大甲子園劇場(3)
「この世の法律を作っているのは誰だ!?」
「……政治家だろ」
「政治家はバカか、頭が良いか?」
「……そりゃ良いだろ」
フンと男は微笑んだ。
「この世は、すべて頭の良いヤツに都合の良いようにつくられてんだ。ようは……」
福田は欲求不満な顔をした。
「野球バカは必要ないんだ……お前みたいな……」
なんだとっと、福田は声を上げた。
自分を侮辱されたのだから。
「ふざけんな!ちっと野球が上手いからって、てめぇ……」
「ついさっきまでの、お前みたいにな!」
くっと、福田は何も言えなくなった。
男の言葉には、一つ一つに重みがあった。
「……どうせなぁ、野球なんて、肩こわせば終わりなんだ。そんなことしたるより、勉強しろ!もっと…………勉強しろ!」
「うるせぇっ!」
と福田は叫び、駆け逃げて行った。
高く鳴り響くファンファーレと共に、高校野球本戦は始まった。
成滝高校はのピッチャーは、福田だった。
福田は、ノーヒット・ノーランに、本戦でも挑んでいた。
9回裏。敵は昨年の優勝校。
福田の頭には、男の言葉が木霊していた。
(野球なんて、肩をこわせば終わりなんだ……)
確かに、肩にガタがきていた。
あぁ、なんという力。
福田は、いつの間にか、大きく振りかぶっていた。
ぐはっ!
「ストラーイクッ!バッターアウト!」
一瞬の栄冠もつかの間、福田はそのまま倒れ込んだ。
監督にかつがれながら、福田はマスコミの中を切り抜けた。
と、その中に、例のマスクの男がいるのを見つけた。
福田は彼の前を通りすぎようとした時
「貴方の名前は……なんですか?」
と呟いた。
男は静かに答えた。
「……グロスマン……」
「グロスマン」が再登場します。
ところで、なぜ、「グロスマン」の連載を終了させたか。これには大きな理由があるのです。
(次回へ続く)