表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/8

勇者が召喚された主だった事情と、勇者の決意

 時はまさに大戦争時代!!

 魔族がほかの全ての種族に宣戦布告しちゃって、さぁ大変!

 最大派閥だった人間は「亜人種殺し合い―! 人間一人勝ち確定じゃねぇー!! マジになればほかの種族絶滅とか楽勝だしよぉー!!(ゲス顔)」とか余裕こきまくり!

 だけどザンネン!!

 現実は非情!!

 魔族は人間が思ってた三百六十五倍ぐらい尋常じゃなくヤバくて、人口ゴリゴリ減らされまくりで連戦連敗ー!

 いつもみたく人間同士で主導権争い的な殺し合いしつつ舐めプしてる場合じゃねぇ!!

 ってなってゴリゴリのガチで決戦を挑んだけど、見事返り討ち!

 国は亡びまくるし、人口はガリガリ削られていつの間にやら半分以下に!

 このまま人類は滅びるしかないの?

 オワコンなの?

 某巨大メーカーが作ったけど後継機が出ない携帯ゲーム機みたいになるしかないの?

 だが! 人類は諦めなかった!

 なけなしの力を結集して、異世界から勇者を召喚したのだっ!

 いや、人任せかいっ!

 っていうかそんなもんでどうにかなるかバーカ!

 みたいな感じで至極まっとうなつっこみが入ったが、意外!

 何とかなっちゃいましたー!

 勇者はすごいパワーで魔族を圧倒!

 勢いそのまま魔族軍は後退せざるを得ない状況に!

 でも、勇者の攻撃は留まるところを知らない!

 魔族の領域にまで一気に切り込んでいき、首都を爆砕!

 魔族の王である魔王とそのご家族と、四天王的な奴をまとめて残虐ファイト!

 一気に弱体化した魔族は、晴れて勇者様のゴイスーな力の前に白旗を上げることになりましたとさ!

 っつても、人間を含めたほかの種族も、もうボロボロ!

 魔族を支配下に置いて管理とか、そういう次元じゃねぇ!!

 なんで、皆仲良く休戦協定を結ぶことになりましたとさ!


 めでたしめでたし!

 とっ! 行かないのが世の中だよね!

 人間のエライ人達の間で、「勇者ヤバいんじゃね?」っていう意見が出始めた!

 だって、超強い魔族とかめっちゃぶっ殺すパワーあるし、近くにいるの引くほど怖いじゃん!

 暴れられたりしたらヤバいし、人間マジ許さねぇってなったらシャレにならねぇ!

 どうしようかマジで!

 こわいなら、殺っちゃう?

 それだっ!!

 ならってんで勇者ぶっ殺し計画が持ち上がったんだけど、流石人類半分になっても生き残ってた連中だけあって割かし冷静だった!


「でもさ。俺らまとまってかかって潰せなかった魔族を撃退したヤツだし。殺そうとしても殺せなくない?」


「それー!」


 だよねっ!

 アンだけてこずってた魔族メッチャうちにしたヤツ殺せるなら、魔族に苦労しないよねっ!

 じゃぁどうすんの?

 あんなモンスターがご近所練り歩いてるとか股ヒュンってレベルじゃねぇ!

 心安らかにオフトゥンでおねんねすることすらE難度よ!

 もう、女とか与えておけばよくね?

 ハーレムとかそういうので骨抜きにしとけばきっと静かにしてるっしょっ!

 じゃあ、勇者に女押し付けようぜぇー!

 って!!

 ことになったんだけどさっ!!!




「うそだぁああああああああああああああああああああ!!!」


「なになになに、もう。落ち着けって」


「おちつけるかぁあああああ!!」


「なにがよ。もう。何が気に食わないの」


「すべてだよっ!! 何が女くれてやるだ、ボケナス! くそ貴族がっ! ハーレム要員として送られてくる女なんて碌なもんじゃねぇ!! これはあくまで送られてくる人員が碌なもんじゃねぇといってるわけであって、女性全体を指して碌なもんじゃねぇといってるわけじゃない!!」


「配慮よ。そのムダな配慮何なの、配慮になってるか正直微妙だし」


「それはいいの! そんなことよりももっと重要な話あるでしょ! 俺の貞操の話よっ!」


「宇宙一どうでもいいわ、勇者の貞操の話」


「重要でしょうよっ!? 超重要だよっ! 人間の国王を俺が殺そうかと思ってるのの三百倍ぐらい重要だよ!」


「何企んでるんだよ。そういうことばっか言ってるからお前信用無いんだぞ、勇者なのに」


「好きでなったんじゃねぇ! 俺はただのブラック企業を辞めたいとか潰れればいいとか口では言いつつ、実際はやめさせられたらほかのところでは勤められず低所得ビジネスの食い物にされつつもそれでもこの世に縋りついて生きていくしかないようなクソ低スペック三十代後半なんだっ!」


