能力を欲する者
主人公が生まれる前に少し変な設定になっちゃいました。
とある孤島にひとりの生物科学者がいた。
彼の名は桐島徹 四十五歳
桐島は人工臓器培養研究医学にて数々の業績を成し遂げ世界中を震撼させた。
そのひとつにドナーを待たずとも患者の細胞から必用な臓器を短時間で培養再生し移植手術を実用化させたのだ。
だが桐島にとってそれはただの戯れ事に過ぎなかった。
桐島自身 真の目的
それはサイキッカーを生み出しその能力を己自身との融合を目論むマッドサイエンティストだったのだ。
莫大な費用を得た桐島は誰にも邪魔の入らぬ孤島に研究所を設けると禁断の術へと手を染めてゆく。
桐島にとって人工人間を造る事など雑作もない。
数々のクローンを作成し培養液に浸る赤子がずらりと並ぶ異様な光景が増していった。
だが桐島の研究はやがて暗礁に乗りあげる。
正常な脳を持たぬ子や自我を保てぬ子ばかりが生まれてしまう。
あれほど培養したクローンもやがて底をつき、日に日に桐島は衰弱しつつあった。
もう何年も外界を拒絶していた桐島だったがおもむろに埃まみれのテレビを点した。定まらぬ視点で暫くボーっと眺めていた時、マスメディアが代理出産について議論を交わしていた。
代理出産…………代理…………出産…………本物の命…………
こ、これだ‼
桐島はそう叫ぶとまるで何かに取りつかれたかの如く某国への荷仕度を始めたのだった。
――――――――――到着後―――――――――
桐島は控えたメモを頼りに現地でガイドを雇うと代理出産場所について訪ねた。
するとガイドが言った。
そんなに早く子供が欲しいのなら金次第でなんとでもなる。ここでは命より現金がもの言う。
どうする?
桐島は迷う事なくガイドの言い値を支払い男の赤子を手にした。
こうもあっさりと人身売買がまかり通る恐るべきは人間の狂気の成せる業と言うものか。
…………私もその一人だがな、クックックッ。
こうして桐島は労せず入手した被験体と共に帰路を辿った。
つづく