自己紹介長くね?
自己紹介は一応聞いていたけど、気になっている子の自己紹介ぐらいしか耳に入っていなかった。クレアとか、その辺。
「クレア=アルフォートよ。よろしく…しなくても良いわ。」
おう、分かってたけどやっぱりツンツンしてんなー。逆に辛くないのか?
「なんだよ、やけに無愛想じゃねえか。んじゃ、質問コーナーに移るぞ。誰か、質問はあるか?」
ざわざわと、やけに周りがうるさい。その割には何故か誰も手を上げない。仕方ない、ここは空気を読んで俺が…
「あの、良いですか?」
「お!お前は…ニアか、良いぞ。」
優しいな、ニア。この空気の中で率先して手を上げるなんて。でも俺の上げかけた、この右腕はどこにぶつければ良いんだ?
「あの、アルフォートって家名…もしかしてあの有名なアルフォート…?」
「…………そうよ。」
アルフォート?聞いたことがないな…いや俺って村の外のこと知らないから当たり前なんだけどさ。
家名で有名ということは、何処かのお嬢様なのか?ははは、まさかな。お嬢様があんな口調であったらびっくりだよ。いやでも俺別に女の人に詳しいわけでもないからそうでもないのか?お嬢様ってのはあんな言葉遣いがノーマルなのか?
「「「ザワザワザワ…」」」
「先生、戻って良いですよね。」
「あ、ああ。」
クレアが俺の隣の席に帰ってくる。あまり良い顔色じゃない、可愛い顔が台無しじゃないか。
「おかえり、はは、思った通りの自己紹介だったな。」
「うるさいわね。それよりあんたは知ってたの?」
「何が?」
「私がアルフォート家の娘だって。」
「いいや、知らなかったよ。ていうかアルフォート家すら知らない。有名でも俺の村までは届いてなかったようだな!」
「そうなの……?じゃあ私を助けてくれたのは?」
「え?女の子が襲われてたら助けるのが当たり前なんじゃないのか?」
いつもはあまり語らないシャドさんが修行中に言っていた、女を助けるのが男の仕事だって。で、女の仕事は男をおだててその気にさせることらしい。よく意味が分からなかったけど、その時シャドさんは悔しそうな顔をしていた。
「本当に私の家名…アルフォート家を知らないの?」
「なんで疑うんだよ…この澄んだ瞳に賭けて嘘をついていない!!」
「知らないわよあんたの瞳なんか…でも、ふふ、ちょっと見直したわ。」
はぁ?よく分からないクレアだ。ていうか見直したってなんだよ、さっきまでどういう目で俺のことを見ていたんだ?
「次、レイチェル=フォント。」
「うむ。」
あ、次はレイチェルの番みたいだ。レイチェルもレイチェルで相変わらず小さいな…ここからだと少し遠くて更に小さく見える。
「我がレイチェル=フォントじゃ。みんなよろしく頼むの。ついでに言っておくと、我はヴァンパイアじゃ。純血のな。」
ヴァンパイア?確かデアーばあちゃんが言ってたな…血を吸うのが特徴で、その口には鋭くとがった八重歯が生えていて、その強さも尋常じゃないっていう。マジか、レイチェルはヴァンパイアだったのか。かっこいいじゃないか。
「あぁ、でも普段はその能力も封じておる。気にせず接してくれ。以上じゃ。」
「ほう、レイチェルちゃんはヴァンパイアだったのか。それも純血の。初めて見たぞ、意外と小さいんだな。」
「先生、二つ言わせるのじゃ。ちゃん付けはやめろ、あと小さいって言うな。」
ガチじゃん…本気でキレてるじゃん……見てよあのオーラ、黒いよ?真っ黒だよ?ヴァンパイア感を隠しきれてないよ?
「悪かったよ、質問コーナーだ。誰か、質問はあるか?」
質問、俺がしてもいいかな?他のみんなはまたざわざわと騒がしいし。ヴァンパイアが珍しいとかか。
「はい、良いですか?」
「お、スルヴァ君か。いいぞ。」
手を上げて、席を立つ。ふふふ、質問をしてやるぞ!俺が緊張していた分をレイチェルも感じるといい!
「好きな食べ物はなんですか?」
決まった…俺の絶対したい質問ランキング一位…ふはは、この質問は相手はすぐに考えつくし、長々と続かない。それに相手の趣味嗜好を読み取るチャンスにもなり得る最高の質問のはずだ!
「ぶはは!なぜわざわざその質問なのじゃ!?取って付けたようなありきたりな質問じゃのう!」
「えぇ!?そんな笑わなくてもっ!?」
ぶははって!本気で笑ってるよ!ありきたりなの!?まさか俺が一晩中かけて考えたタイミングがあればしたい質問の一位がそんなありきたりだなんて……二番煎じなんてもんじゃねぇ…恥ずかしい。穴があったら入り込みたい……
「まあそうじゃのう…言うなれば、お主の血かのう?……カカっ冗談じゃ。」
周りの子達、正確には女子を中心にキャーとか騒いでいる。全く意図が掴めない。ていうかうるさ!
「スルヴァ…あんたあんな幼い女の子に手を出したの?最低…」
「は?どういう意味だよ、それにレイチェルは幼くないだろ、同い年の可愛い女の子じゃねえか。」
更にいっそう、女子たちが叫び声をあげる。なになに?皆は動物にでもなったのか?雄叫びの練習なのか?
