希望の共鳴
ナタリーと執事を乗せた馬車は、荒れ果てた町の中心部へと向かいました。辺りは深い闇に包まれ、人々のすすり泣きや、うめき声だけが響いています。ナタリーは、泉の囁きに従い、かつての広場であった場所に足を踏み入れました。そこは、最も強い「絶望」の波動が渦巻いている場所でした。ナタリーの「統合された貌」は、その強烈な負のエネルギーに呼応し、身体の奥底から痛みが走ります。
「ここです…」執事が、震える声で告げました。「この地下に、奴らの仕掛けた霊力の核が…」
ナタリーは、その場に静かに立ち尽くしました。彼女は目を閉じ、泉の清らかな波動と、自身の内にある古の荒々しい波動を調和させようと努めます。しかし、周囲を取り巻く圧倒的な「絶望」が、その統合を阻もうと襲いかかってきました。幻覚が見え、耳元で「お前は無力だ」「誰も救えない」という声が響きます。
その時、ナタリーの脳裏にマリオンの姿が浮かびました。凍てついた心を溶かし、人々のために涙を流したマリオンの姿。そして、マリオンから受け取った「希望」の光を信じ、懸命に人々を救おうとするマリオンの歌声が、遠くから微かに聞こえてくるようでした。
「私は…一人ではない!」ナタリーは、心を閉ざしそうになる自分を奮い立たせ、叫びました。「マリオンが、私を信じてくれている!この地の、全ての希望を、私が呼び覚ます!」
ナタリーは、泉の力を最大限に引き出し、自身の**「希望の歌」**を歌い始めました。その歌声は、澄んだ泉の清らかさと、古の力の力強さを併せ持ち、闇に包まれた広場に響き渡ります。歌声は、地中深くに埋められた「霊力の核」に直接働きかけ、その「絶望」の波動を揺さぶり始めました。
歌い続けるナタリーの身体から、虹色の光が放たれ始めます。それは、泉の「浄化」の力と、古の力の「破壊」と「創造」の力が融合した、真の「希望」の光でした。光は、地下へと伸びていく根のように広がり、霊力の核に絡みつき、その負のエネルギーを浄化していきます。
しかし、「虚無の徒」も黙ってはいませんでした。光の届かぬ場所から、複数の「絶望」の波動がナタリーに集中し、彼女の歌声を乱そうとします。ナタリーは、その精神的な攻撃に苦しみながらも、歌い続けることを止めませんでした。彼女の心の中には、被災者たちの笑顔と、マリオンの強く優しい瞳が支えとなっていました。
その時、ナタリーの歌声に呼応するかのように、遠くから複数の歌声が重なり始めました。それは、マリオンと、マリオンによって癒され、再び希望を取り戻し始めた被災者たちの歌声でした。彼らは、ナタリーの歌声に導かれるように、それぞれの持ち場で「希望の歌」を口ずさみ始めていたのです。
村人たちの「信じる心」と、マリオンの「癒し」の心が、ナタリーの歌声と泉の力を増幅させ、より強力な「希望の共鳴」を生み出しました。その共鳴は、被災地全体に広がり、各地に仕掛けられていた霊力の核を次々と浄化していきました。闇は薄れ、夜空には星が輝き始めます。
夜が明ける頃には、町の中心部から「絶望」の波動は完全に消え去り、代わりに温かい「安堵」の空気が流れ込んでいました。ナタリーは、力を使い果たし、その場に倒れ込みましたが、その表情には、深い満足感が漂っていました。彼女は、被災地の人々の心に、再び「希望」の光を灯すことができたのです。




