じゃじゃ馬娘
「邪魔だ!どけよ!」
27歳・独身。婦警(現在ではあまり使わない言葉だが……)である。
顔立ちは、10人中10人がうなづくほど、良い。
しかしこの女、とにかく態度が、でかい。
この大きく出た態度には、男達も怯えるほどであった。
しかし、女性からは人望が厚く、この女の仲間は増える一方であった。
名前は、伊東美枝子という。巡査である。
美枝子は、いつも通りにパトロールしていた。
「今日も駐車違反が多いなぁ……」
彼女の口癖である。これは警察全体が迷惑していることだ。
しかし、警察の収入とも言える。
少し困り顔の美枝子の耳に、突然叫び声が入ってきた。
「きやぁぁぁぁぁぁっ!」
なんだっと、美枝子は後ろを見た。
そこには、崩れ落ちる女性の姿があった。
そして、その女性を飛び越えて逃げる男がいた。
包丁を持っている。
美枝子は、混乱した。
次の行動が、自分でも分からない。
しかし、考えている間に、犯人は自分の方へと近づいてくる。
(あぁ……どうしよう!!)
とっさに、銃を抜いた。
しかし、撃てない。撃つ勇気がない。
(だめ……)
その瞬間、美枝子は、犯人に向けて「とまれ」と言った。
包丁を振りかざす男に対して、彼女は銃を向け続けた。
「やっ……やめなさい……包丁を……置きなさい……」
しかし、男は
「ぎええぇ、げへっ…げへっ…」
と声を上げ、美枝子に取っ組んだ。
「きゃぁっ!」
美枝子は、易々と拳銃を取り上げられてしまった。
男は、狂喜している。
「げへっ、げへっ!」
美枝子は今まで、男などパンチ一つで倒せると思っていた。しかし、今この有様である。
生まれ持った異性という壁を、越えることはできなかった……」
(撃たれる……)
諦めた。その時、
「うおっ!」
大声と共に、犯人にマスクの男がとっついた。
グロスマンである。
犯人を投げ倒し、銃を握る手を強く蹴った。
そして顔面を殴り、首元を殴り気絶させた。
「おい、そこの婦警さん!」
「はっ……はい!」
美枝子は、びくびくと返事をした。
グロスマンは、落ち着いている。
「女が男に抵抗するなんて、100年早いんだよ!もし、男に勝ちたいなら……」
グロスマンは、すっと後ろを見た。
「子供を産め!これは女にしかできないぜ!」
グロスマンを見つめる美枝子の目は、どこか意味ありげであった。
私は、グロスマンを殺人鬼にしてしまった。
この小説がホラーじみているということもあるが、
グロスマンは決して殺人鬼ではなく
人々を諭す兼好法師であって欲しかったのだ。