宿屋の娘は勇者様に恋をした(棒読み)
どうもこんにちは。宿屋の娘です。
最近魔王が復活したという話で持ち切りだった我が国ですが、この度勇者様が見つかったらしく、我が国はお祝いモードです。
いやいや、まだ魔王倒してないからね?という私の思いはそっと心の奥底に閉まっときました。だって、魔王には勇者様でなければ対抗できないのですから。勇者様は神様が選ばれた人類の希望のような存在なのです。
そして蛇足ですが、勇者様はどうも裕福な商家の三男で、イケメンというお話です。そして魔王を倒したら、爵位を与えられることを約束されているという、なんとも将来有望な優良物件らしいのです。まぁ、すてきー(棒)
え?そんなに興味がなさそう?当たり前でしょう。そんな雲の上の人物なんて想像もできないし、私はあったこともない人に恋できるほど夢を見ているわけじゃありません。可愛い見た目の割にリアリストだとは友人達によく言われます。
勇者様はどうも性格も良く出来た人物で、行く先々で老略男女問わず魅了して行っているらしいです。
そんな勇者様がーー私の街に来ました。そして我が宿屋に泊まることになりました。
私はと言うと、勇者様の優しさに触れて恋をしてしまったーーと、言うことも無く。勇者様を見ても、こいつ無駄にイケメンだなーとしか思いませんでした。
僕よりも年下なのに宿屋の手伝いしてるなんて家族想いだね、と言われた時はとても胡散臭かったですし、童顔なだけで歳はお前と一緒だよと罵ってしまいそうになりましたが、そこは宿屋の娘。営業スマイルでありがとうございますと言っておきました。
友人達が勇者様のことを褒めて、惚れたなんだの言っておりましたが、女性に言い寄られている勇者様は、物腰は柔らかいのですが目が笑ってなかったですよ。
まあ、友人達皆が勇者様を褒めたたえてたので、私は反論はしませんでした。私は空気が読めない痛い子ではないのです。それに、皆が勇者様に夢中ななか、私だけが別にどうでもいいオーラを出していてはいけないと思ったので、適当にモブっぽく「きゃー勇者さま素敵ー」とか言っておきました。棒読みになってしまったのは許してください。
そんな感じで勇者様との日々ーーと言っても朝、営業スマイルでおはようございます。と挨拶をして、友達といる時は一番後ろで若干棒読みになりながら黄色い歓声(?)を送るという村人A的な立ち位置で関わっているーーを過ごしていたのですが、ついに魔王との最終決戦が始まるらしいです。(あっ、ちなみに私の街は魔王城に1番近いのです。)
魔王と勇者様の対決の結果はもちろん勇者様の勝利です。魔王といっても、勇者でなければ倒せない普通よりも少し強い魔物という感じなので、結構あっさりだったそうです。まあ、勇者様がいなければ大きな被害に合うので、魔王は恐れられているのです。勇者様の前では塵に同じですが。
そんな勇者様は何を血迷ったのかーー爵位をうけたまわるなり、私に求婚してきました。
これについてはさすがの私でも開いた口が塞がらなくなりましたね。
僕に対してまるで興味がなかったのは君だけだった、とイケメンでなければ言えないようなセリフを言われましたよ。まあ、実際その通りで、私は勇者様に対してなんの興味もなかったし、こんな人間もなかなかいないでしょうが。
しかしそれで結婚するには些か人生を無駄にしていると思うのです。なので、お友達からということでお願いしました。
そんな私がこれから勇者様のことをを好きになるのか(というか好きになったら本末転倒ではないのでしょうか)、一生友達のままなのかは未来のことなので誰にも予想はできません。ただ今は、私が年下だということだけは訂正しておきたいです。