表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

仮面大阪人

平日夕方の黒門市場は混み合っていた。

“大阪の台所”を自称するだけあり、品揃えはしっかりしている。

サークル帰りの貧乏女子大生杭全(くまた)今日子は奥歯に隠したスイッチをそっと噛んだ。

脳内に組み込まれた三つの回路の一つが作動し、今日子に超人的な力が湧き上がる。


「おねえちゃん、大根(だいこ)の美味しいところ頂戴よ」

「おねえちゃん? そんなん言うたってまけへんで」


八百屋のおばちゃんはニヤニヤと笑いながら大根を袋に詰め始める。

ここまでは予想通りの反応だ。

この程度でまけてくれる程、この街(おおさか)は甘い戦場ではない。


「そこを何とかまけてよ、おねえちゃん」

「アカン、アカン。私の足くらい立派な大根やで? 120円からはビタ1まからんわ」


……来た。

今日子の中の≪商人回路(あきんどかいろ)≫が唸りを上げる。


「おねえちゃんの足は大根は大根でもかいわれ大根やんか!」


おばちゃんの袋詰めが一瞬止まる。

反応はどうだ?




「かいわれ大根は言い過ぎやでぇ。はい、大根1本100万円」


勝った!

戦利品を受け取り、百円硬貨を1枚手渡す。

値切り値切られは浪速の華だ。

思わずスキップしそうになりながら、今日子は奥歯のスイッチを切る。


夕陽がまぶしい。

仮面大阪人杭全今日子は自分を改造した秘密結社グランドサザンクロスに感謝を捧げた。

正直なところ、≪芸人回路(げいにんかいろ)≫と≪任侠回路(にんきょうかいろ)≫の使い道は分からない。

だがまぁ、世の中そんなものだろう。

大阪の街は、今日も平和だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 二人の駆け引きがなんだかかわいくて ゆかいなお話でした 任侠回路編もいつか読んでみたいです(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