高橋の奴、いきなりあの場に引きずり込んで、偉そうにふんぞり返ってたからな。初めから俺たちの話なんて、聞くつもりはなかったってことか」


「そんな頼れる素晴らしい聖職者がいたなら、あのクソザコナメクジも餓死しちゃいねぇよ」


「そりゃそうだ!」


「教師は大変だなんだって言っても、大学を出てまで自分で選んだ道だろ。ならその苦労も、体裁も、言い訳も、俺たち子供は知ったこっちゃねぇ。テメェらの不出来と不手際の責任を、被ってやる義理なんてどこにある。それができないのが嫌なら辞めちまえ、バーカ!」


 タマは両手で中指を立てながら、後ろに倒れ込んでケラケラと笑っている。初めての飲酒のせいか、こんな短時間でもうタマは出来上がったらしい。


「そもそも不条理なイジメをなくしたいなら、法律を変えろ。少年法なんていらねぇ。イジメ加害者は殺せばいいんだ!」


 大の字になりながら、自ら口から出たものを名案だとばかり言った。


「万引きも、ストーカーも、痴漢も、赤横断だってそうだ! 殺しちまえばいいんだよ! 悪いことだと自覚しておきながら、犯罪に走った奴は全員殺しちまえ! そしたら世の九十五割の犯罪はなくなるぞ!」


 どうやらタマにとって酒はアッパー系。発言は無責任に過激になり、頭の悪いワードを平気で吐き出すようだ。


「また過激で極端なことを言うな」


「だってそうだろ。罪に対しての罰の小ささは、罪を犯すことへのハードルの低さだ。リターンに対してのリスクが小さいから――」


 タマはガバっと起き上がり、


「ガミみたいのが世に蔓延るんだ!」


 尊大な顔を浮かべながら指を突きつけてきた。


 お互いの顔を見つめ合い、数秒。


 グッ、グッ、グッ、と我慢した音が二つの喉から鳴り響き、


「確かにそのとおりだ!」


 私たちは揃って腹を抱えたのだ。


 どうせハードルを倒してコケたところで、大した痛みはない。それがわかっているから私は悪事を働き、レールの上で真面目に走るのがバカバカしく感じているのだ。


「冤罪はどうする?」


「冤罪をかけた奴を殺せ! そしたら人の人生を狂わす、その重みがよくわかる!」


「死んだらそれまで、死にたいからって罪を犯す奴はどうするんだ?」


「拷問だ! 反省なんていらん。罪を犯したことを後悔させろ!」


「他にも色々と問題が出てきそうだが、それも全部、殺して解決か?」


「そうだ! この社会は元より、継ぎ接ぎだらけの問題だらけ。端から誰かが損を被るようになってるんだ。なら多少の犠牲はやむをえん。ババを引いた奴は諦めて殺されろ。主もこう仰っている。死こそが真の救いだ!」


 タマはまた寝転んで、胸を十字で切って「ラーメン!」と唱えた。一桁のガキみたいな真似が間抜けすぎて、私は哄笑を吐き出した。


「社会に足りないのは罪に対しての罰の大きさ。モラルに期待した統治は、現代社会にはまだまだ早すぎたってことだな」


「バーカ! そんなもので成り立つ社会なんて、一生来るわけねぇよ!」


 タマの意見に同調したつもりだが、まさかの罵声が飛んできた。


 私自身をバカにし、否定したいわけではない。そんなものがいずれくると信じている者たちを嘲笑ったのだ。


「なにせこの社会は、初めて手にした知恵を土壌にして作り上げてきたんだ。土壌が腐ってるんだから、綺麗事で成り立つ社会なんて実るわけがないだろ」


「初めて手にした知恵?」


「人の目を気にする生き方と、責任の押し付け方だよ。あの神をもって、こんな奴らは永遠に生きてられちゃ困るって、楽園から追放するくらいだ。悪い蛇に唆されて得た知恵は、それほどタチが悪かったってことだな」


 天井を見上げているタマ。更にその上にいるだろう相手の気持ちを、詐欺師のように勝手に代弁した。


「大事なのは耳触りのいいだけの綺麗事。中身がないせいで起きた問題は、子供に責任を押し付けて体裁を整える。そんな奴らが偉そうに威張り散らしている社会に、モラルもクソもねぇだろ」


 タマを息ついた。笑っていたはずの顔が、その儀式を通すことで神妙なものへと変わっていった。


 静寂がこの部屋を支配した。


 気まずいわけではない。ただ黙ってタマの次の言葉、その口が開かれた瞬間をこの目は映した。


「ガミ、俺は将来、あんな大人にだけはならんぞ」


「あんなって、どんなだよ」


「自覚のないタチの悪い大人にだ」


 タマは語気を強めながら、開いた右手を中に伸ばす。見えないものがそこにはあるかのように、そのまま握り込んだ。


「俺は置かれた現実を受け入れず、両耳を塞いで、俺は悪くない、あいつが悪いんだと叫んだりしない」


「なら、黙って責任を受け入れるのか?」


 私は困惑しながら聞いた。


 後数ヶ月で、私たちは高校を卒業する。タマの進路は知らないがまず進学はないと確信していた。雇用形態はどうなるかは知らないが、大人たちに混じって働くことになるだろう。


 子供扱いはもうしてもらえないその場所で、真っ当な大人を目指すのか。そう思ったのだが、


「バーカ、俺がそんなことするわけないだろ」


 タマは心外そうに口を尖らせた。


「全てを自覚した上で、その責任を押し付ける。それが俺の目指す大人だ」


「余計タチの悪い大人じゃねぇか!」


「違う、こういうのはタチの悪い大人じゃない」


 物を知らぬ子供へ教えるように、噴き出した私にタマはこう言うのだ。


「ろくでもない大人って言うんだよ」

当作品は作者の主張、メッセージ性を込めることは一切ありません。

劇中で語れる全てはキャラを作り上げる設定であり、物語を進めるプロセスであります。

犯罪の教唆や幇助をするものではありませんので、それだけのご理解をお願いいたします。


今回の過去編を通してわかるのは、タマの人間性だけではありません。

このセンパイにしてあのコーハイあり。

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百合の間に挟まるな! ~脅迫NTRもの展開を阻止した結果、百合の間に挟まれた件~
推しの百合営業系Vチューバーの間に男が挟まったばかりに、脳破壊された主人公が子供時代にタイムリープした話。
本編とその前日譚まで完結しておりますので、よろしければこちらもご一読ください。



コミック版が3月28日に発売、予約受付中!
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― 新着の感想 ―
は! 社会の悪い方面しか見てないだけでしょそれ 良い面を見ようとせず、現実と向き合おうとしてないだけ 世界をいいと捉えるか、悪いと捉えるかは自分次第だけど (両足両腕無くなった、失明したとかは例外…
[一言] たしかにこれはろくでもない大人ですね
[一言] ほんとろくでもないwwww
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