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方向音痴って自覚したときの絶望感。

 村の入り口に立ち、俺はこれからの日々に思いを寄せる。これから…俺は新しい世界に一歩踏み出すのだ!!


「今まで苦しい日々だった…猪と戦い、鬼と戦い、蛇と戦い、熊と戦い、怪物と戦い………俺戦ってしかねぇッ!?」


「一人で何か呟いてるぞ。」


「あちゃー、楽しみすぎて頭がおかしくなっちゃったかー。」


「ワシの育て方が甘かったか……」


「大体みんなのせいだからね。」


 ふん、と顔を背ける。これからしばらく会えないんだからもっと優しく見送ってほしいものだ。


「あんたらは本当に…スルヴァちゃん。元気にしてるのよ。」


「うん!ばあちゃんも元気でね!」


「ワシのスルヴァが取られてしまう…いっそのこと学園を潰しにいこうかのう…」


「洒落になってないんだよねー。」


 そんなことをしたら一生顔を合わせないよおじいちゃん。


「そんじゃまあ、行ってくるよ!!」


 皆に背を向けて走り出す。度々振り返っては見送ってくれているか、意味もなく確認をしてしまう。


「元気でな。」


「たまには顔を見せるんじゃよ~。」


「向こうに行っても勉強するんだよー。」


「ばあちゃんは何時でもスルヴァちゃんの味方やからのー!」


 うぅ、皆言ってくれることは様々だけど、タイルさん、あの口調なのに意外と勤勉で時々びっくりするんだよね…


「行ってきまーす!!」







 ふぅ、この300kmの距離を走らなくて良いのは、ちょっと楽になるよね。会えなくなったのは寂しいけど。

 えっと確か学園はこっちの方に……あ、あんなところにリンゴが売ってる!道端で売ってるものなのか!?それにあれは魚のサバだ!あっちには見たこともない食べ物が!あれはなんだ!?こっちは!?あそこには…………







「ここどこ?」


 気が付くと周りはなんだか薄暗い路地裏に変わっていた。さっきまでざわざわと賑わっていた街中だったというのに…


「まあ、前と同じようにそこら辺歩いてたらなんとかなるか。」


 路地裏はゴロツキの集まりという。肩がぶつからないようにしなければっ!お金とかも落としたりしたら拾ってくれるどころか個人情報を盗まれてしまうらしいし……!!

(※田舎出身のよくある勘違い)


「ここは~どこかな~。」


「…!…いよ!…てっ!」


「いよって?」


 何処かで聞いたような声だ。この声は…!

聞こえた声の方に走って行く、多分こっちの方だ!


「ちょっと!引っ張らないでっ!…て、あ!スルヴァ!」


「クレア…取り込み中か?」


 そこには前と同じように腕を引っ張られているクレアがいた。しかも多分、引っ張ってる男も同じやつっぽい。


「んなわけないでしょ!!」


「おぉ、なんだ。合意の上のプレイかと。」


「このやり取りもうしたわよっ!!」


 この声の張り、うるささ、よしあの時のクレアだ!久し振りだなぁ!はは、涙が出てきそうになっちゃうよな。


「お、お前は!?この前の化けも…!」


「はい、じゃあ手、離してお兄さん。」


 スッと動いて手を掴む。


「お、おい…痛ぇって!てめぇ、慰謝料ふんだくるぞ!」


「い、慰謝料!?…クレア!慰謝料ってなんだっ!?」


「そこからなのね…気にしないで良いわ、正当防衛よ。」


 そうなのか、それなら良かった!聞いたこともないよ慰謝料って。あ、でもゴロツキが肩をぶつけたときにそんなことを言うって話だったな…意外とインテリなのか!?


「だ、そうで。正当防衛らしいよ。」


「ひぃ…!なぁ許してくれよ!あれだよ!へへ、悪気はなかったんだよ!次から気を付けるから離してくれよ!」


「そんな嘘に騙されるかぁぁぁ!!!」


「前に騙されてたじゃない…」


 俺はとりあえず顔面を叩いておいた。平手打ちってあれ、傷付かない割にはかなりの痛みなんだよね。ちなみに泣いて逃げていっていた。


「ふぅ、また助けられたわね、ありがとう。」


「いや、良いよ。気にしないで。」


「それよりこんなところで何してるのよ?学園って反対じゃない?」


「そんな馬鹿な!?」


 こ、これが都会の洗礼か…誘惑するものが多すぎる…!






「ここから俺の学園生活が始まるんだ。」


 俺は学校に入り、教室の前で呟く。思えばこのためにたくさんの苦労をしてきたもんだ…まさか受験するために皆からの課題をしなきゃならないなんて…そうあれは丁度一年前の~~


「入るわよ、何突っ立ってんのよ。」


「あ、ごめん。」


 回想には行かせてくれないのな。いや良いんだけど…さて、見たことある人がちらほらいるが…


「あ!スルヴァ君じゃん!おひさー!」


「おぉ!ニア!…おひさーってなんだ?」


 遠くの席に座っていたニアが立ち上がってこっちまで近寄ってくる。良かったぁ、ニアも受かってたんだったな。


「久し振りってことだよー!それにクレア…ちゃんも久しぶりだね?」


「ふん、覚えてないわ。」


 あーあ、また無愛想にしよってからに…


「すまん、ニア。クレア、なんでそんなつんけんしてんだよ?」


「知らない、行くわよ。」


「あーはいはい。じゃあな、ニア。」


「あ、うん。またね。」


 クレアに腕を引かれて適当に机に座る。多分、人見知りなのかな?まあそのうち仲良くなれるだろう。




ガチャン!

