希望の歌声、再び
オリヴァーが「黄金の澱み」の力を増幅させる中、地下空間は重苦しい闇と「欲」「執着」「虚無」の波動に満たされた。ナタリーの放つ希望の光は、その強力な負のエネルギーに押し戻され、身体中に痛みが走る。幻覚が脳裏をよぎり、「お前は無力だ」「この世界は感情に支配され、滅びるしかない」というオリヴァーの声が響き渡る。執事もその重圧に耐えかね、苦しそうに膝をついた。
「この闇は…強すぎる…ナタリー様…!」
しかし、ナタリーの心は揺るがなかった。彼女は両親を亡くし、孤独の中で育った自身の経験を思い出した。そして、これまで出会った人々、特にマリオンの希望に満ちた瞳が脳裏に浮かんだ。マリオンが被災地で歌った希望の歌、人々がそれに応えて歌声を重ねた希望の共鳴。あの奇跡を、この都市でも起こせるはずだ。
ナタリーは、自身の**「統合された貌」の力を、心の奥底から引き出した。それは、泉の清らかな浄化の力と、古の箱に宿る変質(創造)の力が融合した、真の希望の光**。彼女は目を閉じ、静かに歌い始めた。
「ラララ…」
その歌声は、最初こそか細かったが、地下空間に響き渡るにつれて、次第に力強さを増していった。ナタリーの身体から放たれる虹色の光が、水晶の「黄金の澱み」に直接働きかけ、その表面に亀裂を生じさせていく。澱みから放たれる負の波動が抵抗するようにナタリーに襲いかかるが、彼女は歌い続けた。それは、自身の悲しみを受け入れ、それを希望に変えてきたナタリー自身の生き様そのものの歌だった。
オリヴァーは、ナタリーの歌声と光の変化に、わずかに驚きと警戒の色を見せた。
「…これは、これまでとは違う。感情の波動が…澱みを揺さぶっている」
その時、奇跡が起こった。ナタリーの歌声に呼応するように、遠くから微かな歌声が聞こえ始めたのだ。それは、この都市でナタリーが癒しを与えた貧しい人々や子供たちの歌声だった。彼らは、ナタリーが教えてくれた**「希望の歌」**を、夜会の喧騒の中で口ずさんでいたのだ。その歌声は、まるで光の糸のように地下へと伸び、ナタリーの歌声と重なり合った。
**「希望の共鳴」**が、再びこの地に生まれた。
ナタリーの歌声は、人々の歌声と合わさることでさらに増幅され、水晶の「黄金の澱み」を激しく揺さぶった。澱みは、まるで苦しむかのように不規則に脈動し、その表面の亀裂は深まっていった。オリヴァーは、予想外の事態に表情を曇らせた。
「馬鹿な…彼らの**『欲』が、『希望』**へと変質しているだと…!私の『秩序』が…」




