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センパイ、自宅警備員の雇用はいかがですか?【コミカライズ版2巻8/28発売!】  作者: 二上圭@じたこよ発売中
反光合成禁断ノ時限果実

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 自分の変化に気づいたのは、この時期くらいからだったろうか。


 滑らかに舌が回り、伝えたい言葉が自然と出るようになっていた。あれだけ酷かった吃りは見る影もない。


 引っ込み思案でありながらも、受け答えがハッキリとできた幼き日。対人恐怖吃音症のコミュ障が、かつてのレベルにまで回復していたのだ。


「画面越しで今まで、なにを俺にほざいてきたか振り返ってみろ。今更、失言を恐れるだけ無駄だぞ」


 失礼に当たるかもしれないと言い淀んでいるときに、センパイにかけて貰った言葉だ。


 全くもって正論であり、これ以上ないロジハラである。


 おかげでまた一つ、開き直ることができた。レナファルトの道のりまでまだまだ遠いが、それでも声に出した会話に楽しみすら見出していた。


 そうやってわたしは楽しい日々を過ごしている。


 笑いながら、この幸せな日々を噛み締めている。


 一秒でも長くセンパイの側にいたいとすら、いつしか願うようになっていた。


 この想いに気づいたのは、雇用から八ヶ月を過ぎた辺りだ。


 仕事に出たセンパイを見送り、一通りの家事を終えた後。


 この頃のわたしは、寝具に倒れ込むのが日課となっていた。


 敷布団ではなく、センパイのベッドだ。


 センパイの匂いに包まれるがそこに不快感はない。むしろ倒錯的な欲求すら湧き上がってくるほどであり、それを求めてすらいた。


 わたしはこの足で未来を進むことを放棄している。


 この先の未来はなにも考えていない。


 楽で楽しいだけを与えてくれる唯一の人。目を閉じてただ、身を委ねているだけで幸せな毎日を与えてくれる。


 戦場を駆け抜けるのにもう覚悟など必要ない。むしろ喜んで共に行こう。


 センパイが好きなのだ。


 わたしは神童である。この想いがただの依存心なのはよくわかっていた。決して社会が定めた真実の愛や恋などではない。


 そこで疑問を抱いたのだ。


 そもそも社会とは、一体なんなのだろう、と。


 教科としての社会ではなく、概念、定義としての社会。


 ついそれが気になって、手元のスマホで『社会』と検索をかけた。


 なにかの答えを求めているわけではない。知識欲を得るくらいの感慨である。


 この世の知識は全てネットで得られる。黙ってまずはwikiに目を通すことにした。


 目が滑るような固い言葉の羅列が並べ立てられている。意味は理解できるが、想像通り面白い話ではない。得られるものもなかった。


 意思疎通が図れ、互いに働きかけ作用を及ぼす、秩序化と組織化がされた、ある一定の人間の集団。


 簡潔明瞭に要約すると、およそ想像通りの答えにしかならなかった。


 続けて『社会化』を調べてみるも、やはり大したことは書いていない。


 学習によって後天的に得られる、社会文化の価値や規範。


 強いて得られたものといえば、その価値や規範が、この想いを真の恋や愛ではないと定義したくらいか。


 期待はなにもしていなかった。


 ポッと頭に浮かんだ、社会性なるものを最後に調べて終わらせようと決めた。


「社会的……欲求」


 つい、書かれていたそれを口に出してしまった。


 ガツンと、その価値観が頭を殴打した。これがおまえが欲しかった物だぞと、その答えであることを知ったからだ。


「仲間から好意を受けたいという欲求……認められたいという欲求」


 自らに言い聞かせるように、羅列されたそれを音読した。


 初めてセンパイと出会った日を思い出す。


 美少女だなんて枠に当てはめられ、胸中をかき乱されてしまうほどに、嬉しいと高揚感を抱いた。


 父にも姉にも陽キャ集団に言われても、絶対に抱くことのないこの承認欲求。


 その正体をわからずにいたが、ついにその答えに辿り着いたのだ。


 社会の意味を、改めて思い出す。


 意思疎通が図れ、互いに働きかけ作用を及ぼす、秩序化と組織化がされた、ある一定の人間の集団。


 わたしは父や姉さんたちとは意思疎通が図れない。


 互いに働きかけ、作用をもたらすことなんて無理である。


 あの二人が帰属し尊ぶ秩序や組織が、わたしには耐えられない。


 父や姉さんといるのが、なぜあんなにも苦しいのかよくわかった。わたしとあの人たちでは、帰属している社会が違うのだ。


 わたしが帰属しているのは、センパイと築き上げてきた最小単位の社会。美少女だと言われて嬉しかったのは、同じ社会の住人に、好意をもたらされ認められたからだ。


 社会性の発達を読み進めていく中で、また新たな答えがもたらされた。


 真の理解者、心の友を欲する要求が強くなる。特定の人物に対する献身的崇拝は、時として渇望賛美となり、恋愛の発生に至ることもある。


 これが青年期。女児に置いては十一から十三才に起きることだ。


 画面越しにいるあの人こそが、真の理解者であり心の友であった。盲目的に尊敬し、崇めてすらいたと自認もある。


 現実社会。そこにわたしの居場所はない。


 なにせ現実社会のレールの上には、陽の光が降り注いでいる。


 現実を生きる人たちはそれを浴びることで育っているが、わたしにはその目映さが耐えられない。身を焼くようなその熱さでは、文野楓という苗を枯らしてしまうだけだ。


 レールの上を走れというのは、わたしに死ねと言っているのと同義である。


 なぜなら文野楓は、陽の光が降り注ぐオアシス(さばく)で生きられない、光合成ができぬ植物だから。


 レールへ引っ張ろうとする手を振り払い、唯一帰属している社会に救いを求めた。レールを外れた先にある、陽の光に晒されぬ地こそが文野楓の砂漠(オアシス)だから。


 わたしの社会は、センパイと二人の最小単位社会。今日までここで社会活動を行い、人生を営んできた。


 だからこれでいいのだ。


 ようは定義の問題である。


 陽の光が降り注ぐ社会では、この想いは真の恋や愛ではないかもしれない。だが帰属していない社会の定義などに、一体なんの意味がある。


 わたしが帰属している最小単位社会は、自分たちで作り築き上げてきたものだ。なら所属している者だけで定義を決めていけばいい。


 その方が楽で楽しくて、幸せだから。


「センパイ……好きです」


 そうして自らに宿ったこの想いを、真の恋や愛と定義したのだ。

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百合の間に挟まるな! ~脅迫NTRもの展開を阻止した結果、百合の間に挟まれた件~
推しの百合営業系Vチューバーの間に男が挟まったばかりに、脳破壊された主人公が子供時代にタイムリープした話。
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― 新着の感想 ―
[一言] 神童、というのは面倒くさいものだなあ… 自分の気持ちにもきちんと定義を与えてあげないと納得できないのかあ。
[一言] あいのめざめ~♪
[一言] 恋や愛に理由なんて求めてはいけない。 何となく居心地がいい、それだけで幸せを得れるのだ。
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