第09話 転生者と遭遇
「ここがサテライト国…。大きい…」
僕たちは洞窟から逃げ出した後走り続けてサテライト国の王城にたどり着いた。
「待て!お前らは何者だ!」
城の城壁の上から声がした。見上げてみると隊長の様な人がいた。
「レジスタ!私よ!城門を開けて!」
アリスが叫ぶ。そんな声で届くのか?と思ったけど届いたようだ。
「え?!姫様?!姫様ですか?皆の者!城門を開けよ!姫様がお帰りになられたぞ!」
城門の向こう側から地響きのような大きな声が響きこちらにも聞こえてきた。
「めっちゃ喜ばれてるじゃん。アリス。」
「一応これでも1国の王女ですから…。多少は」
「多少の域を越してるよ…。大分誘拐されてたの?」
「2日ぐらいです…。」
「2日かい!でも、心配だったのかなぁ。」
会話をしている間に城門がギギギ…と開く。
「心配しておりました、王女様。王様がお待ちしております。おや?王女様をおぶわれているそちらの男性はどちら様でしょうか?」
さっきのレジスタと呼ばれた男性が僕を見て睨んでくる。
「え?あっ!ごめんアリス…。ずっとおんぶしてた。」
僕はアリスをおろした。
「いえ…。背中が頼もしかったですよ。有り難うございました。」
アリスが頬を染めて笑顔で返答した。
「レジスタ。こちらは私を救ってくださいました勇者様ですよ。どうか城にいれて差し上げて?」
アリスが上目遣いで頼むとレジスタは
「わかりました。では勇者様もついてきてくだされ。王様がお待ちです。」
と、笑顔で迎えてくれた。
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「アリス!無事だったか?!怪我はないか?」
「お父様大丈夫ですわ。こちらのミドリさんが助けてくださったの。」
王様は威厳のある態度を作ってこちらに向きなおした。
「娘の救出、そして洞窟からの脱出、大変感謝する。後で私の部屋に来てくれないか?少し話したいことがあるのでな。それまでこの城と城下町を探索でもしていくがよい。まだ知らないことばかりだろう。」
「ならば、私が案内してきますわ!ミドリさん行きましょう?」
と、アリスが笑顔で言うと王様はちょっと悲しそうな顔をして「アリス…」と小さな声で言っていたが最終的に2人で行くことにした。
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「道が広いなぁ。さながらメインストリートか」
さっき通った馬車のときは外の風景が見えなかったから暇でしょうがなかったんだよね。改めて見てみると人も沢山、建物も沢山…。さすがサテライト国の王城だなぁ。
「そういえばアリス、この城の名前は何て言うんだ?王様がいるから首都かな?あと、他にどんな建物があるの?」
「シュト…?シュトという言葉は存じませんが…。このお城の名前はルミエール城といいます。サテライト国の第一城ですわ。そして、あちらにあるのが討伐ギルド、武器屋、防具屋、宿屋などなど。あとは、展望台、練習場、闘技場ぐらいですかね?闘技場ではランキングがつけられるのですよ。」
アリスが早口で捲し立てたのでちょっとビックリしながら聞いていた。そうか…。首都っていう考えがないのか…。まぁいいか。
「そういえば、討伐ギルドのトップは異世界転生者と聞いたことがあります。行ってみますか?」
「異世界転生者?!行く行く!」
興味があるぞ。自分は転移者だけど同郷の仲間だ!初めて話が通じる人に出会えるぞ…!
「それでは移動しましょう。」
馬車が目的地に向かう。その間にも観光をしていた。凄くデカイ剣を持ってる人いるなぁ。よく使えるなぁ、あんなに大きい武器。
「着きましたよ。ミドリさん。ここが討伐ギルドです。」
馬車を走らせること数分…。討伐ギルドにやってきた。何人もの冒険者が出入りしている。
「さあ!行きましょうミドリさん!」
腕を引っ張って連れていく。
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ウィーン。え?!自動ドア?!転生者の知恵かな?
『転生者でトップか…。相当な実力者じゃないと出来ないよな…。お前とは全然違うな。』
黙らんかい。まだこの世界で不馴れなだけじゃい!
僕とアリス(変装中)は受付さんと話をしていた。
「あのー。すいません。」
人が少なくなったときを見計らって話しかけた。
「はい。どうかなさいましたか?」
「はい。レン・キヨタキに会いたいんですけど」
アリスが聞いた。
「え?うちのボスにですか?予約はありますでしょうか?」
「えーと…。予約はとってないんですけど…。」
「でしたら会えません。予約はとっていただかないと…」
ですよね~と思いながら話していると
「おいおい!そこのにーちゃんとねーちゃん!ボスに会いてぇつってんのか?あいつは中々部屋から出てこねぇしな。予約したからそろそろ呼ばれてもいい気がするけどな…。どうだ?俺も待ちくたびれたし俺と一戦交えるかい?」
「いいえ…やめときます。」
「なんだよ…。あいつに会うとか言ってるやつだから血の気の多いやつかと思えば弱腰かい?」
他にいるやつらも一緒に笑いだした。
「よ 弱腰なんかじゃありません!ミドリさんは強いです!あなたたちなんか相手になりません!」
え?アリス?!なに言ってんの?なに喧嘩ふっかけちゃってくれますの?!
