月夜の再会
私(霞原紗香)羽田猫子(友人)音花莉奈(生徒会執行部長)
時雨雨音
――さらり。
なびいたのはとても艶やかで光に溶けだしそうな黄金色だった。
さらり、さらり、一本ずつ、解けていく。
銀色の月光舞台に映える金色であった。その周りにひらひらと赤や茶の落葉が彩り、木の影と光が揺れる月と境内の狭間の出来事。
さらさらと金糸が一本一本ほつれて流れていく川の様とあわさって、まーるい月が今にもくるりくるりまわり出して、千変万化の万華鏡の中のなかを覗き込んでいる、変幻自在の七宝柄を見ている、そんな錯覚すらしてしまうほどで、境内がまるで桃源郷風景のよう。
そして煌びやかな髪が今さらり、さらりと広がった肩から蝶が羽ばたいてやがておさまるように背中に髪をおろすところだった。
フルフェイスヘルメットを脱いだ女子生徒は月光をまばゆそうに浴びてから、ふうと息を吐くものだから私までため息が出てしまう。
細めた目からまつげがぱっと花開き、つんと伸びた鼻は高く、横顔は優美に描かれた線であごにしゅっ、と結われている。憂いの息づかいさえも聞こえてきそうな唇は微かに白みを帯びた桃色で、再び薄黒い瞳を瞬かせると、はあ、とため息をする。
今一度、ヘルメットにからまった髪をふりほどくように首を振ると金色の髪がなびいていっそう、さらさらと揺れて、落葉が舞う。舞っていった向こうを見あげる面影はやや大人びてもいるが日本人であるのに外国人のような、それでいて撫子風なのであった。その面持ちだけで世俗に服さない色っぽさがあってどきりとしてしまう。
やっぱり。
一瞬、柚の香りがした。
間違いない。ゆずちゃんだ。
もはやいても立っていられなくて草木から頭を出して呼ぼうか迷う間もなく、心音がリズムを立てるよりも、誰よりも速く、速く、とん、とん、とん、一歩、二歩、三歩、跳んで気づいたのか驚いたのか、彼女が私を呼ぶ前よりも速く、手を伸ばした先に境内と月の間で勢いよく押し倒してしまい、私たちは再びあの日に戻った。
「ゆずちゃん! ひさしぶり!」
何だか気づいていないのか呼ばれて眉をひそめるゆずちゃんは私をまじまじと見つめてから、ややあってはっとなって呼んでくれた。
「さやちゃん……?」
彼女の声は不思議な声音だった。前よりもずいぶん大人びているように感じた。再会の抱擁というより押し倒さん勢いで押し倒してしまっていた。しばらく二人で見つめ合っていると自然と涙が出そうになってしまう。
「元気にしてた?」
彼女の頬にぽたぽた落ちていく滴がくすぐったいのか妙な表情を浮かべていたゆずちゃんは私の目じりに手を添えて言う。
「泣きながら言うんだね」
言う顔が幼い面影と重なってますます涙がこぼれおちていくのであった。今や私の前で金の髪は扇になって広がっていて、絶世の美人が目の前にいる。ほんとうに綺麗になってしまったのだ。目はきりっと色っぽいし、肌は真っ白だし、何よりも整ってる顔が羨ましいくらい。
すると背後でがさがさ葉擦れの音がして、おちおち泣いてもいられないな、と体を起こして目を拭う。
「な、なんだ、ゾンビか!? 霞原君はゾンビになってしまったのか!」
遠くで声が聞こえたのも束の間で。
「ゾンビウィルスにゃー!」と飛びつかれ噛まれてしまう。
音先輩は本当に怖がりでやっぱり猫子は甘えん坊でお茶目で。騒がしい再会になってしまいました。ごめんなさい、ゆずちゃん。
「さあ、起きて」
彼女と猫子を起こすとゆずちゃんは私よりちょっとだけ背が高いのですらっとして見えた。制服の裾をぱんぱんと払う彼女は腰に片手をやってやっと笑った。
それを見てやっぱり私は泣きそうになり笑ってしまう。
いつまでも怖がらせてはいけない。遠めに見たら魍魎の群れに見えたのかもしれない。安心させるために探偵はかく叫ぶ。
「でっかい鯛釣れましたよ、音花莉奈先輩」
かゆ、うま