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ナタリー•ローズ  作者: 徳田新之助
新たな旅立ち
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澱みの崩壊





ナタリーと人々の希望の共鳴は、地下空間全体を光で満たし、水晶の「黄金の澱み」を激しく揺るがした。淀みはもはやその形を保てなくなり、表面から次々とヒビが入り始めた。澱みから放たれる負の波動は弱まり、代わって清らかな地の息吹が空間に満ちていく。


オリヴァーは、自身の計画が崩れ去る光景を目の当たりにし、初めて動揺を露わにした。彼は必死に「黄金の澱み」に手を伸ばし、その力を抑え込もうとするが、人々の希望の歌声による共鳴の波動は、彼の想像を遥かに超えるものだった。


「やめろ…私の『秩序』が…!なぜだ、人間は**『欲』と『虚無』**にこそ真理を見出すはず…!」


オリヴァーの叫びも虚しく、水晶の「黄金の澱み」はついに限界を迎えた。大きな音と共に、水晶は無数の光の粒子となって砕け散った。その光は、闇に包まれていた地下空間を照らし出し、清らかな地の息吹が、淀みを浄化するように空間を満たしていった。空間に満ちていた「欲」や「執着」、「虚無」の負の波動は完全に消え去り、安堵と清々しさがナタリーたちを包み込んだ。


澱みが消滅したことで、この都市に長年蓄積されていた負の感情の塊が取り除かれた。夜会の会場では、人々がそれまで感じていた不快感や重苦しさから解放され、互いに笑顔を向け合うようになっていた。デューク・エリクソンもまた、得体のしれない圧迫感から解放され、困惑した表情で周囲を見回していた。


ナタリーは力を使い果たし、その場に倒れ込んだ。しかし、その顔には深い満足感が浮かんでいた。執事が駆け寄り、優しくナタリーを抱き起こした。


「ナタリー様!ご無事ですか!」


ナタリーは微かに頷いた。


「ええ…執事…この都市は…救われました…」


オリヴァーは、呆然と光の粒子が消えていく空間を見つめていた。彼の顔には、怒りや絶望ではなく、深い困惑と、これまで信じてきたものが打ち砕かれたような表情が浮かんでいた。


「…**『希望』が…『虚無』**を凌駕したというのか…」


オリヴァーはそう呟くと、ナタリーに鋭い視線を向けた。その瞳の奥には、新たな「探求」の光が宿っていた。


「聖女殿…あなたは、私の**『真理』を揺るがした。だが、これは終わりではない。私は、必ずこの『希望』の正体を見極め、私の『秩序』**を完成させてみせる」


オリヴァーはそう言い残し、地下空間の奥の影へと姿を消した。彼の言葉には、敗北を認めるのではなく、より深い「探求」へと向かう決意が感じられた。ナタリーは、彼との戦いがこれで終わったわけではないことを悟った。オリヴァーは、新たな形で「虚無の徒」の脅威となり続けるだろう。

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