届かぬ希望
時計台の水晶から放たれる「虚無」の波動に、ナタリーは自身の「希望の光」が届かないことに苦悩します。泉の囁きは、この「虚無」が感情そのものを麻痺させるため、人々の心に働きかけるナタリーの力が直接届かないのだと伝えてきました。かつて「絶望」を打ち払い、「憎悪」を浄化し、「欲」を希望に変えた歌声も、ここでは響きません。ナタリーは、水晶に手を触れたまま、必死に歌を口ずさみますが、歌声は虚しく空間に吸い込まれていくだけでした。
「…なぜ、届かないの…?」ナタリーの目から、一筋の涙がこぼれ落ちます。
その時、ナタリーの脳裏に、これまで出会った人々の笑顔がフラッシュバックします。マリオンの感謝の涙、被災地で共に歌った人々の歌声、そしてアルベルトと村の子供たちの希望に満ちた瞳。彼らの顔が、ナタリーの心を温かく包み込みます。ナタリーは、これまで自分が救ってきた人々の「希望」が、決して無意味ではないと強く感じます。
「私は、一人じゃない…」
ナタリーは、自身の歌声が届かなくとも、自身の存在そのものが「希望」であり、人々の心に触れる方法が他にあるはずだと直感します。水晶から放たれる「虚無」の波動に対抗するために、彼女は自身の「統合された貌」の力を、感情を揺り動かすのではなく、より根源的な存在へと働きかける形で集中させ始めます。それは、この水晶が「虚無の徒」オリヴァーによって作られた「虚無の秩序」の具現化であるならば、それを破壊するのではなく、その「存在」そのものを変質させることでした。