「おい、みんないるか?よし!いるな!入学式に向かうぞ!」


 あ、あの暑苦しい先生じゃないか…もう突っ込まないからな。絶対だからな!


「あの先生、もしかして私たちの担任じゃないでしょうね……」


「どうだろうね、まあでも俺は嫌いじゃないかな。確認って言葉を知らないみたいだけど。」


 もしあの先生が担任ならば、俺は何回突っ込みを入れてしまうんだろうか。いっそのことスルーしようかな。





「えー新入生の皆さん、御入学おめでとうございます。我々、先生、生徒も皆さま方を歓迎し……」


 すこし老年の先生が長ったらしい言葉を並べる。あの先生は見たことないな。それにしても、人が多いなあ。ここは体育館みたいだけど、前の模擬試合をしたところより数倍はデカいな。どれくらいの費用をかけてるんだろうか…


「では、生徒会長より一言。カナルタさん、上がってきてください。」


「はい!」


 ハキハキとした声で壇上に上がってくる影が一つ。生徒会長さんか、ここの生徒会長って確か強い人がなるって言ってたよな。てことはこの学園の最強クラスの人って訳か。すこしワクワクしてくるぞ!


「どうもー、僕がこの学園の生徒会長、ノア=カナルタだよ。こういう堅苦しい場所はあんまり好きじゃないんだけど…えぇ、とりあえず言わないといけないので、御入学おめでとうございます。私たちは……」


 崩れた口調で、一人称をタイルさんみたいにして話す生徒会長さん。しかしタイルさんと違って、女の人みたいだ。

それにしても髪の色に見覚えがあるなぁ、銀色の髪、どこかで………


「えぇ、最後に。急いでるのは分かるけど、廊下を走ったりするのは止めようねー?」


 あれ?今俺の方を見たか?あの顔も見た覚えが……廊下を走る、うーん。もう少しで思い出せそうなんだが…


「では、これで入学式を終わります。新入生の皆さんは教室に戻ってください。」


 帰るのか、意外と速く終わったな。あれ?さっき思い出せそうだったのに…ま、忘れてるってことはそんな大事なことじゃないんだろう。





「じゃあ自己紹介とかしていくか。いいな?よし、じゃあスルヴァ君から!!」


「なんで俺から!?」


 急に!?教室に帰ってきたら直ぐに座らされて、何を始めると思ったら……いやでも確かに自己紹介は必要だよな!よ、よし、変なところがないようにしないとな…


「えーと俺……僕は」


「前に出て話せ!そこじゃ皆から顔が見えんだろ。」


 えぇ、それ最初に言ってほしかったなぁ……いや自分で判断しろってことか。しかし相変わらず言葉が強いなぁ。


 教壇の前に立ってみんなと面を合わせる。おぉ、なんというか、緊張するな。これで授業をする先生ってやっぱり凄いと思う。


「えっと…とりあえず名前を。スルヴァ=トルミニです。田舎から出てきたんで知らないことや分からないことだらけだけど、良かったら色んなことを教えてください。これからしばらくよろしくお願いします!」


「「「「「パチパチパチパチ」」」」」


 は、恥ずかしい……なんとか切り抜けたみたいだ。ささっと帰ろう。

 と、動こうとすると先生に肩を捕まれる


「おい、どこにいく。質問コーナーがまだだろう。誰か質問あるかー?」


だから知らないってそんなコーナーの存在は…まあでも俺なんかに質問なんてないだろう。


「「「はいはいはーい」」」


 意外と多い!?速く席に戻りたいんだけどな…


「よし、じゃあ……お前!名前は…レイチェルか。いけ!」


「うむ、久し振りじゃの、スルヴァ。当然じゃろうけど、受かっていたんじゃな。」


「おぉ!レイチェル!久し振りだな!レイチェルも受かってて良かったよ!」


 レイチェル!レイチェル=フォントだ!相変わらず綺麗な金髪をしてる。模擬試合のときには良い戦いをさせてもらった。あの召喚魔法はびっくりしたなぁ、今度教えてほしい。


「質問コーナーだぞ。質問を言え。」


「なぁ、レイチェルってなんでじいちゃんみたいな喋り方をしてるんだ?」


「お主が質問するのか!?ま、まあええが…ただの癖じゃよ。気にするでない。」


 そうなのか、じいちゃんと同じ口調で一瞬びっくりするよ。


「それより我の質問じゃ、お主、さっき生徒会長とやらに目をつけられておったが…知り合いか?」


「あ、やっぱり目が合ってたよな?俺もそうだと思ってたんだ。でも別に友達ってわけではないからなぁ…見たこともない…かな?」


 結局思い出せてないんだよな、もしかしたら会ってたかも知れないけど、今は覚えてないからそう言うことにしておこう。


「そうか、なら良いんじゃ。すまなかった。」


「いや、良いよ。」


「よし!時間が押してるから質問コーナー終わり!次!」


 じゃあ質問コーナーなんか設けなければいいのに…いそいそと席に戻る。少し疲れたよ。





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