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短編集  作者: でんでん
8/15

人間研究!

思いつきで前に書いた奴を少しだけ書き加えて投稿

 「正直言って、世界はくだらない」


 俺の悪友がこんな事を言った。たった今。


 「私には分かっている事だらけだ。P≠NP予想もゴールドバッハ予想も私にはつまらなく簡単でしょうがない。つまり、この世の中が退屈で仕方が無い」


 こう続いた解決できないであろう悪友の不満に俺はこう返す。


 「成程。じゃあとっとと死ね」


 退屈なら死んでしまえ。というよりも、そんな懸賞金が出るほどの難問を易々と解くほどの奴がどうして養護教諭をやってるんだ。俺のこいつへの認識は一言で表せば残念美人。顔もいい、頭もいい。だが性格はこんなひねくれ者。


 「話しは最後まで聞け。一つだけ例外がある」


 「人間の心はなんてありふれた台詞だろ?」


 その答えに彼女は不満げな顔を浮かべる。


 「半分正解だ。だがな私が好きなのは人間そのものじゃない。正確には、人間の恋愛時の感情だ!それが私にとっては面白い」


 「何故なら恋愛によって人間は変わる。そしてその変わり方はまだパターン化されていない!つまり面白い。だから私はそれを見てみたいのだ」


 この奇人が。この性格が無ければもう結婚してるんだろうな。そんなことを頭に浮かべる。けど、俺、浅見囲は大分慣れてきた。こいつの行動は常人である俺には予想できない。普通の人間のとる行動でさえ考えられないのだから当たり前なのだろうけど。


 「ああ、だから着任式であんなことを言ったのか」


 この悪友、藤岡咲は満足そうに頷く。こいつは俺が高校卒業して以来数年ぶりに再会したと思ったら養護教諭になっていて、おまけに俺の学校に赴任しやがったのだ。


 「学校は面白い。何故ならすぐそこに実験材料がうじゃうじゃとまるで蛆虫のように」


 あの、少子高齢化と学校の在籍者数に響くような事はおっしゃらないで下さい。

 こいつが着任式で言った事を要約するとこんなことだ。


 「面倒な事極まり無い。とりあえず私のために生徒諸君恋をしやがれ」


 着任式で俺の周りの先生方が全員一人残らず頭を抱えていたのは言うまでも無い。



 正直言って教師というのは疲れる。若者をまとめるのは面倒くさい。そんな事を言ってしまうと一巻の終わり、つまり本音と建前の使い分けが重要となってくるのが大人という物だ。そしてそれを平然と有無を言わさず踏み潰すのがあいつだ。きっと社会での適応能力なんてあるわけが無い。

 眠い眠いと新年度二日目から机に突っ伏す面々に声をかける。今年の担任は去年の持ち上がりの学年でクラスは変わっているが同じ面々もいた。あまり定員数が多くないこの学校では学年ごとでのまとまりが結構強い。転校生にとってはあまり馴染めない環境だろうなと思う。


 こんな事を何故思っているのかというと、うちに転校生が来たからに他ならない。ついでに女子生徒。男女比で若干男子のほうが多いうちは結構湧いた。さらに美少女だから更に湧いた。その顛末は簡単なのだろう。グループを作りやすい女子の中で馴染めるのだろうか。自分はただ平穏な一年間を送りたい。可も無く不可もなくではない。出来るなら可にゲージが傾いていて欲しい。言うならば中の上くらいだ。


 「今日もだるい。いつも通りの日だ」


 体調が良すぎると逆に困ってくる。もしかして今日は何かが起こるのではないかと。だからこのくらいでいいのだ。自然と無駄な事もしなくなる。だって面倒くさいから。


 「観察対象がいない。どうすればいいと思う?」


 ああ、俺に最悪をもたらす元凶が約一名。


 「じっと待つんだ。罠にかかるまで」


 「罠というと?」


 彼女は尋ねると、すぐに切り返した。


 「さあ」


 彼女は沈黙した。うずうずして止まろうとすらしないマッドサイエンティストのような人間が俺の前に一人。どうやってこいつ教員試験突破したんだろう。

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