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「いやー、笑った笑った!」
思い出し笑いを堪えながら、自販機で買ったばかりのコーラを開けた。
運動部が張り上げる、奇声にも似たスポコンの叫声。それをBGMにしながら自転車へと腰掛ける。私のではない。だからといって盗難品でもない。自転車置き場にある、誰ともわからぬ自転車を、勝手に椅子にしているだけだ。
対してタマは、自分の自転車を椅子にしている。面白いものを見せてもらった礼に奢った、エナジー系ドリンクを手にしていた。それがタマの好みというわけではない。自分の金ならまず買わない、二百円の大台に乗ったものを遠慮なく選んだのだ。
タマはそれを一気に喉に流し込んだ。
「クソ共め……」
エナジードリンク特有の、甘ったるい匂いを放ちながらも、それが苦かったかのような声色だ。
あれだけのことを言い放ちながらも、その気は一向に晴れていない。時間が経ったことで、その怒りはより粘質的に、かつ薄暗いものへと変わったのだ。
「なんだタマ、もう終わったことに、まーだ怒りが収まらんのか」
「あれで終わるわけないだろ」
「あ?」
「言い分もわかるがおまえも悪い。こんな形で子供を失った親に、あんな言い方をするのは許されない。決して見て見ぬ振りをしたんじゃない。自分たちは日々これだけの業務に追われている。だから目が届かなかっただけ。耳に入れてくれたら、ちゃんと対処できたし、こんなことにはならなかった。
時間を与えたら、そんな言い訳を考えてくるに決まってる。面子と立場を守るために、押し付けられなかった責任をなんとか折半してこようとするんだ」
「罪を共に分かち合おうと必死なわけか」
「あのクソザコナメクジめ……最後の最後で、面倒なことに巻き込みやがって。くたばりやがれクソが!」
「もうくたばってるだろ」
「そういやそうだったな」
あれだけ苛立たしげな顔が一転。タマはケラケラと嘲笑いながら、地面を見下ろした。まさにその先に斎藤の顔を見ているかのように。
「ガミ、さっきは面白かったか?」
笑いが一段落すると、タマは語気を落としながら言った。
「控えめに言って、あのアホ面は最高だったな」
「なら、これからもっと面白いものを見せてやる」
タマはエナジードリンクで喉を鳴らし、
「だから手を貸せ」
不敵に口端を上げた。
その様だけでも面白く、この目はトランペットを与えられた少年のように輝いた。
「なにをするんだ?」
「目には目を、歯には歯を、タチの悪い無責任には、タチの悪い無責任を」
タマはぐしゃりと空になった缶を潰す。
「自らの行いを棚に上げて、無責任に責任を糾弾することが、どれだけタチの悪いことであるか。物事の真偽も見定めず、見せかけの大義名分と正義があれば何をやっても許される。そんなタチの悪い正義の鉄槌、無責任の業火で焼き払ってくれる!」
当作品は作者の主張、メッセージ性を込めることは一切ありません。
劇中で語れる全てはキャラを作り上げる設定であり、物語を進めるプロセスであります。
犯罪の教唆や幇助をするものではありませんので、それだけのご理解をお願いいたします。
短いので今晩もう一話投稿します。