「ま、まさかカウンターが返ってくるとは思わんかったのじゃ…やるのう、スルヴァ。」
「さっきから全然話を掴めてないんだが…一体何を言ってるんだ?」
「知らないの?スルヴァ。ヴァンパイアが血を吸うのって、生涯のパートナーを決めたときだけなのよ?」
生涯のパートナー?それはどういう…あ、結婚相手ってことか、なるほどな。
…………え!?
「それを俺に言ったのかっ!?」
「あんたって結構世間知らずよね…有名な話よ。」
だって今までずっと村にいたんだから仕方ないだろう!まままま待ってくれ!レイチェルのってこ、告白!?
「おや?どうしたスルヴァよ、なぜそんなに顔を赤くしてるのじゃ?ん?言ってみ?」
「し、知らなかったんだよ……血のこと……」
「カカっ冗談だと言っておるじゃろう、真に受けるでないわ。」
「真に受けるって…酷いぞレイチェル!俺の純情を弄んで!」
ぐわははと最早清々しいまでの笑い声を上げながら、レイチェルは席に戻っていく。くそう、なんだよ冗談か…びっくりしたぁ、心臓がつぶれるかと思ったぞ。
「イチャイチャしてるのを見せるのはやめてもらいたいもんだ…はい次、ニア。」
テンションめっちゃ落としてるけどどうしたの先生。
「ニア=ユルヒでーす!みんな気軽に声をかけてねー!」
めっちゃ元気一杯だな、ニア。うんうん、やっぱり元気なのが一番だよな。どこかのツンツンしたお嬢様に比べたら良い性格してるよほんと。見習ってほしいもんだ。
「悪意を感じるわ。」
「そうか、気のせいだ。」
怖いよークレアさんナチュラルに心を読んでくるから下手に考え事もできねぇ。
「……よし!最後はディーン=シュロム君、速く終わらせてくれ。」
おぉ!?ディーン君、受かってたのか!良かった!あのあと結局会えず仕舞いだったから心配だったんだ!
「ディーン=シュロムだ。よろしく。あぁ、あと、平民と付き合う気はないので。特にそこの奴とは。」
「え?俺?」
ほほう、流石はディーン君。こんなところでも俺をすぐに見つけられるとは、やっぱり仲良くなれそうだ。
「先生、ディーン君に質問しても良いですかー?」
「お、スルヴァ。いいぞ。」
「ちっ…」
ディーン君が舌を鳴らす。なにかイラつくことでもあったのか?
「ディーン君はあのあと大丈夫だった?腕折れてたみたいだけど…」
「てめぇまだあの時のこと蒸し返すのかよ、俺はお前に負けた訳じゃねえからな!ぜってえぶっ殺してやるっ!」
おぉ、すごい迫力だ。てゆうか、本気出してなかったんだから、そりゃあそうだろう。ディーン君が本気になったらどれくらいなのか知りたいもんだ。
「知ってるよ、ディーン君が本気じゃなかったって。だって俺も全然力入れてなかったし。」
ディーン君が本気を出してないから、俺も本気を出さなかった。模擬試合だったからか、皆加減をしてくれていて余裕だったけど、今度はそうはいかないぞ!
「ほぉ…お前は神経を逆撫でするのが得意なようだな?おい?」
「え?なんで?」
さっきから俺のことを睨んでばっかりのディーン君…もしかしてこれがリューンじいちゃんが言ってたツンデレ!?
『ワシがまだ若い頃にユリちゃんって子がおってのう。それはそれは可愛かったが、ツンデレ、というやつじゃったんじゃ。いくら追いかけても怖いの一点張りじゃった。そこがまた可愛かったんじゃがのう。うふふ。』
あれ?ディーン君のとはちょっと違うのか。でもまあ、きっとツンデレ見たいな感じなのだろう!
「よし。じゃあこれで自己紹介は終わり!最後に俺のことを話そう。このクラスの担任になったダイン=アスタだ!これから一年間はよろしく頼むぞ!」
「おいクレア、そんな頭を机にぶつけたら痛いぞ?」
「やっぱりなのね!なんで私は!こんなに運が悪いのかしら!!」
クレアお嬢様がご乱心のご様子。仕方ない、ここは俺が気前よく一声かけてやろう。
「でも、俺と会えたのは幸運だっただろう?」
キラリと自慢の白い歯を見せる。うーん、決まった…
「そうね。それだけは、良かったわ。」
「えぇ!?まさかの突っ込み放棄!?」
「だって本当に良かったんだから仕方ないじゃない。私、スルヴァと会えて良かったわ。」
「う、うん。俺もだよ…」
ツッコミを、待っていた俺のこの高ぶった心はどうすればいい!分からん!クレアという女の子が分からなくなってきたよ!
「じゃあ、お前ら、今日はこれで終わりだ。寮に住むやつは顔を見せにいくといい。はい、じゃあお疲れさん!」
ダイン先生が帰っていく。どうやら今日の話は終わったみたいだ。俺も寮住まいになる予定だから行こう。確か、『ブルーバード』って名前の寮だったな。幸せを運ぶといわれる青い鳥から引っ張ってきたらしい。




