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センパイ、自宅警備員の雇用はいかがですか?【コミカライズ版2巻8/28発売!】  作者: 二上圭@じたこよ発売中
盲目性偏執狂ノ傾慕

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「引きこもりの兄弟なんてのはただの人災だ。煙くて煙くて仕方ないだろうな」


 金曜日の夜の恒例として、その日もマスターの店にいた。


 タマさんとは先日起きた、引きこもりの兄弟殺傷事件の話になった。


 なぜそんな話に飛んだのか覚えていないが、世間話なんてものはそんなもの。お題を決めて討論するのではないのだから、あれこれとしていた話の一つとして、たまたま話題に上がったにすぎない。


 そういった時事ネタは、タマさんの考えを聞くのが定番となっていた。


 タマさん自身、得意気に社会語りをしたり、偉そうに批判をしたりはしない。相手を選んで差し当たりのないコメントをする。それができる人だ。


 だが話を深く求めれば、SNSなら間違いなく炎上するようなことを語ってくれる。


 歯に衣着せず、綺麗な言葉で飾らず、不謹慎など厭わず、人間の持つ黒い部分を明け透けにあげつらう。


 際どさなんて平気で飛び越えるのだから、人によっては不快になるだろう。特に性善説を信じるような人に聞かせれば、憤ること間違いなしだ。


 タマさんもそれを弁えているから、他にお客さんがいるときはしない。


 相手と場所を選ぶ話をしてくれる大人は、わたしの中では貴重でもあった。


「引きこもりを許してしまった親は自業自得として、巻き込まれた兄弟は可哀想なもんだよ。なにせそいつが生きてるだけで、自分の社会的信用が落ちるからな」


「世間体が悪いとか、そういう話ですか?」


「いいや。もっと直接的に人生に影響を及ぼす、信用問題だよ」


「人生に影響が出る、信用問題……?」


 眉間にできた皺を、人差し指で解きほぐしながら考える。


 答えは出ず、手を上げる代わりにタマさんに目をやると、


「一番わかりやすいのは結婚だな」


「あ……」


 もたらされた答えにハッとした。


「親が面倒を見ている内はいいが、いなくなったら誰がそいつの面倒を見るんだ、って話になる。知らぬ存ぜぬは通用しない。社会が定めた法が、そいつの面倒を見ろって言ってくるんだ。無駄飯ぐらいの金食い虫を抱え込まなきゃならん将来に、いい顔する相手なんていないだろう」


 確かに兄弟に引きこもりがいるせいで破談になった、みたいな話はテレビで見たことがある。


「引きこもりにならざるえない過去なんてのは、人それぞれなんだろうがさ。迷惑だけをかけられているほうは、そんなの知ったこっちゃない。好きでこうなったわけじゃないって喚き立てられようものなら、それこそ『うるさい死ね』って言いたくなるだろうな」


 からからと笑いながら、タマさんは物騒なことを言う。


 今日も平常運転である。


「飼い主の責任下のもと、引きこもりを処分していいなんて法改正がされてみろ。世の中から、九分九厘の引きこもりがいなくなるぞ」


「タマさん、今日もズバズバと危ないことを言いますね」


「昨今のトレンドは、弱者の人権保護。こんなことを気軽に口にしようもんなら、プロ市民たちに襲われる。――だから、相手を選んで喋ってるつもりだよ」


 ニカリと上げるその口端に、この胸はドキリとしてしまった。


 やはりタマさんはそこらの大人とは、ひと味もふた味も違う。


「それにクルミちゃんのお友達は、その九分九厘の執行者にはならないんだろ?」


 なにせこうやって本題へ繋げてくれたのだ。


 楓ちゃんは学校に通えていると椛は確信していた。あれからだいぶ経つのに、わたしは未だ訝しげであったのだ。


 だから兄弟殺傷事件の話題があがったとき、友達の妹も、といった具合に話を切り出したのだ。


「自分の将来のためにじゃない。妹の将来のことを考えて、一人で立てるようになってほしい。優しく寄り添って、話を聞こうと勤めてきたけど成果はあがらない、だっけ?」


「はい……満足に受け答えもして貰えないようで」


「なるほど、わかったわかった」


 軽快な声を鳴らすタマさん。それこそ此度の問題、その本質がわかったかのような口ぶりだ。


 次の瞬間、タマさんの両手がこちらに伸びると、


「さあ、貴女の気持ちを聞かせて?」


 この両頬に触れ、真っ直ぐと目と目を合わせてきた。それこそ視線を逸らすことを許さない。そう言わんばかりに顔の向きを固定したのだ。


 不意打ちのようなそれに、わたしの胸は高鳴った。


 進展などまるでしてこなかったわたしたちの関係。それがいきなり変わらんとしているのだ。


 自らの気持ちを先に告げず、わたしの気持ちを聞かせてほしい。


 壁ドンに変わる、新たな女子に迫る発想か。


 まさに今のわたしは、メロメロのメロメロであった。


「クルミちゃんの友達がやってるのは、これと同じだ」


 が、それらは全て幻想だと告げられた。


「心に寄り添ってるんじゃなくて、無理やり自分のほうを向かせているだけ。これで話し合いになるんなら、とっくに脱引きこもりだ」


「あ……」


 もたされた幻想にガッカリしそうになったが、もたらされた問題点に、そうかと納得したのだ。


 楓ちゃんは家族に背を向けるほどの引きこもりだ。


 満足に声を上げることもできない子に、これと同じことをしているなんて愚行である。


 優しく寄り添っているつもりであろうが、逆効果にしかなっていないのだ。椛はそれにまるで気づいていなかった。


 当然である。客観的に見れているはずのわたしですら今知ったのだ。


 ちょっとしか二人の関係性を伝えていないのに、パッと問題点をあげたタマさん。そこらの大人とは違う様を見せつけられ、すぐにまたメロメロのメロメロになってしまった。


 一生この頬の温もりに浸っていたい。


「タマ」


 そう思っていたところにマスターが、


「それ、セクハラよ」


 そう指摘したためあっさりと消え去ったのだ。


 その両手は勢いよく、そのままテーブルのグラスを薙ぎ払う。


 パリン、ガシャーン、って。

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百合の間に挟まるな! ~脅迫NTRもの展開を阻止した結果、百合の間に挟まれた件~
推しの百合営業系Vチューバーの間に男が挟まったばかりに、脳破壊された主人公が子供時代にタイムリープした話。
本編とその前日譚まで完結しておりますので、よろしければこちらもご一読ください。



コミック版が3月28日に発売、予約受付中!
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― 新着の感想 ―
そいつにメロメロになるのはまぢでやめた方がいいぞっ… ろくでもない大人だから
[良い点] よいものはよい
[良い点] 素晴らしい。 [一言] 好きになる人と、そうでない人に別れそうだが、 何とも言えない、絶妙が、随所に。 なるほどと。 素直に我、思う、面白いと。 引き続き、拝読させて頂けますことを願っ…
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