僕と俺とブロローグ
俺はただ一人になりたいだけだった。
生きていく上で、一人になることは不可能だ。
みんなが、誰かに助けられて生きている。
毎日食べてるご飯の食材、これは農家の誰かが作っている。いつもの電車での通勤これは誰かが運転し、その誰かも他の誰かによって働いている。
俺もそうだ。働き始めて3年目の会社では極力周りとの会話は避け余り人に頼らず一人で仕事をするようにしてきた。
だけど、それでも限度がある。その日のノルマを決めているのは誰かでその後の仕事を引き継ぐのも誰か。ましてや会社はたくさんの誰かで出来ている。
いや、そうじゃない人生そのものが誰かとの関わりで成り立っているんだ。
それに気がついた時には遅かった。
誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か
周りを見渡せば、人がたくさんいた。自分が世界の中心だと思うくらいたくさんのつながりがある。
冗談じゃない。
俺は一人がいい。
一人でいい。
何もなくて始めて満たされる。
だから殺した。
誰かを 誰かを 誰かを 誰かを 誰かを 誰かを 誰かを 誰かを 誰かを 誰かを 誰かを 誰かを 誰かを 誰かを 誰かを 誰かを 誰かを 誰かを
後悔はない。元は「一人で生きている」そう思ってたんだ。周りの人が減ったところで気づきもしないだろう。
だけど、それは所詮減っただけだ。無くなったわけではない。
そしてまた、誰かがつながりを持ってくる
「最後に言い残すことはないか?」
そして、俺は答えない。ここにいるのは自分一人だけで周りには誰もいないそんな態度をとる。
「そうか」
誰かが諦めたようにつぶやく
そうして浮遊感が体を襲った。
最後はただそれだけだった。
僕は、よく笑いよく泣きいつも誰かと一緒にいるような明るい子供というイメージらしい。
だけど、僕はそんなこと無いと思っている。確かによく笑うしよく泣く、そして誰かと一緒にいると楽しい気持ちになる。
けど、それだけだ。楽しい気持ちになるだけで、心の底から楽しめてるか?そう聞かれたら僕は首を縦には降らないだろう。心の底では嫌悪感が渦巻いているのだ。
他人が理解できない。なんでそんな風に笑えるのか。なんで、楽しいと笑顔で言えるのか。僕にはわからない。
ある日、そんな周りの人たちが嫌になり逃げ出した。
走って走って走ってとにかく走った。そうして息ができないほど呼吸は乱れ、足は痙攣をしついには転けてしまった。
僕は、仰向けになる。目の端に移るのはたくさんの木々だ。どこか知らない森に迷い込んでしまったらしい。
風に揺れ木々の音だけが耳に入る。周りには人の気配がせずあたりも薄暗い。そんな不安になるような場所で僕は産まれて初めてかもしれないというくらい落ち着いてる。
あぁ……一人だ。
何故だかそう思うととても満たされるような気持ちになる。
だんだんと楽しくなっていき笑みがこぼれるほどだ。
「は、はは、ははははは、なんだ!なんだよ!そういうことなのかよ!はははははははははは!」
こんなになるまで気が付かないなんて!
こんなことなら
一人でいい
一人がいい
何もなくて始めて『満たされる』
不意に心の声と現実の声が重なった。
「誰!?」
なんで!ここには僕しかいなかったのに!
僕は取り乱した。
『まぁ、落ち着けよ。俺は別にお前をどうこうしようとか思っちゃいねーよ』
体を起こし声が聞こえた方を振り向くと僕がいた。
けど、その考えは違うとすぐに理解した。
そこにいたのは、大人だったからだ。
僕は、みんなから達観していて大人っぽいとか言われていたが10歳の子供だ。
間違っても目の前にいるような、髪は短めで顔はテレビで見るようなイケメンじゃないけど普通にかっこいい顔をした若そうな大人の男の人じゃない。
だけど、そんなことはどうでも良かった 僕はその人の目から目線を外せなかった。
目が死んでいたのだ。たまに聞く、目が死んだ魚というような表現がある。そういうレベルじゃない。もはやあれは、死んでる人の目。何かを見てるようで何も見てなさそうな暗闇しかうつってないそんな瞳。
僕は、声が震えるのを自覚しながら質問する。
「おにーさんは誰?」
その人は、楽しそうに答える
『ははっ!おにーさんか!おにーさんね!俺は、そんな歳でもないけどな!まぁ、そんなことはどうでもいいか……』
一瞬の沈黙の後一呼吸おいて
『俺は、お前だよ』
これが僕と『俺』の初めての出会いだった。
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