第11話 魔王会談
翠たちがのんびりとサテライト国を散策していた時と同時刻…。
その部屋はどこかにある。秘密の部屋。けれど、どこにもない見つけられない秘密の部屋。その前にはドゥオルス国の兵士が横たわっている。
「やっぱりここはいいよなー。誰にも見つかんねぇしよ。ヴァイシャには感謝だな!」
陽気に部屋のイスで足を組みながらくつろぐそいつは、炎のような赤髪を揺らしながら言う。
「見つからないなんて保証はないですよイフリート。ここにシュードラの力を加えるなら別ですけどね。」
ヴァイシャと呼ばれた男性は少し笑いながら言う。
「ですが、ここは人間には見つけられないでしょう?私たちぐらいの強さがあるなら別ですがね。」
本を持っている豊満な女性はイスに腰掛け本を読みながら同じく少し笑いながら言う。
「まぁ。俺ら魔王と同じ強さなんてそうそういねぇしな。今度は封印されねぇようにしねぇとな。」
部屋には丸い円卓の机を囲むようにイスが10個用意されている。埋まるイスは3つ。そして、この部屋にいるのも3人。その昔、名を馳せ、人間に恐れられていた【十の災害】本人達である。『火を司る魔王』イフリート『天空を司る魔王』コキュートス『物質を司る魔王』ヴァイシャ、3人の魔王がこの部屋に集まっていた。
「そういえば、最近ドゥオルス国がサテライト国に戦争吹っ掛けたじゃねぇか。あれってヴァイシャがやっただろ?」
「そうですよ。国を少しずつでもいいから崩壊させておかないとまた封印されてしまいそうですからね。」
「なるほどなぁ。頭いいなお前。ということはヴァイシャはドゥオルスの王様になったっていうか憑依したってことか?」
「そうですよ。とりあえず今は急用ってことで国を抜け出していますが長引くと疑われて嫌なので早く用件を済ませましょう。さっきも言った通り、国を仲違いさせる疑心暗鬼のような状態にしておけば我々に割くような人員や時間がなくなるはずです。しかも、我々が人間に戦争を仕掛けるまでは人間同士で争っていたと聞きました。我々を封印してから今に至るまで戦争は一回も無く、平和が続いていたそうです。ということで私がサテライト国に戦争を仕掛け互いの信用を悪化させ他の国への牽制をします。今回は助攻に過ぎませんが次は本隊を入れて本格的にサテライト国を滅ぼしていきたいと思っていますよ。」
ここまでの計画を淡々と話す。
「なるほどな。俺もどこかの国の王様になりゃ良かったなぁ。それこそサテライト国の王様になってたら面白かったのによ。」
イフリートが大声で笑う。
「でも、ヴァイシャ。それって失敗したら逆に信用を失って孤立して、滅ぶのはドゥオルスの方じゃないかしら?」
心配そうに、しかし何処か面白そうに言う。
「大丈夫。心配には及ばない。幾分か平和でボケている相手と魔王の力を一部授かった味方。勝機は我にありですよ。」
「魔王の力?!生身の…しかも魔物じゃなくてただの人間に授けてしまったら自我を失って最悪死んでしまうわよ?!」
「そこは大丈夫です。少ししか与えてませんし、彼らは気づくはずがないですからね。DランクやEランクのような雑魚人間の寄せ集めですが、私の力を授ければ少しといえど一気に2ランク程強い相手でも互角…もしくはそれ以上になりますよ。」
「それは頼もしいな。ところで、他の魔王の位置はわかるのか?」
「今はまだわかってませんが王様には憑いてませんし多分目立たない冒険者に憑いているのではないかと思いますね。まぁ、もしくは異世界者。」
「異世界?そんなものがあるのか?知らなかった。そいつらは強いのか?」
「異世界はにわかには信じがたい話ですが私の国でもすでに数名見つけていますし、異世界者には不思議な魔法が使えるようで、この世界には無い、もしくはほとんど消えてしまった古い魔法が使えるようですよ。例えば、今はいませんがクロノスの『時魔法』シュードラの『時空魔法』などなど。私の物質魔法も古い魔法ですね。」
「異世界…。そんな世界があったなんて知らなかったわ。じゃあ、作戦の意図もわかったことだしそろそろ解散しないかしら?ヴァイシャも時間がヤバいわよ?」
「そうだな。それじゃあ、今回の魔王会談はここでおしまいってことで、また何かあったら呼んでくれ。それじゃあ俺は一足先におさらばするぜ。」
イフリートは椅子から立ち上がって、どこかに消えた。
「じゃあ私もお暇させていただくわね。」
「【天空魔法 天使の翼】」
コキュートスも消えた。
「さてと、僕も帰りますか。」
外に出て、気を失っている兵士を起こして帰ることにした。
「ここは…?はっ!王様ご無事でしたか?!」
起きた兵士は次々に言葉を発した。
「大丈夫だ。お前たちもよく戦ってくれたがまだまだだな。帰ってから訓練が必要か?」
冗談のつもりで笑って言った。
「それだけは嫌です。教官が厳しいんですよ。」
教官を思い出したのかため息をつきながら帰路につく。
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一方サテライト国では…。
「敵軍がまもなく我らの城に到着する模様です。我々もいま全力で向かっていますが到着するのはドゥオルスが到着してから約1時間後になります。」
「わかった。報告ありがとう。さてと、ミドリは生きて帰ってこれるだろうか…。」
サテライト国王は空を見上げて独り言、誰にもバレないように呟いた。
遅くなって申し訳ない!
期末テストがあったんだよねー。
結果?知らぬが仏。