Episode 10「兄×妹=死・その2」
この物語はフィクションです。
作品内に登場する人物名・団体名・及びその他一切は全て、架空の名称であり、実際の名称とは関係ありません。
妹のヒナを怪我させた犯人であるレヴィ・バーブレス。
それを無事模擬戦で倒したヒスイは、妹が休んでいる医務室へと向かう。
医務室に入ると、中にはベッドが二台、そのうちの一台はカーテンに囲われていた。
恐らくヒナが休んでいるのだろう。
「ヒナ、大丈夫か?」
何も考えずにカーテンをめくるヒスイ。
そして、次の瞬間己の死を悟った。
カーテンをめくった先にいたのは、濡れたタオルで体をふいている、ほとんど服を着ていない妹の姿だった。
「えっ?」
「なっ...!」
二人同時に短く声を上げる。
咄嗟に大切な部分は隠したが、それでもほとんどが裸。
いくら妹とはいえ、年頃の女子の裸体を目の当たりにしたヒスイの聖剣は、己の意思とは関係なく無慈悲に鞘から抜かれていた。
数秒の沈黙の後、みるみる顔が紅潮していくヒナ。
「っ....」
目には涙を浮かべ、ぷるぷると体を震わせている。
そこに、さらなる不幸が訪れる。
ガチャリ
「ヒナちゃーん、体調はだい.......え?」
扉が開く音と共に入ってきたのは、ルナトリアだった。
ルナトリアの目に映ったものは、、ほぼ全裸のヒナと、上も下も直立不動のヒスイの姿。
「あ、えっ?ルナ、えっと、これはその、違くて…」
慌てて弁明しようとするが、ルナトリアの目はゴミをみるそれになっていた。
「とりあえず、ヒスイくんは一旦出ていこうか…?」
口元は笑顔で、しかし目元は笑っていない表情で、静かにそう言い放つルナトリア。
ヒスイはその圧に気おされ、生まれたての小鹿のような弱弱しい足取りで医務室から出ていく。
医務室の外で待たされることおよそ5分。
中から、入って来いというルナトリアの声が聞こえる。
足の震えを必死に抑え、悲鳴を堪えながら恐る恐る中へと入っていくヒスイ。
今度はしっかりと服を着たヒナと、その横に立つルナトリアの元へと歩いていく。
「それで、説明してくれますか、兄さん。さっきのは、なんですか?」
明言こそしていないが、さっきの、とはアレのことしかないだろう。
伝説の聖剣エクス〇リバーのことだ。
「いや、その、あれは僕の意思とは関係なく起きる生理現象というか…」
「やっぱり兄さんは、実の妹興奮する変態だったんですね」
冷ややかな視線を向けながらも目は合わせないヒナ。
(終わった...ヒナだけじゃなくルナトリアにまで見られるなんて...)
ヒスイは、恐怖のあまり顔を上げることができずにいた。
手足は震え、強い寒気が体を襲う。
一方のヒナとルナトリアの周囲は、気温が5~6℃ほど高くなっていた。
理由は単純、ルナトリアが怒りのあまり魔力を放出しているからだ。
放出しているというよりも、滲み出ているといった方が正しいだろうか。
二人の体から黒いオーラのようなものが見える。
「なに黙ってるんですか。なんとか言ってください。ないならさっさと殴られてください」
「そうだよヒスイくん。言い訳があるなら今のうちに聞くけど」
ガチャリ
その時二度目の扉が開く音がしたかと思えば、入ってきたのはルクスだった。
「え、なにこれ?なにがあったのヒスイくん」
目の前に広がる光景と部屋の暑さに困惑するルクス。
ルナトリアは静かにルクスの方へと近づくと、耳打ちをする。
「ごにょごにょごにょ」
「ふむふむふむ」
およそ20秒ほどルナトリアが説明した後、ルクスは少し考える素振りを見せてから口を開く。
「まぁ、今回は偶然の事故だったんでしょ?もちろん、入る前に声を掛けなかったヒスイくんも悪いけど、仕方がないんじゃない?」
ルクスのヒスイを養護する発言に、ヒスイの表情はわずかに明るくなる。
暗闇に見えた一筋の光に縋るように、目を輝かせる。
そんなヒスイの様子を見て、再びルナトリアがルクスの元へと歩いてきて、耳打ちをした。
「ごにょごにょごにょ」
すると、みうみるうちにルクスの表情が青ざめていき、次第に絶望の色に染まる。
そしてルクスはルナトリアと共にヒナの隣へ歩いていき、ルナトリアの「わかってるよな?」という視線を背中に浴びながら言い放った。
「ヒスイくん、君が悪いよ。レディの着替えを覗くなんて、人としてあり得ない」
「裏切ったな!!」
「ごめん、今回はルナトリアに従いざるをえないんだ。わかってくれ。僕だって、悔しいさ」
「さぁ、これで3対1だねヒスイくん。どうする?」
勝ち誇ったような表情でルナトリアが問いかける。
これ以上、ヒスイに状況を打破する術は残されていなかった。
万事休す。万策尽きた。完全に詰みだ。
ヒスイの脳内では、この絶望を脱するべく走馬灯が流れていた。
しかし有効な手段は見つからない。
「兄さん、もう諦めて、大人しく私の一撃を喰らってください。そうすれば許してあげないこともありません。」
無理だ。ヒナのパンチほど危険なものはこの世に存在しない。
過去に何回か受けたことがあるが、その時は全て骨折や内臓損傷など、重大な傷を負っている。
(いや、待てよ?そういえば不殺の加護があるじゃないか!あれがあれば僕は死なないで済む!!)
「わかったよ。ヒナ、本気の一発を受け止めよう。覚悟はできてる」
「めずらしく素直ですね。まぁいいです。こちらに来てください」
心の中で勝ち誇った笑みを浮かべながらヒスイはヒナの元へと歩いていく。
そしてヒナの前に正座すると、ヒナは静かに拳を振りかぶった。
その瞬間、突如四人の足元に巨大な魔法陣が展開される。
魔法陣は物凄いスピードで拡大していき、部屋全体を覆いつくしてもなお部屋の外へと広がっていく。
「なっ!」
ルクスとルナトリアはそれぞれ自分の身を守る態勢をとる。
何か嫌なものを感じ取ったヒスイは、咄嗟にヒナを抱きかかえ庇う姿勢を取った。
数十秒して、魔法陣の拡大が止まったかと思うと、今度は紅い輝きを放ち始める。
輝きはどんどん増していき、あまりの輝きに目が眩む。
そしてそのまま4人の体を包み込んだ。
☨
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