第1章「虚」:最初の出会い
細かな雨が新宿の石畳に打ち付け、ネオンサインを不規則な水たまりに映し出していた。若い女性が、メトロノームのように不規則に音を立てるハイヒールを履いて歩いていた。スカートとメイドエプロンをきつく締め、見慣れた顔…いや、少なくとも夜を共に過ごせる人を探していた。
「さあ、誰か来なきゃ」と彼女は呟き、濡れた髪を手でかき上げた。
路地裏の影で何かが動いた。若い女性は遅れて来た客だと思った。人影がゆっくりと近づいてくると、彼女の心臓はドキッとした。黒いトレンチコートとフェドーラ帽をかぶり、暗闇に顔を映し出す彼は…普通、いや、むしろ優雅でさえあった。
「…誰かお探しですか?」彼女は無理やり笑顔を作った。
その人物は返事をしなかった。重苦しい沈黙が辺りを満たした。突然、ネオンの光が彼の顔を覆う白い仮面を照らし出した。額には「虚」という文字が刻まれ、磁器のように磨き上げられ、冷たく感じられた。
若い女性は一歩後ずさりした。呼吸が速くなった。
「え、何…?」彼女はなんとか言葉を発しようとしたが、声は震えていた。
私が反応する間もなく、男はトレンチコートの中に手を滑り込ませ、肉切り包丁を取り出した。包丁は街の明かりを赤く反射した。刃は長く、容赦なく、静寂がその脅威を増幅させているようだった。
彼女は水たまりにつまずき、後ずさりした。恐怖に身動きが取れなくなった。男を「依頼人」と見なしていた幻想は消え去っていた。目の前にあるものは人間ではない、あり得ない…
一瞬、一瞬の動き、そして素早く、致命的な一撃。
ナイフは闇に消え、男は素早く身を乗り出し、用意していた煙の中へと姿を消した。若い女性は冷たいアスファルトの上に横たわっていた。水たまりだけがネオンライトを反射し、近くの片隅では「虚」のマークが刻まれた白い仮面のシルエットが夜の闇に消えていった。
新宿は、今起きた恐怖とは無関係に、いつもの日常を続けていった。
数分後、最初の通行人が到着した。雨に濡れた配達員が角を曲がると、水たまりとネオンの明かりの中に横たわる遺体を見て、凍りついた。
「なんてことだ…」と叫んだ男の声が、人気のない路地に響き渡った。
彼は息を呑みながら慎重に近づき、携帯電話を取り出して911に通報した。
数分後、他の人々が現れた。好奇心と不安に駆られた夜勤労働者が数人、遺体に触れないようにしながら、互いにぶつぶつ言い合っていた。その光景は実にグロテスクだった。メイド姿の若い女性が、濡れたレインコートを身動き一つせずに横たわっていた。雨が彼女の化粧を冷たいアスファルトに混ぜていた。
警察はすぐに到着した。青と赤のライトが路地を照らし、警官たちは一帯を封鎖し始めた。一人の捜査官はトレンチコートを脇に寄せて遺体を調べ、もう一人の捜査官はネオンライトに反射する水たまりを調べた。
一方、近くの建物の上階、路地を見下ろす場所から、誰かが静かに様子を見守っていた。黒いトレンチコートとフェドーラ帽をかぶった優雅なシルエットが、街の明かりに照らされた窓辺に浮かび上がっていた。
殺人犯はマスクの下で微笑んでいた。精密さ、恐怖、そして制御された混沌。すべてが完璧だった。
次の瞬間、人影は窓から消え、窓は空っぽになった。彼は振り返り、彼だけが知る屋根裏や路地の暗闇へと歩みを進めた。まるでそこに行ったことがなかったかのように。
路地裏では、警察は誰が、あるいは何がこの恐怖を引き起こしたのか、ほとんど想像もできなかった。彼のマスクに刻まれた「虚」のシンボルは、目撃者たちのささやきの中で、既に都市伝説となりつつあった。
港区の住宅街、時計は午前3時17分を指していた。殺人課の刑事、長谷川巧は、新宿で巻き起こっている大混乱に気づかず、ぐっすり眠っていた。
ドアを軽くノックする音で巧は目を覚ました。ドアを開けると、そこには副刑事の青木俊平が立っていた。顔は緊張し、雨でびしょ濡れだった。
「拓海さん…事件です」俊平は息を荒くしながら言った。「どうやら…儀式殺人の…最初の被害者です」
拓海はあくびをし、目をこすって頷いた。
「どこで?」
「新宿、歌舞伎町近くの路地です。メイド服を着ていました。死体は…」俊平は震えながら言葉を詰まらせた。「肉切り包丁、あのシンボル…仮面に書かれた『虚』の字」
拓海は急いでレインコートを着て、俊平と共に現場へ向かった。雨は降り続き、静まり返った通りを歩くと、水たまりにネオンの光が反射していた。
路地に着くと、拓海は現場を調べた。遺体は仮の毛布で覆われ、警察が現場を封鎖し、最初の見物人たちは既に退散していた。
「よし、まずは検死官に会おう」と拓海は言った。「目撃者に話す前に、できるだけ多くの詳細を聞きたいんだ」
彼らは移動鑑識班に乗り込み、検死専門医の宮下薫医師が待っていた。彼は手袋とマスクを着け、遺体を検視した。
「刑事さん、被害者は高橋美優、19歳です」と薫医師は告げた。「彼女は一時的に実家を離れていた少女の一人です。歌舞伎町で夜勤をしていて、住居を頻繁に変えていたので、すぐに捜索する人はいませんでした」
彼は現場に残されたナイフを指差した。
「指紋や痕跡がないか調べたが…何もなかった。DNAさえも。全くの無傷だ。」
巧は頷いた。
「わざと残したんだ。無力さを私たちに見せ、感じさせたいんだ。」
薫は美優の肌に寄りかかり、「虚」という漢字の印を見せた。
「これは手彫りじゃないのよ」と彼女は説明した。「クッキーの型抜きみたいな金型で作ったんだけど、頑丈で精密なの。彼の得意技よ。緻密で計算された」
俊平は息を呑んだ。
「つまり、彼はただの連続殺人犯じゃないんだ…僕たちを弄ぶのが好きなんだね。」
巧は新宿に降り注ぐ雨を見ながらため息をついた。
「すべての犯罪はメッセージだ。そして、こいつは僕たちを弄んでいる。」