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センパイ、自宅警備員の雇用はいかがですか?【コミカライズ版3巻3/31発売!】  作者: 二上圭@じたこよ発売中
このレールの先に――

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07

予約投稿したつもりが、なっていなかったです。

昨日の失敗からなにも学ばない作者です、ごめんなさい。

 両耳を塞いで、嫌だ嫌だとダダをこねる子供のように身悶えをする。


 まどかは意地悪な継母のようにニマニマとしている。


「そもそも、いつまでも綺麗なままのほうが問題じゃない」


「わかってるけど……それと心がついてくるのは、別問題よ」


「椛もさ、可愛いペットとの将来じゃなくて、いい加減現実の男と向き合ったほうがいいわよ。一応、引く手数多なんだから。やったことで後悔するより、やらなかった後悔のほうがあれなんでしょ?」


「……それはわかってるけど、ピンと来る人がいないのよ」


「椛の場合は、理想が高いじゃなくて、理想がないのが問題よね。どんな人と付き合いたいとか、ないんでしょう?」


「そうね。いくら考えてみたけど思い浮かばないわ」


「理想がないなら、人生に必要なものから逆算してみたらどう?」


「必要なもの?」


「椛は将来、バリバリ働いて稼ぐタイプでしょう? ならいっそ外へ働きに出ず、家のことを全部やってくれる男の人を探すのよ。それこそ、楓ちゃんの男版がお似合いなんじゃない?」


 楓の男版。


 想像してみると、確かに悪くない。いいや、むしろ私の将来に最も必要かもしれない。


「確かにまだまだ、外聞は悪いかもしれないけど。それでも、人の見る目はいい方向へと時代は変わってきているもの」


「そうね……ちょっとその方向性で、探してみるのもいいかもしれないわね」


「うんうん。椛もそうやって前向きでいるんなら、こっちでも探しておくから」


「相手を探しておくって……あんたは私の母親かしら?」


「いいえ。親友よ」


「そうだったわね」


 そうやって私たちはお互いの顔を見合わせて、笑いあった。


 やっぱり、大事な人が側にいるのは素晴らしい。いつまでもこうしていたくなるほどに、楽しくて幸せな時間だ。


 でも、親友はどこまでいっても親友だ。いつまでも都合よく、側にいてくれるわけではない。


 まどかにはまどかの人生がある。大事な異性(ひと)を見つけて、その先で幸せを育み、そして生み出し。新たな大事なもののために、その人生を費やす。


 楓もそれも同じ。いくら愛しい家族でも、いつまでも一緒にいられない。姉妹はどこまでいっても姉妹に過ぎない。どちらか一方を背負うのではなく、支えあえる相手を見つけたのなら、その手をいつか離さなければならない。


 だから私はこの手を離して、その背中を押したのだ。


 大事な人たちはいるけれど、いつまでもその幸せだけを求めているわけにはいかない。人と人との間で生まれる幸せ。それをいつまでも隣に置きたいのなら、私もまた、人生を支えあえる相手を見つけねばならない。


