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ナタリー•ローズ  作者: 徳田新之助
聖なる泉の守護者
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隠された力





水路の利権を巡る騒動は、ナタリーの介入によってひとまず収束した。村人たちは、ナタリーの聡明さと行動力に改めて感銘を受け、彼女への信頼を一層深めた。しかし、エルンストと結託していた男たちは、この敗北を看過するはずがなかった。彼らの計画が頓挫したことで、失われた利益は甚大であり、ナタリーへの復讐を誓う影が、村の背後に忍び寄っていた。


数日後、村で奇妙な出来事が起こり始めた。農作物が何者かに荒らされ、家畜が失踪する事件が相次いだのだ。村人たちの間に不安と疑念が広がり、これまでナタリーが築き上げてきた平穏な日常に、少しずつ亀裂が入り始める。


ナタリーは、これらの事件が単なる偶然ではないことを直感していた。彼女は執事と共に、事件現場の調査に乗り出した。足跡、残された痕跡、そして村人の証言。昼間は孤児たちに笑顔で接しながら、夜にはその冷徹な分析力で、事件の真相へと迫っていく。


「執事、この足跡は、村の者ではありませんね。そして、荒らされた作物の様子も、単なる盗難とは異なります。これは、村の秩序を乱し、私に圧力をかけるための意図的な犯行です」


ナタリーの瞳は、闇の中で鋭く光っていた。彼女は、これらの事件の背後に、エルンストと繋がっていた男たちの影を感じ取っていた。彼らは、直接的な対決を避け、村に混乱をもたらすことで、ナタリーの信頼を失墜させようと企んでいるのだ。


そんな中、孤児院で育てていた大切なハーブ畑が荒らされる事件が起きた。子供たちが心を込めて育てていたハーブは無残に踏み荒らされ、孤児たちの悲しい声が教会に響いた。この事件は、ナタリーの心に深く刺さった。彼女にとって、孤児たちの笑顔は何よりも守るべきものだったからだ。


「……彼らは、越えてはならない一線を越えました」


ナタリーの声は、静かだが、かつてないほどの冷気を帯びていた。その表情は、昼間の天使の貌からは想像もできないほど、無機質で感情が読み取れないものだった。執事は、ナタリーの言葉から、彼女の内に秘められた「何か」が、今にも溢れ出しそうなのを感じ取っていた。


翌日の夜、村は深い霧に包まれていた。ナタリーは、一人、森の奥へと足を踏み入れた。彼女の向かう先は、以前、男たちが密談していた廃屋だった。そこには、彼女が用意した「罠」が仕掛けられていた。


霧の中、廃屋に集まる影があった。エルンストと、彼と結託した男たちだ。彼らは、村の混乱に乗じて、再び水路の利権を我が物にしようと画策していた。しかし、彼らが足を踏み入れた瞬間、廃屋の周りに仕掛けられた目に見えない「何か」が作動した。


男たちの顔に、恐怖の色が浮かぶ。彼らは、突然現れた不可解な現象に混乱し、逃げ惑った。ナタリーは、霧の切れ間からその様子を冷ややかに見つめていた。彼女の瞳には、一切の迷いも躊躇もなかった。


「村の平穏を乱す者には、それ相応の報いを受けてもらう」


ナタリーの静かな声が、霧の中に溶けていく。彼女が発動させた「何か」の正体は、依然として謎に包まれたままだ。それは、彼女が両親から受け継いだ力なのか、それとも、彼女自身の中に眠る未知の能力なのか。


事件は解決したかに見えた。しかし、この一件は、ナタリーが持つもう一つの顔、そして彼女が隠し持つ「力」の存在を、一部の村人たちに強く印象付けることとなった。彼らは、ナタリーを天使と慕う一方で、その底知れない「何か」に、畏怖の念を抱き始めたのだった。


ナタリー・ローズの物語は、ますます深まる謎と、迫りくる試練の中で、核心へと向かっていく。彼女は、この村を守るために、どこまでその「力」を行使するのだろうか。そして、その果てに、彼女は何を見出すのだろうか。

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