「ほう?言ってくれるじゃねぇか、ねーちゃん。そのミドリさんがどんだけ強いか…。ちょっくら手合わせ願うなぁ。外出ようぜ?ほら彼女の目の前だぜ?逃げるなよ?にーちゃん。」
男が自分と同じぐらい大きい武器を持って立った。え?身長…2メートルぐらいあるんじゃねぇの?どうしたらそんな身長伸びるんでしょうかねぇ。
「お!久しぶりに【戦士王】ロイル・シュバルツの戦いが見れるねぇ!」
周りが囃し立てる。
え?僕は…やらないといけないの?マジ?
『頑張れよミドリ。俺は知らねぇ。』
はぁ?!ふざけんな!助けろよ!
『だって、めんどくさいし。お前は強いからなんとかなるだろ。』
「はぁ。ロイルだっけ?いいよ…やってやるよ。やるからには本気で行くぞ?」
「あぁ。こい!俺も全力で行くぞ!」
そういうと剣を振り回して、唱える。
「【剣盾魔法 破壊の一撃】」
横から思いっきり勢いの乗った剣が襲ってきて、何とか剣で受け止めたが本当に剣が壊れるかと思った。
「死んだらどうすんだよ!」
めっちゃくちゃ疑問だったことをちょうどよく聞けた…。死ぬ寸前になってようやく聞けた。
「ぐわははは!大丈夫だ!こっちには回復魔法の使い手もいるし、教会に行って金でも払えば生き返らせれる。」
いや!ドラ○エかよ!というツッコミをぐっ、と飲み込んで、
「そういうこと、最初に言えよ!心配だっただろうが!なら、死なないんだ…ふーん。」
「そら!次行くぞ!【剣盾魔法 破壊の二撃】」
「くそ!【時空魔法 時空移動】」
逃げながら近づいてロイルの首を一突き……できなかった。
ギリギリで剣で弾かれた。なんでバレた?!
「時空魔法ねぇ。初めて見たぜそんな魔法…。動体視力だったら俺は負けねぇからな。残念だったな【剣盾魔法 破壊の惨劇】」
「相殺できるかわかんねぇけどやるだけやってやる!【時空魔法 異空間の抜け道】」
咄嗟に出した黒色の穴に全ての技は吸い込まれていった。そして、そこには何もなかったかのように沈黙が訪れた。
「くはははは!魔法が吸い込まれる?デタラメすぎるわ!ミドリと言ったか?お前すごいやつだな。確かに強いな。」
「認めてもらって良かったよ。」
2人は固く握手した。いやー死ななくて良かった良かった。
「なんだ?!今の騒ぎは!僕の建物の前で変なことしないでって言ったじゃないか!」
その時、建物の中から好青年が出てきて叫んだ。
「この状況はどういうこと?ロイル!」
「いや…。このミドリが戦いたいって言ったからよー。」
「いや!濡れ衣だ!事実無根だ!」
この言葉に反応したのは1人。
「ん?ミドリと言ったかな?どこでそんな四字熟語を知った?」
「元の世界って言った方が分かりやすいかな…?」
ちょっとカッコつけて言ってみた。
「お前まさか…転生者?そして、そちらにいるお嬢さんは…。まさか?!」
レン・キヨタキはアリスの正体に気づいたのか膝まずいた。そして、立って一言。
「ロイル。悪いな気が変わった。今日の予約はキャンセルで、また明日でもいい?」
「なんでだよ!なんでそっちを優先させるんだよ!」
「ロイル…。お前気づかなかったのか?こちらのお嬢様は我が国の王女アリス様だぞ?」
レンは不敵に笑いながらロイルを見た。
「は?!アリス?あのアリス様?!大変失礼しました。貴女様とミドリに対して働いた我が無礼をどうかお許し願います。」
さっきの状態からは想像できないぐらいの丁寧な言葉遣いと態度…。やっぱり人は見た目で判断できないね。
「別にいいですよ、ロイル。予約を横取りしてしまってごめんなさいね。」
ロイルは「とんでもない!」と言っていた。本当にさっきの状態からは想像できない…。
「では、ミドリさん、アリス様、中の私の部屋へどうぞ。」
『ようやく入れるなぁ。ここまで長かった。』
会いに来ただけなのにここまで疲れるとは思わなかったよ。後はレンと仲良くなれればいいな~。