「虚無の秩序」
第63話 「虚無の秩序」
ナタリーは、オリヴァーの提示する「虚無の秩序」の核心に迫っていました。オリヴァーは、感情が争いや苦しみを生み出す根源であると説き、この装置が感情そのものを「無」に帰すことで、真の平和と安定をもたらす「完全なる虚無の秩序」を築くと語ります。
「聖女殿、貴女の『希望』の力は確かに素晴らしい。しかし、それはあくまで感情がある世界での話。感情が消え去った世界で、その『希望』に何の意味があると言うのかね?」オリヴァーは、挑発するように言います。
ナタリーは、彼の言葉に激しく反論します。「感情がなければ、苦しみはなくなるかもしれません。しかし、喜びも、愛も、感動も、すべてが消え去る。それは、生きているとは言えません。それは、死んだも同然の世界です!」
オリヴァーは冷笑します。「愚かな。真の『安定』とは、揺らぎのない『無』にこそある。貴女のような感情に囚われた者には理解できまい。」
ナタリーは、泉の囁きから、この装置が世界の「地の息吹」から感情のエネルギーを吸い上げ、それを「虚無」へと変換していることを感じ取ります。そして、この場所が、オリヴァーがかつて招待状で言及した「真理」を見極めるための最終実験場であると確信します。彼の真の目的は、感情を根絶した世界を創造することであり、ナタリーの「希望」の力は、その「秩序」を完成させるための最後のピースだと捉えられているのです。
「虚無の徒」としての彼が、なぜこれほどまでに感情の根絶に執着するのか。ナタリーは、彼の過去に何か深い理由があるのではないかと感じながらも、この装置が稼働を続ければ、世界中の人々が感情を失い、取り返しのつかない事態になることを悟ります。
ナタリーは、自身の「統合された貌」の力を最大限に引き出し、装置から放たれる「虚無」の波動に対抗しようとします。しかし、装置は巨大な「闇の気」を放ち、ナタリーの力を押し返します。これは、かつて対峙したどの「闇」よりも広範囲で、そして根源的な「虚無」の力でした。




