"Sincere"
『信じれば助かる』
そう思いたかった
寝かされたベッドには陽射しがきらきらと差し込んで居て、僕にはそれが、総ての毛穴を針で刺され、傷口を押し開かれて居るような痛みだ
痛みについて、正直に彼らに伝える事は出来ない
僕は人間と仲良くしたかったし、君の事を心から愛して居たからだ
ベッドの傍らでは神父が祈祷を捧げて居て、隣には泣き出しそうな顔の、君───人間の男の子が立って居る
実のところ、僕がいま感じて居る痛みの総てが、これら治療に由来したものなのは明白だったが、言うつもりには成ら無かった
それに、正直に総てを話した所で殺される事は同じだ
ならば僕は最後まで、人間たちから愛されたまま死にたかった
祈祷が一段落し、一握りの聖水が幾度も神父の手から振り掛けられる
感じた事も無い様な痛みと共に、此の世から一切の光が消え失せた
窓辺からの陽光が与える、刺す様な痛みは消えて居ない
少し遅れて「眼に聖水が入った為、自分は失明したのだ」と気付く
『自分が死ぬ事の動かぬ証拠』を突き付けられた様に思えて、脳裏の内側で様々な希望が、尽く砕けて屑に変わった
ひ、ひっ、と
自分が嗤う声がする
理由は解らない
でも、自分が嗤って居るらしかった
死期が近付いて譫妄が始まったと判断したらしく、君と神父が息を呑む音がする
でも考えてみれば本当に、僕は恐怖で気が違って居るのかも知れ無かった
祈祷が再開される
僕の手を握るものが在った
柔らかい
そして、汗ばんで居た
多分君の手が、指が、僕の手を包んで居るのだと思う
泣く声が、くぐもった音でゆっくりと聴こえて来る
誰かが騒ぐ声を、水底で聞いて居るみたいな感覚だった
水底
確かに、沈んで行く様な感覚は在る
全身がちくちくするのが不思議で、僕は真っ暗な中で周囲を視渡そうとした
最後に一瞬だけ意識が明瞭に成る
ぼんやりと、「早く死にたい」と思った
僕が死んだあと、正躰に気付いてみんな気分が悪くなるだろうから
みんなが僕を嫌うだろうから
落下する様に、意識が休息に薄れ始めた




