再会、そして新たな「秩序」
村人たちが感情を取り戻し、ゆっくりと活気を取り戻し始める中、ナタリーはオリヴァー・ド・ランカスターが自身の招待状で示した「秩序の拠点」へ向かうことを決意します。この度の経験で、オリヴァーが単なる感情の「根絶」を企むのではなく、「虚無」を新たな「秩序」として世界に築こうとしていることを確信したからです。それは、これまで対峙してきた「絶望」や「憎悪」、「欲」とは全く異なる、より哲学的で根源的な「闇」でした。
執事は依然として警戒しますが、ナタリーの揺るぎない決意に、静かに頷きます。ナタリーは、泉の囁きから、オリヴァーが提示した「秩序の拠点」が、世界各地で起こっている「無関心」の現象と密接に関わっていること、そして、その拠点が彼が提唱する「完全なる虚無の秩序」の中心である可能性を強く感じていました。
数日後、ナタリーと執事を乗せた馬車は、鬱蒼とした森の奥深くにある、周囲の自然とは不釣り合いなほど無機質な雰囲気を放つ巨大な建築物の前に到着します。それは、まるで世界から切り離されたかのような、異質な存在感を放っていました。門が開くと、奥には広大な空間が広がり、そこにはオリヴァー・ド・ランカスターが、冷徹な笑みを浮かべて立っていました。彼の背後には、奇妙な紋様が描かれた巨大な装置が鎮座しており、そこから微かな、しかし底知れない「虚無」の波動が放たれていました。
「聖女殿、ようこそ、私の『秩序』の拠点へ。貴女の来訪を心待ちにしておりました。」
オリヴァーの言葉に、ナタリーは静かに答えます。「オリヴァー・ド・ランカスター…この場所こそが、あなたが企む『虚無の秩序』の中心なのですね。」
オリヴァーはゆっくりと頷き、装置を指し示します。「その通り。この装置は、世界のあらゆる感情を『無』へと変質させ、そして『虚無』という新たな『秩序』を世界に確立するための、私の『真理』の結晶です。貴女の『希望』の力も、いずれは私の『秩序』の礎となるでしょう。」
ナタリーは、オリヴァーの「秩序」が、世界のあらゆる感情を消し去ることで、究極の安定と調和をもたらすと信じていることを察します。しかし、それは「真の平和」ではなく、感情のない、生ける屍のような世界。ナタリーは、オリヴァーの言葉の裏に隠された、彼の「虚無」に対する深い執着を感じ取ります。これは、かつてないほど巨大で、そして複雑な戦いになることを、ナタリーは悟るのでした。




