帰り道に出会った者。
ブルンブルン……キィィィーン。
夜の山道にバイクの音が鳴り響く。
俺はバイク通勤をしている。仕事場まで片道約45分。家は田舎にあり、勤務先に向かうには峠を1つ越えねばならない。
でもそんなにしんどいとは思わない。バイク好きの俺にとってこの通勤方法はむしろ楽しい。
今日も愛車のバイクに跨がって家への帰り道を走っていた。
急カーブを一つ曲がった時だ。
林の中へ誰かがいるのが見えた。
一瞬の事であったが白い服を着た女性がサイドミラー越しに見えた。
「あれ、こんな時間に何をやってるんだ?」
俺はそう思った。
もしかして…。なんか嫌な予感がする。
昔から正義感の強かった俺にとってこれは見過ごすことができない状況だ。
時間が真夜中というのも俺がそう思った理由の一つだ。もし自殺だったら止めないと。
「よし、何をする気か確かめてみよう」
恐怖心よりも好奇心の方が上だった。
俺はバイクを少し離れた場所に止めて、非常用懐中電灯を手に持ってさっきの林の中へと向かった。
奥に誰かがいるのが月明かりに照らされてよく分かる。
俺は白い服を着た女性を追いかけて林の奥へと入っていった。
10分ぐらい歩く。なぜか女性に追い付けない。
そうこうする内に少し広い場所に出た。
神社だ。
それも古い。ボロボロだ。
「あれ、この峠にこんな場所あったかな…」
そう思いながら辺りを見回す。
さっきの白い女性は姿を消していた。
ふと右手に階段が見える。
なぜかこの先が気になり俺は階段を上がっていった。
階段の上には小さな祠があった。
何かお札が貼られている。
俺はそのお札を剥がしてみる。
漢字らしきものが書かれているのだがうまく読めない。
旧字体で書かれている。
その時だ。
下の方で声がうめき声のようなものが聴こえてくる。
俺はその声に導かれるように、声がする方へと向かった。
そのうめき声はちょうど神社の裏から聴こえている。
俺は物陰に隠れながらその場所を覗いた。
男女数人が輪になってぐるぐる回っている。
それも呪文のようなものを唱えながら。
この地方の方言だろうか?
それにこれは何かの儀式だろうか?
でもなんの……?
疑問が疑問を呼ぶ。
何だか見てはいけないものを見てしまったような気がした。
帰ろう…。
すぐにそう決意した俺はさっき来た道を引き返そうとした。
「オイ、ミタナ」
後ろから低い声が聴こえた。
ヤバイ、見つかった。
俺は走った。
早くバイクを停めたところに戻ろう!
勢いよく林を抜けた。
ない!?バイクがない!?
それにさっきと風景が一変している。
道がなくなり沼地になっている。
ここはどこなんだ!?
その時、俺は気づいた。
違う世界に迷い混んでしまったことを。
「リワオーデレコー!」
「リワオーデレコー!」
「ウトガーリアテレークデンヨ!!」
呪文を唱えながら奴等が迫ってくる。
「おい!離せ!やめてくれ!」
俺はさっきの神社に連れていかれた。