 そのためにもいい加減、まだ見ぬ恋と愛というものを見つけなければ。


「そういえば、あんたのほうは最近どうなの?」


 ふと、気になって聞いてみた。


 まどかと恋愛は、切っても切り離せないものだ。


 五度目の失恋を迎えてから、その手の話はバッタリなくなっていた。


 かといって、前のように片っ端からお試しで付き合うこともない。いたって健全な大学生活を送り、今は社会に出たくない一心で、大学院へと進んでいた。


 するとまどかの頬は、蕩けたように緩んだのだ。


「ふっふっふ。実は新たな恋をしてから足掛け二年、ついに本物の愛を掴んだのよ」


 よくぞ聞いてくれたと言うように胸を張ったのだ。


 いきなりのカミングアウトに、大きく目を見開いた。


「あんた、いつの間に……」


「別に隠していたわけじゃないけどね。椛には楓ちゃんのことだけ、考えていてもらいたかったのよ」


「そう。……でもその分、どっと不安が押し寄せてきたわ」


 恋をしてから足掛け二年。愛を掴んだということは、もう恋人にいたっているということだ。まどかの男運の悪さを考えると、忘れかけていた後頭部の痛みがぶり返してきた。


「わたしの黒歴史から見ると、今回は凄いわよ? なにせ付き合う前に何度もデートを重ねたけど、手を繋いだのは最近の話だもの」


「……嘘。あんた相手に、そんな我慢が利く男なんているの?」


「ま、相手は誰かと付き合うのは、わたしが初めてだから。奥手で純情で、あぁ……真っ赤な顔で『僕と付き合ってください』と言われたときは、胸がキュンキュンしたわ」


 胸元で両手を組んだまどかの眼差しは、今はここではないものを見ている。幸せな過去に浸っているのだ。


 デートを何回も重ねておいて、手を繋ぐようになったのは最近のこと。まどか相手にそこまで我慢が利く男がいるのかと。それはそれで驚いた。


 でも、それが本当ならようやく私も安心できそうだ。


 そこまで手順を踏んで、まどかを大切にできるのなら、きっとそれは本当の恋と愛であろう。


「そう。……そこまでしっかり時間をかけたなら、いいお付き合いなんでしょうね。手を繋ぐのにそんなにかかったんなら、次の道のりは大変そうね」


「まー、そこは……わたしの我慢が利かなかったから」


 まどかはどこか開き直ったように言った。


「実は昨日家に呼んでいて、さっき帰ったところよ」


「……泊まったの?」


「ええ。蕩けそうになるほどいい夜だったわ。相手は初めてだったから――」


「あーあーあーあ! そういう生々しい話は聞きたくない!」


「椛……いい歳して、そういう話に免疫がないのはちょっとあれよ」


 両耳を塞いで、私はわめきたてた。まどかはそんな私を見て、悪びれるどころか呆れたように息をついた。


 そんな折り、家のチャイムが鳴った。


 ビクリとしたのは、その来客が話の当事者だと思ったからだ。


 ニマニマと私を見るまどかの顔が、それを確信へ導いた。


 なにか忘れ物をしたのか、最初から紹介するつもりだったのか。


 別にそれはいいのだが……まどかとそういうことをした直後の相手と、顔を合わせたくない気持ちが強かった。


 それでもここは、まどかの親友として情けない姿を見せられない。


 居住まいを正し、出迎えに行ったまどかを黙って待った。


 和気あいあいとした音を耳にして、緊張の一瞬を迎える。


 開かれたその扉に向かって、余所行きの笑顔を向けたのだが、


「え……」


 意外な人物を目にして一瞬で崩れたのだ。


「明神さん?」


「久しぶりね、椛ちゃん」 


 かつてのバーテンダーの服ではない。シャツとスキニーパンツという、シンプルな装い。両手に紙袋を引きさげており、思い出したようにその一つをまどかに差し出した。


「これ、冷やしておいて頂戴。今日はそういう趣旨のようだから、色々と買ってきたわ」


「わー、ありがとうございます」


「こっちは生物だから、すぐに食べちゃいましょう」


 キッチンへと引っ込んでいくまどか。その傍らで明神さんは、テーブルに袋の中身を広げていく。


 お寿司だった。気品あるその使い捨て容器を見るに、この近隣で一番のお店のものだ。


「新たな門出だもの。こういうときはお寿司って決めているの」


「寿を司ったんですね」


「そういうことよ」


 戻ってきたまどかに、明神さんはそう答えた。


 腰を下ろした明神さんに、まどかがグラスを渡した。その中身を注いで、三人でいよいよテーブルを囲ったところで乾杯をしたのだ。


「乾杯!」


 まどかと明神さんは陽気にグラスを交わしている。そこに遅れながらも合わせたことで、気持ちがようやく追いついてきた。


 そもそも今回の件は、まどか伝えで、コンタクトを取ったのは私のほう。楓のやりたいことを伝えると快くいい返事をくれて、全てお膳立てしてくれたのだ。


 だから明神さんがここにいていい人ではないと、驚いていたのではない。


「戻って来ていたんですか?」


 お店を畳んで、あの男を引き連れ外国へ渡ったのだ。それが今ここにいることに驚いたのだ。


「元々ずっと向こうにいたわけじゃないの。こっちと向こうを行ったり来たり。先週あたりに戻って来たから、丁度いいってクルミちゃんに誘われたのよ」


「サプライズゲストよ」


 聞いていないと目を向けると、得意げにくつくつとまどかは笑った。


 まあ、悪いゲストではないのだからいいのだけど。


 お礼を言うのなら、やはり本人を前にしたほうが気持ちいい。それをしようとすると、


「これで、本当によかったの?」


 明神さんは上品な微笑みを向けてきた。浮かべられたそれは、どこかこちらを試すような色が滲んでいる。


 なにがよかったのか。その意味はすぐに受け取れた。


 悩むことも、逡巡する必要もなく、私はコクリと頷いた。


「はい。だって、物足りないって思ったんです」


「物足りない?」


「楓はこの上ない、綺麗な幸せを私に見せてくれました。たとえ一生隣にいなくても、お互いの想いが通じ合って、それで笑っていられるのなら、これ以上の幸せはないって」


「社会の示す、一番綺麗な想いの形ね。まさに欲から解脱した、悟りの境地だわ」


「ええ。そうやって欲すらも綺麗に昇華してしまったから、物足りないと感じたんです」


 胸元に手を置いた。あのときポッカリと開いた穴を、思い出すかのように。


「想い合っている相手とは、やっぱり一緒にいたいじゃないですか。笑っている顔を見たい。笑っている声を聞きたい。その手を取って幸せを感じたい。私はそんな当たり前の幸せを、楓から貰っているから、その綺麗すぎる想いに満足がいかなかったんです」


「思っていたのと違ったのね」


「楓に綺麗なものを望みながら、いざ見せてもらったら『あ、これじゃない』って、感想を抱いてしまった。我ながらろくでもないですね」


 嘆息と共に自嘲を吐き出し、やれやれとそんな自分に肩をすくめた。

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百合の間に挟まるな! ~脅迫NTRもの展開を阻止した結果、百合の間に挟まれた件~
推しの百合営業系Vチューバーの間に男が挟まったばかりに、脳破壊された主人公が子供時代にタイムリープした話。
本編とその前日譚まで完結しておりますので、よろしければこちらもご一読ください。



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― 新着の感想 ―
[一言] 外国行ってるって事は、タマは外国語覚えたって事なのか...驚愕w
[一言] 面白いです 最新話まで一気に読んでしまいました...
[一言] 密に連絡取ってるならタマの居場所は把握してるのか そういや姉貴がダメなら逃げてきて良いと言ってたね
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