高評価をお願いします
「どうも〜、こんにちは。ダイスケです! 今日は超絶栄養飯シリーズ! とにかく栄養の取れる料理を作っていこうと思います。マズくても全部食べるので安心してくださいね〜。とにかく栄養を取ろうっていう企画になってます」
ゔげぇえええぇ。気持ちが悪い。
再生数:53回
高評価:2
ここまでやってこれかよ。
はぁー、どうしたらいいんだこれ。
コンプラにも配慮して体も張って、もうできることはほとんど残っていない。
プラットフォームを散策して流行りの動画をクリックする。
「はい、では今回の動画が面白かったと思った方はぜひ、チャンネル登録高評価をお願いします。またね〜、バイバイ!」
出たよ、高評価をお願いしますってこいつらプライドがないのか?
高評価:11252
ため息しか出ない。
激辛焼きそばを食べるだけでこれか。
これ冷めてから食べればそんなに辛くねーんだよな。
辛いものが得意なのもあるが、超絶栄養飯に比べたらなんてことはない。
それにしても高評価をお願いしますってそんなに効果があるのか?
魔が刺した、とでも言うのだろうか。
いつの間にかカメラを回していた。
「どうも〜、こんにちは。ダイスケです! 今日は今話題の激辛焼きそばを食べてみようと思います」
「うぉー、やばいですよこれ! 食べる前から目が痛い!」
「もうこれ一気にいっちゃいますからね、見せ場とか作らないけどカメラも固定でノーカットだから。いただきまーす」
「はい、完食です! あー、喋るのもしんどい! いい子は真似しちゃダメですよ!」
「というわけでどうでしたかー? 結構頑張ったと思うんですが、もし面白かったと思う方はぜひ高評価をお願いします!」
アップしてすぐ違いに気がついた。
再生数:121回
高評価:38
なんだ、これ……。
高評価率が異常に高い。
とりあえず撮影の後片付けをするか。
流石に激マズ料理の後に激辛焼きそばはやり過ぎだったのか、胃がムカムカしてきた。
だめだ、片付けは後にして寝るか。
胃薬を飲んでから横になるとすぐに意識を手放した。
目が覚めてもまだ胃が重かった。
冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して一口飲む。
そういえば動画はどうなっているだろうか。
再生数:1651回
高評価:216
鳥肌が立った。
高評価の数を見て胃の重さすらもどこかに消えていた。
再生数だけなら今までにもっと回ったことはある。
だけどなんだこの高評価の数は。
結局これが正解なのか。
段々とさっきまでよりも胃が重たくなってくる。
正解がわからない。
高評価をお願いしますっていうのが正解なのか?
企画を考えることは無駄なのか?
納得がいかない。
寝起きのままの格好で、カメラを回す。
「はい、どうも〜。高評価をお願いします。いきなりなんだって? 高評価をお願いします。面白くないって? 高評価をお願いします。動画とか見なくていいです。高評価をお願いします。他に何もしなくていいです。高評価をお願いします……」
アップしてからしばらくして冷静になった。
今まで企画を練って頑張ってきたチャンネルになんて動画を投稿してしまったのだろうか。
後悔が濁流のように押し寄せてくる。
寝癖でボサボサの頭に汚いスウェット、中身のない動画に高評価をお願いします?
今までの自分では考えられない動画だ。
動画を削除しようと思いマウスに手を伸ばす。
再生数:15736回
高評価:3301
15736?
桁が間違っていないか?
というかあの酷い動画がこんなに見られたのか。
早く消さなければ、と思い削除しようとしたところでコメントが気になった。
——これくらい突き抜けてると嫌味がない
——ある意味深い
——舐めんな
——クソ動画
クソ動画、だよなあ。
だけど思った以上に肯定的なコメントが多い。
深いってなんだ?
なんだかよくわからないが面白かったということか。
そう考えるとある意味ではこれも企画と呼べるのかもしれない。
今まで何にこだわっていたのだろうか。
なんだかよくわからないが、高評価は伸び続けて急上昇ランキングを駆け上がっていた。
これが正解だったってことだよな。
今度は着替えて髪もきちんと整えてからカメラを回す。
「はい、どうも〜。ダイスケです! 高評価をお願いします! と、いうことで。今回は超絶激マズ飯シリーズを……」
それから何本か動画をあげたが、どれもかなりの高評価がついた。
チャンネル登録者が増えたおかげで動画の再生数は安定している。
やっぱり再生数が伸びるとモチベーションが違うな。
今日はもう一本くらい撮っておくか。
その前にさっきあげた動画はどうなったかな。
確認しようとしたら、動画が削除されていた。
*規約変更のお知らせ。必要以上に高評価を煽る動画が散見されております————。
チャンネルに残っている動画には高評価がほとんどついていない。
なんだか全てを失ったような気分だ。
俺はプラットフォームに抗議するためにキーボードに手を伸ばした。
「はい、どうも〜。ダイスケです! 規約変更に抗議してみた。高評価をお願いします!」
気が付けば動画は一本も残っていなかった。




