Episode 09「試合終了」
この物語はフィクションです。
作品内に登場する人物名・団体名・及びその他一切は全て、架空の名称であり、実際の名称とは関係ありません。
自身の敗北を認めず、背後からヒスイへ斬りかかるレヴィ。
(不味い、間に合わないッ...!)
だが、その刃がヒスイの元に届くことはなかった。
突如、レヴィの身体がぴたりと動かなくなり、金縛りのような状態になる。
「なんッだ、コレ...!」
「流石にこれ以上は看過できません。レヴィ・バーブレス」
そこにいたのは、ヒスイの担任、アスナ先生だった。
アスナ先生は何らかの魔術を発動していて、それがレヴィの動きを抑制しているようだった。
「暴行、恐喝、殺人未遂。あなたのこれまでの行動は全て皇国騎士団及び異端審問会に報告してあります。正式に処分が決定されるまで、身柄を拘束させてもらいます」
今までのおっとりとした彼女ではなく、冷たい口調で話すアスナ先生。
「放せッ、テメェら、俺様に指一本でも触れてみろ、親父が黙ってねぇぞッ!!」
最後の抵抗というように、皇国騎士団副団長である父親の存在を出すレヴィ。
しかし、
「そのレクト・バーブレス副団長閣下から、伝言を預かっています。「お前をもう息子とは思わない。バーブレス家の恥さらしが。牢獄で罪を償え」とのことですので、安心して異端審問異端審問にかけられてください」
唯一の頼みの綱である父親からも見放され、いよいよ逃げ場が無くなる。
その後も暴言を吐き続けていたが、ロクに抵抗もできず拘束され、先生たちによって転移魔術でどこかへ連れていかれる。
一人残ったアスナ先生は、ヒスイの元へと歩み寄ってくる。
「怪我はないですか~?」
それは、普段通りのアスナ先生だった。
「あ、えと...大丈夫、です...」
あまりに色々なことが起きすぎて情報量に理解が追い付かないヒスイ。
「彼の行動は~、以前から教師の中でも問題視されてたんですよ~。でも~、学年でもトップレベルの成績と~、家柄も相まって簡単に処分を下せなかったんです~」
「そう、なんですね」
「でも~、君が彼に勝ってくれたお陰で~、なんとか上を黙らせることができました~。ヒスイくんには~、すご~く感謝してます~」
両手を合わせて笑顔で話し続けるアスナ先生。
「ヒスイくんには~、後ほど学園から秘密裏に褒賞が授与されると思います~。まぁ多分等級でしょうけどね~」
怖い、俺もう怖いよ。なにこの切り替えの早さ。というかさっきの口調はなんだったの?
「では~、私は一旦失礼しま~す。試験を再開してください~」
アスナ先生が転移魔術で消えると同時に、静まり返っていた場内は少しずつ騒がしさを取り戻し、すぐに試験も再開された。
ヒスイは観客席に戻る前に、一階の医務室へと足を運ぶ。
「失礼しま~す...」
中はそこまで広くなく、壁際に設置されたベッドの内一番奥のカーテンが閉じられていて、うっすらだがヒナのものと思われる人影が透けていた。
「ヒナ、大丈夫?」
声を掛けながらカーテンをめくる。
そして次の瞬間、ヒスイは入学後二度目の、己の死を覚悟することになった。
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