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短編集  作者: でんでん
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戦争ジョーク

存在自体がジョーク

 昔第一次世界大戦に従軍したという親父は、右膝から先が義足だった。親父はよく呟くもんさ。


 「とっとと戦争が終わってくれねえかなぁ」ってな。


 その頃ロンドンはナチの野郎にV2で爆撃されて、見るも無残な状態だった。俺はその頃空軍でスピットに乗っていたが、あいつの早い事早い事。あの頃じゃ手も足も出なかったよ。

 俺にとっても戦争は正直ごめんだったさ。商船がUボートにガンガン沈められるせいで食料が配給制になって、紅茶が飲めないし、昔パリにいた頃に付き合いだしたフランス人の少女と会えないんだからな。

 俺はティペラリー・ソングの替え歌でこう歌った物さ。「遥かなるパリよ。そなたの道のりは遠い。遥かなるパリよ。そこにいる愛しき彼女よ。」ってな。

 ああ、それにイギリスの料理はまずいんだよ。なんにしたってイギリス貴族の食卓はフランス料理だぜ?それにフィッシュアンドチップスも食えねえ。あれ、不思議と病み付きになるんだよ。


 でも新大陸の連中がフランスにやっと上陸して、戦争がそろそろ終わってくれるなんて思ったんだよ。でもドイツの野郎は未だに俺たちの隙をついて夜間爆撃を仕掛けてくる。高高度からやってきたり、それに加えて今度はV1なんて爆弾を飛ばして来るんだよ。まだ戦争の頃はぶんぶん爆弾とか、飛行爆弾とか呼ばれたけどな。だがV2と違ってこっちは打ち落とせた。だってトロイからな!


 そうそう、俺の話したかった頃もこれに関係していてな、たしかヒトラーのクソ野郎が死んで戦争が終わる少し前に、一回途絶えていたV1がまたやってきた。その頃俺は本土の飛行隊で待機してて、それを打ち落とすために出撃するのさ。どうやって打ち落とすか?機関銃で打ち落とすか。主翼の端に触れて軌道を逸らして墜落させるのさ。いつもそんなことを繰り返してV1を落とす癖にドイツの野郎は一機も落とせないから、皆に笑われてたんだけどな。


 そこで見たのさ。俺はいつものようにV1の真横に取り付いた。主翼に触れれば落とせたけど、少しだけ近すぎたんだよ。それでつい横のV1を見たら、こう書いてあるわけさ。


 「遥かなるロンドンよ。そなたへの道のりは遠い。遥かなるロンドンよ。そこに棲む禿面チャーチルよ。」ってな。


 噴出したよあの時は。それを落としたのはいいけど、その後笑いが止まらなかったぜ。だってあの茹でてもまともに食えないキャベツ野郎共にも、ジョークのセンスがあったんだからな!


 あの後戦争が終わって、パリに戻ったさ。だがあの愛しの彼女には子供が傍にいてな、俺を見るなりこう言った。


 「おお遥かなる恋人よ。そなたへの道のりはもう閉ざされてしまった!」


 陽気な事で皆から笑われる俺も、この時は吃驚したよ。唖然とする俺を見て、ジョークだよと彼女は笑い転げたのさ!そう、彼女には子供じゃなくて、弟ができたのさ!


 その弟とは今でもよく文通しているよ。ああ、彼女?勿論!俺の家で美味いフィッシュアンドチップスを作ってくれてるよ!

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