「よく意味が分かんねぇけどもっと自信もてよ。お前ならやれるって。魔族追い払ったんだし」


「そんなん神様とかから与えられたものであって俺本来の能力じゃねぇ! 確かに腕力とか魔法能力とかはすごいかもしれないけど頭脳は相変わらず底辺なんだよ俺はっ! 自分の程度の低さは自分がよく知ってるんだっ!」


「いや、だからそんなに自分をさげすまんでも」


「いいや! クズだねっ! クソだねっ! 死んでいった人たちに失礼なぐらいのカスだねっ! 俺はっ!」


「自分に対する評価よ」


「そんな俺がだよっ! ハーレムなんて持ったら、あなた、もーねっ! アレだよっ! ヤバいよっ!」


「どうヤバいのよ」


「ハーレム要員の女性にバカにされすぎてヤバいっ!」


「だから、自分に対する評価よ」


「はじめはいいかもしれないよ! 人間側のエライさんもそういうのわかってるだろうからさ! きっと全力で俺にこびてくれる人を用意してくれるよ!」


「まあ、そりゃねぇ。うん」


「でもあれなんだよ! どうせっ! 腹の底では俺のことバカにしてるに違いないんだよっ! ベッドの上ではいい感じでも、裏では、ちょっ、あの童貞下手くそすぎるんですけど。演技するのきっついわぁー。とかって感じのこと言うんだ!」


「いやいや。そりゃ、お前、っていうかお前童貞だったのか」


「素人童貞ですけど!?」


「いや、うん」


「悪いかっ! 素人童貞で悪いか!! プロの人を頼っちゃいけないっていうのかよっ!! そりゃ俺だって生き死にの中で戦ってたんだ、娯楽の無いこの世界でそういう楽しみが無きゃこわれちゃうわっ! 俺のガラスのハートが!」


「まぁまぁ。いや、悪いとは言ってないから」


「名前隠しておけばバレないし、一期一会でもお金払えば優しくしてくれるっ!! 向こうもプロだからっ!!」


「そりゃまぁ、そうね」


「でも四六時中一緒にいるわけでしょ、ハーレムの場合っ! あれだよっ! 気持ちよくご飯とか食べ終わって歩いてるときに、たまたまハーレム要員の会話とか聞いちゃうこともあるかもしれないわけですよっ!」


「あるかもね、そういうことも」


「その時にほらっ! 件のっ! あいつ下手くそとかっ! 短小とかっ! そういうの言われてたら、もーねっ! そりゃ貴方あれですよっ! もう、EDになりますよっ!」


「心の弱さよ」


「すっごいよ俺の打たれ弱さ! 心の! 精神防御マイナス割り込んでるからねっ! もし魔族にサキュバスとかがいて、俺のこと見て「いや、アレはいくら淫魔でもありませんわ(失笑)」とかって言われてたら心が死んで戦えなくなってたからね、俺!」


「嫌だなその淫魔」


「兎に角よっ!!! どうせハーレムなんて碌なもんじゃねぇわけですよっ! 童貞の心の弱さを舐めるなってのっ! そんなもん受け入れられるかって話ですわっ!!」


「じゃあ、どうするのよ。なんかもらっとかないと二心ありみたいにみられて、めっちゃ疑われ続けるぞお前」


「えー・・・正直飯食ってラノベ読んでりゃそれで幸せなんですけど・・・この世界一応小説あるから、それ読んでりゃ満足だし、俺・・・」


「急に気弱。どうした。どうせなら貴族にしろとか言ってみろよ。たぶんかなえてくれるぜ」


「それだ。辺境の領地貰って引きこもりってどうだろう。魔族との緩衝帯になる国境を守る名目で。辺境伯とかって結構高い地位なんでしょ? 国に口出ししない代わりに、こちらも出さない。地位も名誉ももらったことになるから、向こうも安心するでしょう」


「お、おう」


「勿論、俺の頭脳スペックでNAISEIなんてできないってわかってる訳だけど、ただ暮らしていくだけなら徴税権あれば問題ないだろうし。ハーレム要員はこっちで素人さがしますわぁー、とかいっときゃアレだろうし」


「なんだ。急にどうした」


「人類を救った英雄が貴族様になるってのもおかしな話じゃないし。これだっ! このアイディアだよ! 行けるぜおっさん!!」


「まあ、そうね。悪くはない気がするわ」


「引きこもって無害あっぴるしてれば連中もそのうち飽きるだろっ! ひゃっはー! これで俺はじゆーだぁー!! めでたしめでたしぃーい!!」


 もちろん!

 そんなわけが!!

 なかったのであるっ!!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